相手への心づかいが行き届く

一生使える「文章の基本」

未読
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一生使える「文章の基本」
出版社
出版日
2023年10月31日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ビジネスパーソンであれば、ほとんどの人が毎日何かしらの文章を書いているはずだ。最近では検索すれば文章のフォーマットが手に入るし、文章生成AIの進化で自然な文章があっという間に生成できるようになった。だが、こうしたものの助けを借りても、人間が文章を書く力を鍛えなければ、「すれ違い」は防げないというのが著者の主張だ。相手との関係性や状況に応じて適切なコミュニケーションを考えることができるのは、今のところ人間だけだ。

本書が目指す「心づかいのある文章」とは、「読んだ先に、相手がどんな行動をするか」まで想像された文章のことだ。著者は弁護士としての実務経験を持ち、大学教員に転身してからは文章の書き方に関する授業や講演を数多く行ってきた。法律家がなぜ文章術を教えるのか。それは、国と争う税務訴訟、勝訴率数%の難関の裁判に勝つ方法を試行錯誤してきた経験によるものだ。さまざまな裁判で勝利することができたのは、裁判所に提出する書面の研究、つまり文章の書き方を鍛え上げたからだったという。

文章力は文章を生業としている人にだけ必要とされるものではない。「心づかいのある文章」が書けるようになれば、業務の効率を上げることができ、社内外からの評価が得られることも想像に難くない。大学生や新入社員などこれから文章術を学びたいという人だけでなく、仕事の経験は積んできたが今一度自分の文章を見直したい人にもおすすめできる一冊だ。

ライター画像
鈴木えり

著者

木山泰嗣(きやま ひろつぐ)
1974年横浜生まれ。税法学者、弁護士。青山学院大学法学部教授。上智大学法学部法律学科卒。2003年に弁護士登録(鳥飼総合法律事務所。現在は客員。)2015年に実務家から大学教員に転身。現在は、法学教育及び税法研究に専念する。旧司法試験に合格し、国税と争う税務訴訟の代理人として弁護士実務を行なってきた経験を踏まえ、上智大学法科大学院、青山学院大学法学部、大阪大学法科大学院をはじめとする学生のみならず、有資格者(弁護士・税理士)にも、文章の書き方の授業や講演を行ってきた。勤務先の大学では、学部ゼミ生の卒業論文、大学院生の修士論文の指導を毎年多数行っている。著書は、『教養としての「税法」入門』(日本実業出版社)、『分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社新書)などの税法分野のほかに、『弁護士が書いた究極の文章術』(法学書院)、『頭が10倍よく見える文章の書き方』(三笠書房)、『法学ライティング』(弘文堂)、『新・センスのよい法律文書の書き方』(中央経済社)、『社会人1年目からの読む・書く・考える・伝える技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『税法文章術』(大蔵財務協会)などの文章論にも多数ある。本書で単著は69冊となる。
X(旧Twitter):@kiyamahirotsugu

本書の要点

  • 要点
    1
    文章の基本は、「読み手の立場」に配慮し尽くすことである。「読んだ先に、相手がどんな行動をするか」まで想像することで、書くべき内容が決まってくる。
  • 要点
    2
    優れた文章は推敲によって生まれる。主語と述語が対応しているか、誤記はないか、文章のリズムや流れはわるくないかを考え、何度も文章を読み直して細かな修正をするのが推敲である。
  • 要点
    3
    正確に伝えたいと思うあまり、あれもこれも書こうとしてはいけない。文章を書く目的に沿って、「何を書かないか」を決めれば、伝えたいことがより際立って伝えられる。

要約

【必読ポイント!】 読み手を想像する

「読み手の立場」に配慮するひと手間

文章の基本とは、「読み手の立場」に配慮し尽くすことである。「文章を書く自分の立場」にとらわれてしまう人は少なくないが、文章は相手に何かを伝えるためのものであることを忘れてはならない。「読み手の立場」に配慮しようとすれば、文章の修正すべき点が見えてくる。

たとえば、「この件については、以前の会議でも話題になりましたので、そのときに検討課題として挙げられた事項にご留意ください。」という文章にはどんな問題があるだろうか。この文章の一番の目的は「ご留意ください」にあるはずだが、読み手が何に留意すべきなのかを知るためには、まず「以前の会議」が何を指すのかを特定して、会議の議事録を探し、「検討課題」が何であったかを確認しなくてはならない。これでは、相手の立場に配慮し尽くしているとはいえない。

先の文章を修正するならば、まず「以前の会議」がいつの何の会議であったかを明記して、具体的な「検討課題」を引用して書いておく。そうすれば読み手に余計な手間をかけさせずにすむ。業務を円滑に遂行してもらうという目的のもと、相手の「読んだあとの行動」まで想像することが重要だ。

敬語を正しく使っても、「上から目線」はにじみ出る
Dean Mitchell/gettyimages

どれだけ正しく敬語を使っても、文章自体に読み手への気遣いがなければ、相手を敬う気持ちは表現できない。たとえば、次のようなメールを、企画会議資料作成中の新入社員が上司に送ったとしたらどうだろう。

「こちらも事前にきっちりみていただきたいので、現在の案に目を通していただき、明日の朝までに改善すべき点、改善する場合の文案をお示しいただければ助かります」

この文章は日本語としては問題ない。だが、受け取った上司は、なぜ新人の指図で突然明日の朝までの仕事を振られなければならないのかと疑問に思うはずだ。

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要約公開日 2024.01.12
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