ポーランド生まれの著者は、ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、23年前に来日した。日本ではモルガン・スタンレーやグーグルなどで人材育成や組織開発に従事してきた。
著者はこれまで数多の日本人ビジネスマンと接してきたが、奇妙に感じることがあった。それは、多くのビジネスマンが「今日は暑いですね」「今日は本当に寒いですね」といったフレーズから会話を始めることである。日本は四季のある国だから、季節の移り変わりを大事にしているのかと思ったが、天気の話は「雑談」を始めるための常套句であることに気がついた。
日本における雑談は、本題に入る前の「潤滑油」であり、場を和ませたり緊張感を緩和するためであったりする。一方、英語では「small talk」や「chat」が雑談と近い意味を持つが、そのニュアンスは日本語とは異なる。
グーグルではよく「chat」が行われていたが、互いの課題やプランをシェアして目指す成果や問題を明確にするといった、「ざっくばらんな情報交換」が目的であった。つまり、雑談は「行動や意識を変化させるような創造的なコミュニケーション」、いわば「dialogue」に近いものなのだ。
世界基準のビジネスでは「明確な意図を持ち、そこに向かって深みのある会話ができる人」が「雑談の上手い人」である。もしあなたが「目的のない会話」が苦手だとしたら、会話にしっかりした目的を定めることで、「雑談」を武器に変えることもできるだろう。
日本の雑談には「定番のフレーズ」が多い。「お疲れさまです」「いつもお世話になっております」「お元気ですか?」「お陰様で、元気にやっています」などがそれに当たる。外国人から見ると、3分の1は必要がないような決まりきった言い回しが多い。
英語でも「How are you ?」に「I'm great, thank you.」と答えるなど、定番のフレーズがあるが、著者の母国では「How are you ?」と聞いたら、個人的な事情を開示しながら答えるのが一般的だという。「今日は暑いですね」という内容にも「そうですね」と返すのではなく、「これだけ暑いと週末は何をしますか?」などと、話を広げるように会話する。
自己開示とは、自分の「思い」や「考え方」を素直に伝えることである。自己開示をすることで、相手に自分はどんな人物かを知ってもらい、心理的距離を縮め、信頼関係を築くことに役立てているのだ。
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