眠れないほどおもしろい 紫式部日記

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眠れないほどおもしろい 紫式部日記
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眠れないほどおもしろい 紫式部日記
出版社
出版日
2023年12月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

『源氏物語』の作者である紫式部。その名前はあまりに有名だが、じつはこれは通称であり、実名も生没年もわかっていない。紫式部の残した作品、そして紫式部自身の生涯についての興味は尽きない。

『紫式部日記』は紫式部が記したとされる日記である。平安の日記とは個人的なものではなく、主に男性貴族が政務について公的な記録として書くものであったが、藤原道長の要請で中宮彰子に仕えることになった紫式部は、1008年〜1010年の宮中の様子を記録している。半分以上は彰子の出産記録にあてられ、のちの後一条天皇である敦成(あつひら)親王の誕生や、祝いの儀式などの描写が詳細に残されている。この記録部分も興味深い内容であることは間違いないが、全2巻からなる日記の2巻には、手紙も含まれており、そこに記された同僚の女房評、斎院の女房評、そしてライバル関係にあったと噂される清少納言評は、読んでいるこちらが冷や冷やしてしまうほどの忌憚のない書き振りで、読者を引きつける力がある。

本書『眠れないほどおもしろい 紫式部日記』は、漫画やイラストも交えながら『紫式部日記』の魅力をわかりやすく、親しみやすく紹介してくれる。

紫式部は引っ込み思案で内気で仕事のやる気がなかった、同僚たちと陰湿ないじめに加担していた、清少納言に対しては辛辣な批判を残している、こんな事実を知っていくと、紫式部という人物がどんどん身近に感じられるようになる。紫式部の生涯を描く2024年の大河ドラマ『光る君へ』とあわせて楽しむのもよいだろう。

ライター画像
池田友美

著者

板野博行(いたの ひろゆき)
岡山朝日高校、京都大学文学部国語学国文学科卒。
ハードなサラリーマン生活から、予備校講師に転身。
カリスマ講師として、全国の生徒に向けての講義や参考書を執筆。
『紫式部日記』の中で好きな女房は「和泉式部」、好きな男性貴族は「藤原実資」。

著書に、『眠れないほどおもしろい源氏物語』『眠れないほどおもしろい百人一首
『眠れないほどおもしろい万葉集』『眠れないほどおもしろいやばい文豪』『眠れないほどおもしろい徒然草』『眠れないほどおもしろい平家物語』『眠れないほどおもしろい吾妻鏡』『眠れないほどおもしろい日本書紀』『眠れないほどおもしろい徳川実紀』『眠れないほどおもしろい信長公記』(以上、三笠書房《王様文庫》)の他、多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    『紫式部日記』の中心は、中宮彰子の出産に関する記述である。難産の末に彰子が無事出産を終えると、彰子の父・藤原道長は大喜びで、若宮が道長の服にお漏らしをしても「うれしい」と言うほどだった。
  • 要点
    2
    最初、女房の仕事を紫式部は好きになれなかったようだ。しかし、里帰りをきっかけに、自分の居場所は彰子の御前であると感じるようになる。
  • 要点
    3
    紫式部は多くの「女房評」を残している。特に清少納言に対しては辛辣な評価を下している。

要約

『源氏物語』の作者・紫式部

女房文学が花開いた、平安の後宮

紫式部は20代後半ごろに、山城守(やましろのかみ)を務めていた藤原宣孝と結婚する。999年頃に一女を授かるが、宣孝が流行病に倒れたことで2人の結婚生活は3年ほどで幕を閉じた。幼い娘と二人きりになった紫式部は、物語を書き始める。これがのちに54帖にもわたる大作となる『源氏物語』であるといわれている。

紫式部の文才が時の権力者である藤原道長の目に留まり、道長の娘で一条天皇の正室である中宮彰子に女房として仕えることになった。当時の女房とは、一人住みの「房」、すなわち部屋を与えられ、宮中や貴族の屋敷に仕えた女性のことを指す。皇后や中宮などが住む宮中の奥向きの宮殿は「後宮」と呼ばれ、この時代は男子禁制ではなく、天皇や貴族たちが出入りするサロンのような役割をもっていた。

道長は自分の娘に箔をつけるため、身分の高い貴族の娘を女房として雇うこともあった。

後宮に集った女房たちは赤染衛門(あかぞめえもん)や和泉式部(いずみしきぶ)など教養が高く、平仮名を使って和歌を詠んだり日記や物語を書いたりと、「女房文学」と呼ばれる作品が多数生み出されていた。紫式部は道長の支援を受けて『源氏物語』を完成させたとされる。一条天皇のもう一人の正室であり、彰子とライバル関係にあった定子に仕えていた清少納言が『枕草子』を書いたのもこの時代だ。

【必読ポイント!】 中宮彰子、若宮ご出産の記録

彰子、里帰り出産
nunini/gettyimages

『紫式部日記』の中心は、彰子の出産、敦成(あつひら)親王誕生に関する記述である。

紫式部が出仕して2〜3年が経った1008年の秋、土御門殿(つちみかどどの)と呼ばれる道長の広大な邸宅に、彰子は出産のために里帰りしていた。

道長が強引な方法を使って娘の彰子を中宮の座につかせた結果、一条天皇には二人の正妻がいるという前代未聞の事態になっていた。しかし、一条天皇が愛した定子は第3子の出産の後産を終える前に、一男二女を残して24歳の若さで亡くなってしまう。

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要約公開日 2024.02.29
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