最後の海賊の表紙

最後の海賊

楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか


本書の要点

  • 気骨をもった経営者が減る中、事業家としてあり続ける三木谷氏は、今や「最後の海賊」とも呼べる。

  • 楽天モバイルが成し遂げた大偉業が、通信の完全仮想化である。日本では同社の赤字が注目され「経営不振」といわれるが、国外のカンファレンスでは高い評価を受けている。

  • 仮想化の立役者が、インドの通信会社から引き抜いたタレック・アミン氏だ。

  • 三木谷氏は「がん撲滅」の挑戦を続けている。父の罹患をきっかけに世界を駆け回り、私財を投資してきた。

1 / 4

最後の海賊・三木谷浩史とは

モバイル事業は「失敗」か「賭け金」か?

2023年2月にスペイン・バルセロナで開催された国際見本市「モバイル・ワールド・コングレス」。世界200の国から6万~8万人の通信事業関係者が集まるこのイベントで、楽天グループ会長兼社長の三木谷は商談に明け暮れていた。国内では「経営難」といわれることも多いが、世界中が楽天に注目している。背景にあるのは、楽天モバイルが世界で初めて実現した、携帯ネットワークの完全仮想化だ。楽天が挑戦した当初、「絶対に失敗する」という見方が強かった。しかし、現在すでに日本国内で500万人に近いユーザーが、日々楽天モバイルのサービスを利用している。三木谷は楽天市場や楽天カードで得た利益を携帯電話事業に注ぎ込み、仮想化に成功した一方で赤字は拡大している。三木谷からすれば世界進出に向けた「賭け金」であるが、国内メディアは「業績不振」と見ている。だが、たとえば電気自動車の廉価モデル開発に苦心していたテスラは、当時四半期ごとに3000億~4000億の損失を出していたとされる。そこから見れば「かわいいもの」といえるだろう。

なぜFCバルセロナを狙ったのか

Dmytro Aksonov/gettyimages

三木谷とバルセロナといえば、2016年から始まったFCバルセロナの縁も深い。ホームスタジアムの「カンプ・ノウ」を訪れた三木谷は、FCバルセロナ会長とサインを交わし、5年で300億円にものぼるパートナーシップ契約を結んだ。当時、楽天グループの海外事業といえばメッセージング・アプリやキャッシュバッククーポンサイトくらいだった。契約を結んだ当時、三木谷はこう語っていた。「プロ野球に参入したときも、みんなにバカにされたけど、あれで楽天は全国区になった。同じことを今度は世界レベルでやる」。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3912/4652文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2024.02.17
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

晴れ、そしてミサイル
晴れ、そしてミサイル
渡部陽一
チームX
チームX
木下勝寿
商社進化論
商社進化論
日経産業新聞(編)
人を導く最強の教え『易経』
人を導く最強の教え『易経』
小椋浩一
歩くとなぜいいか?
歩くとなぜいいか?
大島清
ボクと、正義と、アンパンマン
ボクと、正義と、アンパンマン
やなせたかし
山月記
山月記
中島敦
元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方
元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方
肉乃小路ニクヨ

同じカテゴリーの要約

Z世代の頭の中
Z世代の頭の中
牛窪恵
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
越川慎司
世界標準の1on1
世界標準の1on1
スティーヴン・G・ロゲルバーグ本多明生(訳)
増補改訂版 フィードバック入門
増補改訂版 フィードバック入門
中原淳
完訳 7つの習慣
完訳 7つの習慣
スティーブン・R・コヴィーフランクリンコヴィージャパン(訳)
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)
1分で話せ
1分で話せ
伊藤羊一
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
井上大輔
「仕事ができるやつ」になる最短の道
「仕事ができるやつ」になる最短の道
安達裕哉
部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也