リスキリングとは、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」である。日本では個人が主体となる「学び直し」や「生涯学習」と混同されることがある。だが、欧米では「組織が実施責任を持ち、従業員の職業能力を再開発する」ものとして定着している。その背景には、技術的失業を防ぐという目的がある。
日本でリスキリングを浸透させるには、次の3つのテーマが重要となる。それは、「経営レベルでの新たな事業戦略の方向性の明示」「AIなどのデジタル分野の自動化技術を含む成長分野への理解」「貧困・失業といった社会課題解決分野への理解や経験」である。経営陣が自社の事業戦略の方向性を明らかにしてはじめて、従業員がどんなリスキリングに取り組むべきかが見えてくる。経営陣が最新のデジタル技術を理解する必要がある。さらには、失業や貧困という問題にどれだけリアリティを持って向き合い、本気で対処しようと思えるかという意志が問われていく。
リスキリングという言葉が急速に広がったがゆえに、いくつもの誤解が生まれ、リスキリングの失敗に結びついてしまっている。その1つが「リスキリングは転職のために行うもの」という言説だ。特に中堅・中小企業の経営層は、リスキリングをすると従業員が転職してしまうと思い、拒絶反応につながっている。
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