賢い人のとにかく伝わる説明100式

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出版社
かんき出版

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出版日
2024年02月19日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「説明力」を高めるために、「書き方」「話し方」といった説明の「スキル」を覚えて実践しようと努力している方もいるでしょう。でも、「スキルアップ」だけに意識が向いているうちは、残念ながら「説明上手になる」というゴールへは近づけません。――本書の「はじめに」にある、印象的な一節だ。

では、どうすれば「説明力」を高められるのか。著者の答えは「観察すること」だ。観察によって、自分と相手の間にある「差」と、相手の状況やニーズを把握することが、説明上手になるための第一歩だという。要約者はこのパートを読んで、「説明」に抱いていたイメージがガラリと変わった。

本書の著者、深谷百合子氏はかつて、ソニーグループ、シャープで技術職・管理職として勤務していた。そこで、専門用語を噛み砕いて説明する能力が評価され、工場見学者への説明やメディア取材への対応を任されるようになったそうだ。その後、中国の国有企業にヘッドハンティングされ、100人以上の中国人部下を育成した経験も持つ。本書ではそんな深谷氏が、報告、連絡、相談、営業、プレゼン、部下育成、会議、案内など、幅広いシーンで使える「説明」のポイントを教えてくれる。

本書の特徴のひとつは、著者の飾らない書きぶりだ。例えば「いいたとえができると、『やった!』と嬉しくなります」という一文がある。より良いたとえを見つけようと努力する著者の姿を想像し、思わず心が和んだ。あなたも、親切に教えてくれる上司や先輩が近くにいるような気分で、楽しく読み進められることだろう。

ライター画像
Harumi Yaguchi

著者

深谷百合子(ふかや ゆりこ)
合同会社グーウェン代表。「難しい」を「易しい」に変える伝え方ナビゲーター/コミュニケーション講師/ビジネスライティングトレーナー/ライター/ラジオパーソナリティ/日本NLPコーチング協会認定NLPコーチ
大阪大学卒業後、ソニーグループ、シャープで技術職・管理職として工場の環境保全業務を行う。専門用語を噛み砕いて説明できることが評価され、「バックヤードの案内人」として、工場の見学者に環境対策の説明や、テレビや新聞からの取材に対応する業務を任されるようになる。さらに、地域の市民講座や学校での出前授業の講師を担当。子どもから専門家まで、対象者に合わせて説明の方法を工夫したことで、「的確で分かりやすい」と社内外から好評を得る。ヘッドハンティングにより中国国有企業に転職後は、100名を超える中国人部下の育成を通じ、相手に合わせた伝え方が国境の壁を越えて成果を出す鍵だと確信。
2020年に独立。会社員時代、さまざまな立場の人に合わせて説明の方法を工夫してきた経験を生かし、「コミュニケーション」をテーマに活動を開始。受講者から「伝えたいことが相手に伝わるようになり、仕事の効率が上がった」「自信を持って自分のことを伝えられるようになり、起業家のスピーチアワードで準グランプリを獲得した」などの成果報告を多数受ける。再現性の高い言語化力、説明力には定評がある。
『JBpress』『セゾンくらしの大研究』『天狼院書店WEB READING LIFE』などのメディアで執筆実績があるほか、ラジオパーソナリティとしても活動中。

本書の要点

  • 要点
    1
    誰かに何かを説明する際は、「自分が言いたいこと」よりも「相手の聞きたいこと」を伝えるようにしよう。
  • 要点
    2
    常に結論を先に伝えるのが最善だとは限らない。まずは「スタート地点」を共有するべきシーンもある。
  • 要点
    3
    報告・連絡・相談では、「私見」よりも「事実」を伝えよう。一方、相手から意見を求められたときは、「私見」→「事実」の順番が正解だ。
  • 要点
    4
    お客様の「欲しい」という気持ちを引き出すには、商品のスペックよりも、商品によってもたらされる「嬉しい変化」を伝えるとよい。

要約

【必読ポイント!】 勘違い・行き違いがなくなる説明

まず「相手の聞きたいこと」を確認する

著者は会社員時代、地元の住民や見学に来られた方に対し、工場の環境対策について説明する仕事をしていた。当時のエピソードを1つ紹介しよう。

住民を対象に、工場に新しく導入する設備の説明会を開催したときのこと。「こちらの工場では大規模な太陽光発電を導入して、温暖化対策をしています」と説明すると、参加者たちは「ふーん」といった反応だった。一通り説明を終えると、ひとりの男性が質問してきた。「環境対策の話はええんやけど、工場の屋上から出ている白い煙、あれって何? 何か有害なものとか含まれていないの?」

著者ははっとした。住民が聞きたかったのは、「工場がいかに環境対策をしているか」ではなく「公害や健康への影響」「工場の安全対策」だ。それなのに、自分はこれまで「伝えたいこと」だけを伝え、「相手の聞きたいこと」を伝えられていなかった。

それ以来、誰かに何かを説明するシーンでは、「自分が言いたいこと」ではなく「相手の聞きたいこと」を考え、確認し、伝えるようになった。

相手と自分のイメージを一致させる
dai2003/gettyimages

説明する際、相手の頭の中に具体的なイメージが浮かんでいなかったり、相手の抱いたイメージが自分のイメージとズレていたりしたら、勘違いや行き違いが起こりかねない。

著者がかつて中国で仕事をしていたとき、部下に配管の改造工事を指示し、「なぜ改造するのか」「どう改造するのか」などを説明した。だが、数カ月後に「配管工事が完了した」と報告を受けて現場に向かったところ、工事のあとに開けておくべきバルブが閉まっていたという。

ここで著者は、部下と「完了」というゴールのイメージを共有できていなかったことに気づいた。著者にとっての「完了」は「新しい配管がつながってバルブを開けた状態になっていること」だったが、部下にとっては「新しい配管がつながること」だったのだ。

改造工事の説明をしたあと、部下に「何をしたらいいか、あなたの言葉で説明してみて」と言って確認しておけば、このような行き違いは発生しなかっただろう。

「イメージの解像度を上げる言葉」を使う

あなたの説明を、相手の頭の中でくっきりイメージさせると、このような勘違いや行き違いを防ぐことができる。ここで使えるフレーズは3つある。

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要約公開日 2024.07.02
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