本書は、万物の知識に精通する120歳の猫「猫師匠」と、20代のビジネスパーソン「弟子」の会話調で進んでいく。
冒頭で弟子は、猫師匠に「僕は長所や特技がない、つまらない人間です……。才能のない人間でも、どうにか生きる道はないのでしょうか」と相談する。それに対して猫師匠は「才能は誰にでもある」「自分の才能を探すには、才能があるかどうかなど無駄なことを考えずに、人生とは『異能バトル』であるというたったひとつの真実だけ覚えておけばいい」と答えた。
異能バトルの代表格といえば「さるかに合戦」だ。ずる賢い猿をこらしめるべく、栗や牛糞などが集められる。とうてい猿には勝てそうもない面々だが、囲炉裏で焼かれた栗が飛びかかったり、牛糞が玄関先で猿をすべらせたりして、各自がそれぞれの“才能”を発揮し、猿を見事にこらしめるというストーリーだ。
人間が自分だけの能力を発揮するには、才能に関する3つのルールを押さえておく必要がある。次の項では、3つのルールを紹介する。
1つめのルールは「人生とは、『異能バトル』である」だ。
私たちが評価される能力は時と場所によって変わるものだし、一見ネガティブな特性もうまく活用できることがある。このような能力のゆらぎを、自分なりの“異能”として使おう。ハンデだと思っている特性でも、使いみちを考えてみる価値はある。
異能をうまく使う方法を見つけたとしても、自分より優秀な人がいたら意味がない――そう思う人もいるだろう。
そこで注目したいのが、2つめのルール「才能とは、グループ内の『かたより』が評価された状態である」だ。自分が集団の中でどのようにかたよっているのかを考えれば、自分より優秀な人間が現れても、活躍の機会は十分にある。
たとえば、「音楽うま太郎」と「音楽へた次郎」というミュージシャンがいて、2人でロックバンドを組むとしよう。
2人組なので、1人はボーカルで、もう1人はギタリストになることにした。担当を決めようと、お互いの音楽スキルを比べてみたところ、問題が起きた。ギターとボーカルの両方において、音楽うま太郎のほうが上手かったのだ。
2人の音楽スキルを数字で表すと、音楽うま太郎はボーカル10・ギター15。音楽へた次郎はボーカル2・ギター10だ。音楽うま太郎はボーカルよりもギターの技術点が高いため、自分のことを「私はギターが得意だ」と考えていたが、バンドを組むとなると話が変わってくる。音楽うま太郎がギターを、音楽へた次郎がボーカルを担当した場合、トータルスコアは17にしかならない一方で、役割を入れ替えると20になり、音楽的な成果を最大にできるのだ。
この例において、音楽へた次郎は、音楽うま太郎よりも音楽で優れたところは何もない。それでも、自分より上の人間と組むことで、ギタリストとしての能力を活用できる。音楽へた次郎のギターの技術がかたよっているおかげだ。
個人の能力は他者とのパワーバランスによって決まる。あなたにとっては苦手で嫌いなことでも、周囲とのバランスによっては「優れた能力」になりえるのだ。
私たちの持つ特性は状況によって評価が変わり、ある場所では「良い」とされた能力が、別の場所では「悪い」と評価されてしまうこともある。だから、好きなことや得意なことを追いかける前に、自分が置かれた状況を見定めることを忘れてはならない。
ここまでの話から「凡人は優秀な人のサポートに回らなければならないのか」と落ち込んでしまった人もいるかもしれない。だが「かたより」を活かすことができれば、逆転も可能だ。これを理解するために、才能のルールの3つめ「ルールがあいまいな世界ほど、あなたは異能バトルに勝ちやすくなる」について見ていこう。
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