歩くとなぜいいか?

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著者
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歩くとなぜいいか?
著者
出版社
出版日
2007年05月21日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

要約者自身、最寄りの2駅前から約30分程度を歩き、ときには2時間ほど自宅まで歩き続けたこともある。しかし、「こうやってたくさん歩けば痩せるかな」という期待がまずあった。純粋な好きという気持ちではない。「混んだ電車に乗る時間を少しでも短くしたい」という、少々消極的な理由もあった。本書の著者は「楽しいから」という理由が第一であってもよいと書く。きっと楽しめていなかったからだろう、要約者は結局、数駅分のウォーキングの機会も減ってしまっていた。

著者の大島清氏にとって、ウォーキングは趣味というより、生活の軸、ライフワークになっていたのではなかろうか。現役時代から欠かさず運動をされていたようだが、70代の後半にはほとんどの移動手段が歩くことになり、片道数時間の買い出しもさっさっさっと歩いていたという。歩きながら自然の中で生命を感じ、それらを守るための行動を起こすまでになった。それは決して使命感や義務感からではなく、「楽しい」が根底にあったことが十分に感じられるのだ。こんな豊かな生活を送りたい、そう思えた。

残念ながら、大島氏は2023年に逝去されたそうだ。インターネット上で作務衣姿の写真を拝見し、とても充実したウォーキングライフを貫かれたのではないかと想像する。

「歩くこと」に技術や能力は必要ない。楽しむことができれば、誰でも続けられるし、世界を広げる可能性にも満ちている。そのウォーキングの極意に、ぜひ触れていただきたい。

著者

大島清(おおしま きよし)
京都大学名誉教授。医学博士。1927年、広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ワシントン州立大学に留学。京都大学を定年退官後、サロン・ド・ゴリラを主宰。ビジネスマン、主婦、若者、子どもの諸活動と脳の関係を中心に執筆、講演などでエネルギッシュに活躍。
著書に、『人生は定年からが面白い』『脳が若返る遊歩学』『定年後に若がえる生き方』(以上、講談社)、『歩く人はなぜ「脳年齢」が若いか?』『犬と歩けば脳にいい!』『快活脳の育て方』『なぜか「肝っ玉が太い人」の共通点』『好かれる老人 嫌われる老人』『「生きる力」の強い人弱い人』『脳年齢が若くなる生き方』『かんたん、手抜き、うまい「おとこ飯」』(以上、新講社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    人が歩く理由は様々だが、第一の理由は「楽しいから」だ。歩くことが楽しければ無理なく続けられるし、実用的な理由はその後についてくる。
  • 要点
    2
    江戸時代の庶民は3万歩を歩いていたが、現代人は歩いても5000歩程度だ。1日1万歩を目指し、意識して歩いてみよう。
  • 要点
    3
    ウォーキングの怖いところは、最初から無理して長く歩けてしまうところだ。しかし、体が悲鳴をあげている場合はそれに従い、早く切り上げることが正解である。まずは無理せず、30分を目安にしてみよう。

要約

人はなぜ歩くのだろうか

歩くのは楽しい

人が歩くのには、実にたくさんの理由がある。「足」がある、「道」がある、行くべき「場所」がある、「ダイエット」になる、「考えごと」は歩いた方がまとまりやすい。どれも正解なのだろう。とはいえ、もし歩くことが苦痛だったとしたら、これだけの歩く理由があっても、「何とかして歩かない方法」を考えるのではないだろうか。

しかし、外には楽しそうに歩いている人がたくさんいる。実は、「楽しいから」まず人は歩くのであって、いろいろな目的はそのあとで出てきているのかもしれない。

歩いてみるとさまざまな光景に出合い、多くの人とすれ違う。ウィンドウショッピングをしたり、遠くにあった山がだんだん近づいてきたりするのも楽しい。こうして「展開する出来事」、情報を楽しんでいると、生きている実感を持てる。

楽しく歩けば、健康になり、ダイエットもできて、心が明るくなる。食欲が増すから食事も楽しくなり、心の風景は豊かになる。「歩くと楽しい」ことを知っていれば、歩くことは自然と長続きする。

【必読ポイント!】 歩くことは趣味の王様だ

現代人は歩いていない
bee32/gettyimages

現代では「歩いている」人でも1日7000歩程度だし、1日数百歩という極端な人もいる。デスク仕事や会議に時間を費やすと、驚くほど歩かずに済んでしまう。

江戸時代の庶民は、1日3万歩は歩いていたという。明治から大正にかけての会社員も同程度であり、一歩平均を50センチとすると、1日15キロ歩いていたことになる。

現代人は、ただ暮らしているだけでは1万歩さえ歩けない。「歩こう」と意識する必要がある。1日1万歩を歩いていれば、肥満も生活習慣病も防ぐことができ、健康な生活を維持していける。

しかし、「歩かなければならない」という気持ちでは、ストレスが溜まってしまう。どうせなら楽しく歩きたい。そうして体や気持ちをリラックスさせたい。「楽しんで歩けば、歩くことが趣味になる」。その域に達すれば、1日5000歩さらに歩くことも簡単なはずだ。5000歩は、約2~3キロの距離だ。仕事や家事の合間に楽しく片道1.5キロの道を往復するだけでいい。リフレッシュしながら、脳や体のためにもなる。歩くことは趣味と実益を兼ねられるのだ。

気持ちの背筋を伸ばす

歩かないでいれば、やがて足腰が弱まり、気持ちも沈んでしまう。「『歩くこと』と『気持ち』は連動している」のだ。最後のふんばりがきかないのも、物事を簡単に諦めてしまうのも、ちょっとしたトラブルに立ち直れないほど落ち込んでしまうのも、普段歩いていない場合が多い。

意識的に歩くことで、気持ちが強くなることがある。著者の知人に、年齢のせいで気力が衰えたことを嘆く人がいたという。どうやら、会社を定年退職したことで生きがいを失い、新たに打ち込めるものを探したもののどれも長続きしなかったようだ。そこで著者は、1日1万歩を目安に意識して歩くことを勧めてみた。一念発起して意識的に歩き始めた彼は、やがて歩くこと自体に楽しみを覚え、足腰が鍛えられたことで気力も満ちてきた。自嘲的な物言いやグチもなくなった。「歩くことによって自然に気持ちも強くなった」のだろう。

気持ちが弱っているときに自分を責めることは、かえって逆効果だ。そういうときは、さっさっさっと少し早歩きしてみるだけで、くよくよしていたことがばかばかしくなってくる。前向きに問題と向き会う気持ちを持てるようになる。歩くことは強い気持ちを蘇らせるのだ。

ほかの趣味も引き寄せる
Xsandra/gettyimages

歩くことが好きになると、そこからいろいろな趣味に広がっていく。だから、無趣味だという人には、まず歩いていただきたい。

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要約公開日 2024.02.10
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