なぜ世界はEVを選ぶのか

最強トヨタへの警鐘
未読
なぜ世界はEVを選ぶのか
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最強トヨタへの警鐘
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なぜ世界はEVを選ぶのか
出版社
定価
1,980円(税込)
出版日
2023年09月04日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「なぜ、こんなにEVが走っているのだろうか」。新型コロナウイルスの流行による行動制限を各国が解除し始めた頃、要約者は米国の西海岸に出張した。

米国は典型的なクルマ社会だ。毎日数十キロの道のりを運転して通勤することはごく普通だし、サンノゼ空港のターミナルを出れば真正面に巨大なレンタカーの立体駐車場がそびえる。

米国人にとって移動とはすなわちクルマに乗ることと言っても過言ではない。当然、クルマの性能や居住性、すなわち乗り心地にはうるさい。

トヨタ自動車はそんな事情を察し、高い信頼性やきめ細やかなデザインで販売を伸ばしてきた。しかし、その確固たる地位はテスラや中国のBYDのようなEV専業メーカーの躍進に脅かされている。西海岸のベイエリアでは、数台に1台はテスラが走っている印象で、駐車場を歩けばBYDや韓国メーカーのEVも珍しくなかった。

本書は要約者が実感した「EVシフト」が世界的な潮流であると、多彩なデータや独自のインタビューをもとに示してくれた。もちろんトヨタ以外の、伝統的な欧米メーカーも四苦八苦している。しかし環境政策を背景に自国でのEVの販売増が顕著な国々と異なり、日本にEVシフトの波が来ていないことが、事態をより複雑にしている。

世界と日本の違い。それが政策の差なのかメーカーの対応力の差なのか、それとも消費者の意識の差なのかは、ぜひ本書を読んで考えてみていただきたい。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

大西孝弘(おおにし たかひろ)
日経BP ロンドン支局長
1976年横浜市生まれ。上智大学法学部卒業後、2001年に日経BP入社。週刊経済誌「日経ビジネス」、日本経済新聞・証券部、環境専門誌「日経エコロジー」の記者を経て、2018年4月より現職。日経ビジネス電子版でコラム「遠くて近き日本と欧州」を連載中。著書に「孫正義の焦燥」(日経BP)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    欧州を起点に、中国や米国の巨大市場で「EVシフト」が鮮明となっている。EVはもはやニッチな選択肢ではなく、消費者の重要な選択肢の1つとなっている。
  • 要点
    2
    世界的なEVシフトの一番の目的は環境保護ではない。「産業育成と雇用の創出」だ。環境保護を前面に押し出し、「社会正義がありそうな土俵で戦う」ことが意義付けられている。
  • 要点
    3
    欧州の自動車メーカーは政策による強力な後押しを背景に、「EVファースト」に舵を切った。一方で依然として多様なラインアップを維持するトヨタは低く評価されがちで、EV市場で苦戦している。

要約

EVシフトの主役たち

EVシフトの真の目的

「EVの普及は難しい」。著者はかつてそう結論付けていた。自動車メーカーがEVを発売しても売れ行きは鈍い。一方、トヨタ自動車のハイブリッド車ばかりが存在感を放っていた。

しかしコロナ禍を経て、世界のEVシフトは鮮明になっていく。2020年は欧州の「EV普及元年」となった。各国政府が景気をテコ入れするため、EVの購入補助を拡充した影響で、欧州主要国のEV販売台数は前年比の2倍になった。

中国も欧州に刺激され、あらゆる政策で普及策を講じ、年間500万台を超える巨大なEV市場となった。米国も2022年ごろから関連政策を推進している。

しかし、世界的なEVシフトの“一番”の目的は環境保護ではない。「産業育成と雇用の創出」だ。環境保護を前面に押し出しているのは、「競争をするなら社会正義がありそうな土俵で戦う」という意味合いが強い。

攻めるテスラ、BYD
3alexd/gettyimages

世界の自動車産業は、天下泰平の時を経て、大競争時代に突入した。その主役は「TBVT」と呼ばれる4社だ。それぞれ米国のテスラ、中国の比亜迪(BYD)、欧州のフォルクスワーゲン(VW)、日本のトヨタを指す。

企業規模や販売台数ではトヨタとVWの2社が圧倒的だ。しかし時代の風を受け、テスラとBYDはEVの販売台数を伸ばし、エンジン車の産業基盤を脅かしている。

既に企業の時価総額の面では、テスラはトヨタとVWを上回った。BYDもVWの時価総額に肩を並べる勢いだ。テスラとBYDの両社は、EV専業メーカーであることを強みに、EV専用の車体を開発、量産効果を追及していった。

既存の大手自動車メーカーにとって大一番となるのは、2025年以降の“第3世代”と呼ばれるEVだ。エンジンではなくソフトウェアが最重要部品となる中、開発体制を大幅に変えていくのは簡単ではない。

VWが直面する課題はトヨタの未来か

VWはドイツ最大の企業であり、産業の屋台骨だ。しかし2015年のディーゼルエンジン関連の不正発覚をきっかけに、EVシフトを鮮明にした。ただ、当初の想定どおりには販売が伸びていない。

課題はいくつもある中、特にソフトウェア開発に苦戦している。不具合も多く、2022年にはCEOの事実上の解任の一因になったほどだ。また利益率確保を急いで高級車からEV化を進めたため、「EVは金持ち用」というイメージが定着し、その払拭にも苦労している。ある政治家からは「フォルクスワーゲン(=国民車)から、プレミアムワーゲンに社名を変更しなければならなくなるだろう」と批判されている。

また自動運転技術の進展を見れば、自動車というモノを売るのではなく、移動というサービスを売る事業が拡大するのは間違いない。VWは移動サービスの子会社を設立し、挑戦を続けている。

EVはもはや「ニッチ」ではない

「環境」のEU、「電池」の中国、米国は?

「2035年に発売できる新車は排出ガスゼロ車のみとする」。欧州委員会が発表した規制案は大きな波紋を呼んだ。ハイブリッド車も認めないEVシフトを「無謀な企て」と評する見方と、「CO2削減計画に基づいたもの」とする見方に分かれた。とりわけ日本では前者の見方が強かった。

もちろん欧州の自動車業界もこの規制案に素直に従ったわけではない。しかし各論では議論をしながら、総論では対応を進め、EV販売も強化している。米国や中国が欧州の規制に追随すれば、これらの市場でも先行者利益を得ることができるからだ。

中国もEVシフトを強烈に進めている。EV購入補助政策とメーカーのコストダウンにより、一気に普及が進んでいる。電池の技術に関する特許でも中国企業は世界をリードしており、世界市場における中国メーカーのEVが台風の目になりつつある。

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要約公開日 2024.01.13
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