リフレクティブ・マネジャー

一流はつねに内省する
未読
リフレクティブ・マネジャー
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一流はつねに内省する
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リフレクティブ・マネジャー
出版社
出版日
2009年10月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「課長の椅子」と聞いたとき、その椅子は輝いているだろうか。

1980年代までとそれ以降で「課長」の役割は大きく変化したと本書は述べる。80年代までは「課長の椅子」は光り輝くものだった。必死に勉強して昇進試験に臨み、受かれば社内でも家庭でも尊敬を受ける。「課長」はそういうポジションだった。ところが、90年代頃からその様相は一変する。成果主義が導入され始め、昇進は単純なものではなくなった。先を見通すことが難しく、どんな企業であっても「安泰」とは言えない現在、「課長の椅子」は輝きを失っている。もはや「課長」のような中間管理職、マネジャーは敬遠されがちなポジションですらあるという。本書はそんな悩めるマネジャーたちに向けた一冊だ。

本書ではマネジャーの教育者としての役割に注目し、大人が職場で学び続けるためにはどうすればいいかを論じる。人材育成は必ずしも一方向的な情報伝達ではない。実は教える側の立場であるマネジャーも成長のチャンスに満ちているのだと著者らは主張する。

本書は50代と30代という世代と、経営学と教育学という専門の異なる2人の著者の共著である。そのため、読み手の世代によって共感できるポイントが異なるかもしれない。本書の主張する「対話」による学び合いとは、まさに、異なる世代や専門の人との交流によって生じる。本書を読むと、2人の著者が互いの論によって新たな気づきを得て学んでいる様子がわかり、「教える側が学び続ける」ことを体現している。刺激的な読書体験となるだろう。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

中原淳(なかはら じゅん)
立教大学経営学部教授。1975年、北海道生まれ。大阪大学博士。東京大学大学総合教育研究センター准教授を経て現職。「大人の学びを科学する」をテーマに企業・組織における人々の学習・成長・コミュニケーションについて研究。共編著・共著に『企業内人材育成入門』『ダイアローグ 対話する組織』(以上、ダイヤモンド社)など多数。研究の詳細は、Blog : NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)。

金井壽宏(かない としひろ)
立命館大学食マネジメント学部教授、神戸大学名誉教授。1954年、兵庫県生まれ。Ph.D.(マサチューセッツ工科大学)。リーダーシップやキャリア、モチベーションなど、人の発達や心理的側面に注目する。主著に『変革型ミドルの探求』(白桃書房)、『働くひとのためのキャリア・デザイン』(PHP新書)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    現在の組織におけるマネジャーは、業績を上げつつ人が育つ環境を整備することも期待されており、その仕事は限りなく広がっている。
  • 要点
    2
    マネジャーには部下への教育者という役割が織り込まれているが、それは先生のように何かを教えることではない。プレイヤーとしてよいモデルになることで部下の育成に貢献できる。また、部下に教えることを通じてマネジャー自身も学びが得られる。
  • 要点
    3
    職場での学び合いに必要なのは対話である。他者との対話を通じて新たな視点を得る協調学習が成立する。マネジャーの役割は、部下たちが互いに学び合う対話ができる環境をデザインし、自らも学び続けることだ。

要約

マネジャーの仕事の変化

輝きを失った「課長の椅子」(中原淳)

かつて、課長昇進は会社員にとって成功の指標だった。自社の成長と拡大を信じ、管理職候補者は家族も巻き込んで必死に勉強して昇進試験に臨み、課長になることで職場の信頼も家族からの尊敬もかちえていた。

しかし、日本企業を取り巻く環境は激変した。世の中全体の不確実性と複雑性が増し、未来が見通せなくなっている。どんな大企業でもいつまで存在できるかわからない。こうした状況下で「課長の椅子」は輝きを失っている。

90年代頃から企業に成果主義の導入が進み、年次による単純な昇進レースは消えていった。この時期を境に、中間管理職のプレイングマネジャー化、コンプライアンスの徹底とそれにかかわる管理業務が増加、会社全体では仕事の大規模化やスピード化などが起き、働く人の多忙化が進んだ。職場での人材育成が機能不全に陥り始める中、課長は業績を上げつつ人が育つ環境も整備しなければならないという難問を背負うことになった。

現在の課長は、職場で生じるあらゆる問題に対処する「場当たり的な問題解決者」と位置付けられることが多い。実際には役員以上が解決すべき問題であっても、あらゆる問題が課長に押し付けられ、現場のマネジャーの仕事は限りなく広がっている。

それは本当に「課長」の仕事か?(中原淳)
hobo_018/gettyimages

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要約公開日 2024.04.20
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