経営学習論とは、「“企業・組織に関係する人々の学習”を取り扱う学際的研究の総称」である。日本では、ポストバブル期に企業の「人材育成」が機能不全に陥ったことから、経営学習論の知見が強く求められるようになった。
著者は、1990年代から2000年代にかけて、企業における人材育成や学習の問題が経営課題として「前景化」した要因として、3つの仮説を挙げる。それは、(1)職場の社会的関係の消失、(2)仕事の私事化・業務経験の付与の偏り、(3)高度情報管理による学習機会喪失である。
第1の理由「職場の社会的関係の消失」とは、新入社員・若手社員の能力形成を支えていた人的ネットワークが失われ、ケアが行き届かなくなったということである。
ポストバブル期の人的資源管理の特徴は「人件費抑制」と「成果主義導入」である。長期の不況に対応するため、長期雇用と年功序列賃金が撤廃され始めた。また生産性を上げるべく、組織のスリム化・フラット化を図った。これにより組織からは「教育係」を担う人が消え、若手の育成に注力できなくなってしまった。
第2の理由の「仕事の私事化」とは、成果主義のもとで個人が自分の業績だけを追い求めるようになり、他のメンバーの発達支援を行わなくなったことを意味する。
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