現在、マネジャー一人がリーダーシップを発揮してチームを束ねることは難しくなる一方だ。その背景には、「複雑化」「少数化」「多様化」「分散化」「多忙化」の5つの変化がある。マネジャー一人だけであらゆる課題に対処することは、もはや「無理ゲー」に近い。
そもそもリーダーシップとは、集団の共通目標の達成に向けた影響力のプロセスである。ヤフー元会長の宮坂学氏は、リーダーシップの要諦を山登りにたとえた。それは、仲間とともに登る山の高さを決めて、目標の達成に向けてお互いに働きかけ合うすべてのプロセスだという。ここからいえるのは、リーダー一人が登る山の高さを決めきり、先頭に立って登る必要はないということだ。
本書では、シェアド・リーダーシップに関する様々な定義から、共通した特徴が整理されている。これまでリーダーシップは、一人の公式リーダー個人が集中して、上から下へと垂直方向に発揮するものだと考えられていた。よって、その影響の結果は予定調和的だった。これに対し、シェアド・リーダーシップとは、複数のメンバーがリーダーシップを発揮しているチームの状態を指す。発揮の方向はメンバー間で水平方向になり、リーダーシップはチームのあちこちに散在する。よって、その影響は創発的なものとなる。
こうした特徴を踏まえて、本書では、シェアド・リーダーシップを次のように定義する。「一人ひとりがリーダーシップを発揮し、その影響力が、複数のチームメンバーによって担われている創発的なチームの状態」。ただし、シェアド・リーダーシップなチームをつくるうえで、マネジャーからの働きかけは重要な役割を果たす。
現在、シェアド・リーダーシップがもたらす効果を実証する研究が増えている。その研究によると、業績、イノベーション、メンバーの満足度、メンバーのリーダーに対する評価に、プラスの関係があるという。さらには、テレワークによる求心力の低下をカバーする効果も期待できる。
では、どうすればマネジャーは職場でシェアド・リーダーシップな全員活躍チームをつくれるのか。本書では、その方法を「シェアド・リーダーシップ 5STEPモデル」によって解説する。このモデルは、日本のイノベーティブな企業14社でシェアド・リーダーシップなチームを実現しているマネジャーに対する著者らの調査をベースとしている。
STEP1:イメトレしてはじめる
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