クロネコの恩返し

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クロネコの恩返し
ジャンル
出版社
日経BP
出版日
2013年09月12日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

なぜヤマトグループは142億円もの寄付を決定したのか。企業経営を考えるにあたり、まず重要視しなければいけないことは何であるのか。本書は多くの問いを投げかけるものである。これはある優良企業がその財務力を活かして行った、CSRという話に留まるものではない。我々は企業経営の根幹を改めて考え直さなければならないのである。

ヤマトグループの経営理念には、創業以来「サービスが先、利益は後」というものがある。つまり、何故企業が存在し、利益を上げ、存続することができるのか。その答えを「顧客の支持」に求めているのである。本書の後半では、海外のヘッジファンドによる全面的な後押しがあった旨の話が紹介されている。真に経営のことを考える投資家は、142億円もの寄付に賛成するのである。142億円の広告等、他の投資と比較し、それに優る効果が見込まれるという冷徹な分析がその背景にあることは容易に察することができる。

ヤマトグループは社会のインフラを担う、顧客と日々接し、その宅配1個1個が顧客支持の源泉となる。今回の支援を受けられた地域の方が今後どの企業を選ぶのか、また日本全体で宅配業者に対する支持がどのように変わっていくのか、大変興味深い。本寄付事業の社会的な意義の大きさは言わずもがなであるが、企業経営としてもヤマトグループは賢明な投資判断をしたと言えるのではないだろうか。

ライター画像
大賀康史

著者

本書の要点

  • 要点
    1
    ヤマトグループは、サイズ・運賃などにかかわらず、2011年度の一年間、国内の宅急便の取り扱い1個あたり10円を、ヤマト福祉財団を経由して寄付することにした。それは純利益の4割にも相当する、巨額の支援である。
  • 要点
    2
    企業が寄付をする場合、政府や日本赤十字などに寄付金を預け、運用を一任するのが通常のケースだが、今回はできるだけ早い復興・効果の高い支援のため、ヤマト福祉財団を経由し、個人ではなく支援を求める団体に直接助成するというかたちとした。
  • 要点
    3
    宅急便は、今や日本の国民生活において、電気、ガス、水道と同じく無くてはならない社会インフラとなった。ヤマトグループは創業100周年を迎える2019年に向け、「社会から一番愛され信頼される企業」となることを目指している。

要約

「サービスが先、利益は後」の宅急便魂

iStock/Thinkstock
ヤマトグループの復興支援

2011年3月11日。東日本大震災が起き、刻々と被害の深刻さが明らかになっていくなかで、ヤマトグループは大きな決断をした。被災地の生活・産業基盤の復興と再生支援を目的にサイズ・運賃などにかかわらず、2011年度の一年間、国内の宅急便の取り扱い1個あたり10円を、ヤマト福祉財団を経由して寄付することにした。もちろん宅急便の総量の値上げなし、ヤマトグループの利益を削るという決断だ。

合い言葉は、「宅急便ひとつに、希望をひとつ入れて。」結果として、寄付額は142億8448万751円に達した。寄付金は、被災地からの応募総数174件から慎重に先行し、31件を選出し、142億6600万円の助成に活用した。

「サービスが先、利益は後」これは宅急便の生みの親、小倉昌男が繰り返し口にしていた言葉である。今回の震災に際しても、その精神が自ずと発露されたのだ。

iStock/Thinkstock
ヤマトグループ主導の「寄付先」選定

寄付金はヤマト福祉財団の「東日本大震災 生活・産業基盤復興再生募金」へ寄付し、被災地への助成の原資とした。企業が災害に対して寄付する場合、政府や日本赤十字などに寄付金を預け、運用を一任するのが通常のケースだ。しかし、今回はヤマト福祉財団を経由し、個人ではなく団体に助成するというかたちとした。その理由は、できるだけ早い復興のため、自分たちからも形がはっきり見える効果の高い支援を行いたいと考えたためである。

第一次の助成先は2011年8月24日に決定した。助成先の選考に当たっては、有識者から構成される第三者委員会である「復興支援選考委員会」を組織した。委員長は早稲田大学商学学術院教授の内田和成氏、委員として、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学科教授の家田仁氏、東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏、プライスウォーターハウスクーパース株式会社パートナーの野田由美子氏、京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授の林春男氏にお願いをした。

委員会の提示した支援先採用指針は3つある。

一、見える支援・早い支援・効果の高い支援

二、国の補助のつきにくい事業

三、単なる資金提供でなく新しい復興モデルを育てるために役立てる

復興は「スピード」が命

被災された多くの方々と接し、身に染みて感じたことは、どれだけの金額を助成しても、そこにいる人が元気にならなければ、助成の目的は達成されないということだ。建物・設備が整っても、人が元気にならなければ、粘り強く復興を続けることはできないだろう。

二〇一一年一〇月にいち早く再開した宮城県南三陸町の仮設魚市場の事例がそれを如実に物語っている。

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要約公開日 2013.10.31
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