コカ・コーラ

叩き上げの復活経営
未読
コカ・コーラ
コカ・コーラ
叩き上げの復活経営
未読
コカ・コーラ
出版社
早川書房
出版日
2009年08月06日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

低迷に喘いでいた世界最大の飲料ブランドを再建した経営者は、どのような人物だったのか。

本書は凋落の一途を辿っていたコカ・コーラを復活させた、著者であるネビル・イズデルの半生を振り返った一冊だ。イズデル氏は日本ではそこまで知られたビジネスリーダーではないものの、様々な国を渡り歩き、各国のボトラーやコカ・コーラ事業を立て直してきた敏腕経営者の一人だ。アフリカのザンビアから始まり、南アフリカ、オーストラリア、フィリピン、ドイツ、インド・・・と各国で異なる文化や経済にどのようにして対応し、ペプシや現地の飲料メーカーとの激しいシェア争いを如何に制してきたのか。ページをめくれば、国によって経営スタイルを変えるべきところと変えるべきでないところが浮かんでくる。

ライバルのペプシと同じく、著者は同じコカ・コーラ社内や関係者にも容赦はしない。普通の自伝ならそういった人物は描かないか、名前を伏せることが多いが、本書では実名を挙げて、成果が上がらなかったり不正を行ったりした登場人物をバサバサと切り捨てる。他人だけでなく、自分の失敗談も隠したりはしない。このあたりのエピソードは、ヘルメットもパッドもつけずに己の肉体で勝負する、ラグビーの選手でもあった著者の気性が表れているのかもしれない。

巨大な組織を率いる強力なリーダーシップの秘密を知りたい経営者や、経営者を目指す管理職の方など、リーダーを志向する人にぜひお薦めしたい一冊と言える。

ライター画像
苅田明史

著者

ネビル・イズデル
1943年、北アイルランド生まれ。10歳の時、家族とともにアフリカ・北ローデシア(現ザンビア)に移住。ケープタウン大学を卒業後、66年にザンビアのコカ・コーラボトラーに入社。南アフリカ、オーストラリア、フィリピンでの勤務を経て、85年にセントラル・ヨーロッパ地区責任者に就任。89年から98年までは北東ヨーロッパ・中東・アフリカ地区責任者をしながら、インド市場への参入や中東、東欧、旧ソ連などの新市場開拓を手がける。

デイビッド・ビーズリー
日刊紙アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション紙で25年間記者を務めたのち、現在ブルームバーグ・ニュースの司法担当記者。

本書の要点

  • 要点
    1
    イズデルは上級管理職を集め、彼らと共同で「成長へのマニフェスト」を策定し、目標達成にもっとも必要な社員の協力を獲得することができた。
  • 要点
    2
    後継者へのバトンタッチは困難な挑戦である。CEOが失敗するのはその地位に長くしがみつきすぎるからだし、優秀なCEOになる能力のある人材は、ナンバー2として長く待ち続けてくれない。
  • 要点
    3
    営利企業として末永く存続するには、社会的責任を考え、行動する「つながりあう資本主義」を実践していくことが重要である。

要約

究極の挑戦

Photodisc/Thinkstock
運命の電話

コカ・コーラ社のシニア・エグゼクティブとしての第一線を退いたネビル・イズデルは、カリブ海で幸せな引退生活を送り、コカ・コーラのことはほとんど考えなくなっていたほどだった。

当時は当社にとって冬の時代で、在任中に社の時価総額を四〇億ドルから一五〇〇億ドル近くにまで押し上げた伝説的CEO、ロベルト・ゴイズエタが亡くなって以来、収益は落ち、株価は一九九八年のピークから半値になっていた。さらに深刻なことに、社員の士気は地に堕ちていた。コカ・コーラの関係者の一部からは現場復帰を求める電話がかかってきたが、イズデルはきっぱりと断っていた。しかし二〇〇四年の二月、取締役会のメンバーで、元社長として社の歴史に名を残す偉大なリーダーでもあるドナルド・キーオから運命の電話がかかってくる。キーオは当時の会長兼CEOの後任探しのコミッティーの委員長として、イズデルが有力な候補であることをコミッティーに知らせたいのだと言う。

ゴイズエタの後に成功した会長はいない。妻と二人の幸せな引退生活もしばらくおあずけだ。しかし、イズデルの心に引っかかっていたのは、「この究極の挑戦を断ったら、はたして自分を許せるだろうか」という疑問だった。ラグビー選手だった自分への答えは、「いや、絶対に許せない」であった。キーオから電話を受けた一週間後、イズデル氏はショックを受けている妻に、五年だけこの仕事をやるつもりだと決心を伝えた。試合が始まったのである。

【必読ポイント!】CEO就任

Michael Blann/Digital Vision/Thinkstock
大量人員削減の弊害

コカ・コーラ社は長年にわたり、二人の偉大なリーダーに恵まれてきた。既に述べたゴイズエタとキーオである。しかし、その後を継いだ二人の経営者はいずれも短命に終わっている。

そもそもゴイズエタ時代と同じ業績を永遠に続けることは不可能で、グローバル経済の変化を考えればなおさらだった。一九九八年の上半期は、販売量が一二%伸びたために手あたり次第に人を採用し、ボトラーは工場を建設し、金を借り、いたるところで拡大していた。しかし同年の下半期は販売量の増加がゼロに落ちたことで、間接費は膨らみ、ボトラーは多額の負債を抱えることとなってしまった。

翌年実行された大量人員削減では五〇〇〇人を超える人員が解雇され、雇用と言えばほぼ間違いなく終身雇用を意味したコカ・コーラ社を根本から揺るがすこととなった。当社に費用削減の必要があったのは間違いないが、人員削減はただの首切り行為に終わり、特殊な技能や高度のビジネス知識を持つ人材が流出してしまったのだ。解雇された人の中にはコンサルタント会社を作り、そのスキルをいままでより高いコストでコークに提供していたケースもあった。

ボトラーとの軋轢

普通であれば最初の一〇〇日ではっきりとした戦略を打ち出すところだが、イズデルは重要な役職については社内で多くの手を打ったものの、この期間にはメディアやアナリストとは話さないと明言していた。引退生活のなかで状況の展開を見守りながら考えた先入観に頼って対外的に考えを打ち出すのではなく、世界を旅して現場を訪れ、社員や顧客やコークに関わる重要な人々と会って、より多くを学びたかったからだ。

すぐに社長を置かないことはすでに決めていた。当時、社内に社長職を任せられる人材がいるとは思えず、それはコカ・コーラの後継者育成がいかにお粗末だったかを示していた。企業を経営する潜在能力がない人材を副司令官として置いても仕方がない。前会長のダフトは在職中に副会長と二人の社長を置いていたが、それでも取締役会は引退していたイズデルを担ぎ出すことになったのだ。

前経営陣の考え方と根本的に違いがある点はまだある。コカ・コーラ本社とボトラーの関係についてだ。

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要約公開日 2013.10.31
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