ビジネスモデル・エクセレンス
ハイアールはなぜ白物家電の王者になれたのか

未 読
ビジネスモデル・エクセレンス
ジャンル
著者
ビル・フィッシャー ウンベルト・ラーゴ ファン・リュウ 松本裕(訳)
出版社
定価
2,052円
出版日
2014年12月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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ハイアールはなぜ白物家電の王者になれたのか
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ビル・フィッシャー ウンベルト・ラーゴ ファン・リュウ 松本裕(訳)
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2,052円
出版日
2014年12月15日
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革新性
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レビュー

「ハイアール」という社名を聞いたことがあるだろうか。家電量販店の冷蔵庫・洗濯機売り場で「Haier」のブランド名を目にした経験を持つ読者もいるかもしれない。中国の小さな冷蔵庫工場として出発したこの会社は、本書が刊行された2014年時点で、白物家電の世界シェアナンバーワンの座を守り続けている。

既存の世界的大企業との厳しい競争の中で、ハイアールはいかにして世界トップの家電メーカーに上りつめたのか。そして、ハイアールが実践した革新的なビジネスモデルとはどのようなものか。本書は、その組織構造を紹介し、経営学の観点から解説する。これからの企業に求められる成功組織モデルを提示する。

ハイアールの特徴を一言で言い表すならば「絶えず変革を続ける組織」ということになる。ハイアールは、驚くべきことに、30年近くにわたって、連続的に大改革を続けているのだ。不確実性が高まるビジネス環境の下で成功を収めるには、顧客の変化を把握し、顧客に合わせて常に組織を変化させる必要がある。この究極の顧客主義のために、ハイアールはすべての従業員が顧客と接点を持つ「逆三角形の組織」を生み出し、数十人単位で構成される事業ユニット「ZZJYT」の仕組みを導入した。

ハイアールの組織モデルは、人材活用に悩むすべての経営者・人事担当者に、重要な示唆を与えてくれる。めまぐるしく変わり続ける時代の中で生き残るためのヒントを、ハイアールの歴史に見出すことができるはずだ。

髙橋 三保子

著者

ビル・フィッシャー
スイスのビジネススクール・IMD教授。専門はイノベーション・マネジメント。上海の中欧国際工商学院(CEIBS)学長、ノースカロライナ大学チャペルヒル校ケナン=フラグラー・ビジネススクールのドルトン・L・マクマイケル特別教授などを歴任。IMDではイノベーションに特化した短期公開研修「Driving Strategic Innovation」のディレクターを務める。

ウンベルト・ラーゴ
イタリア・ボローニャ大学経営学准教授。これまでに(ときには並行して)大学教授、民間・公的組織経営者、起業家、コンサルタントなどとしても活動。欧州サッカー連盟(UFEA)クラブ・ファイナンシャル・コントロール機関の一員でもある。

ファン・リュウ
IMD研究員。研究内容は経営イノベーション、マーケティング、グローバルビジネスなど。

本書の要点

  • 要点
    1
    1984年、中国山東省「青島冷蔵庫」の工場長に就任した帳瑞敏(チャン・ルエミン)は、「高品質な製品で強力なブランドを構築する」というビジョンを掲げ、経営危機に陥っていた小さな冷蔵庫工場を復活させた。
  • 要点
    2
    顧客ニーズに最大限応えるため、帳は会社の組織図をひっくり返し、社内に「ZZJYT(自主経営体)と呼ばれる事業ユニットを立ち上げた。
  • 要点
    3
    「ZZJYT」のしくみを創ることで、帳は従業員一人ひとりの起業家精神を目覚めさせ、その能力を引き出すことに成功した。人材をフルに活かすことで、ハイアールは世界最大の白物家電メーカーの地位へ上りつめたのである。

要約

「青島冷蔵庫」から「ハイアール」へ

底なしの経営危機に陥っていた「青島冷蔵庫」

1970年代の中国では、家電の国内市場というものが事実上存在しなかった。しかし、高まる需要につれて多くの地方自治体が自身で企業を立ち上げるようになり、1978年に20社しかなかった国内家電メーカーの数は、1985年には115社に増加した。それでも製品の品質はきわめて低いままだったが、製品の供給が不足していたために値段は高騰した。

中国東北部の山東省、青島市が管理する冷蔵庫工場「青島冷蔵庫」も、ほかの多くの企業と同様、品質と労働意欲の低さで知られていた。青島冷蔵庫は底なしの経営危機に陥っており、新技術の導入も止まっていた。が、当時別の家電会社の副部長をしていた帳瑞敏(チャン・ルエミン)という若い役人が、青島冷蔵庫に競争力をつけるため、海外から生産ライン技術を導入する仕事を任せられた。ドイツのリープヘル社から生産ラインを買い取ることに成功した帳は、新しい工場長を探すも見つからなかったため、仕方なく自身が責任者になる。ここから「ハイアール」の歴史が始まる。

不良冷蔵庫76台をハンマーでたたき壊す
Photodisc/Photodisc/Thinkstock

帳は、製品の品質の高さを基盤に強力で価値のあるブランドを構築すれば、差別化が図れるはずだという信念を持っていた。故障した冷蔵庫を売っていては、そのビジネスモデルを実現できない。

1985年のある日、ある客が不良品の冷蔵庫を工場に持ち込んで帳に見せた。帳とその客は一緒に400台ある在庫をすべてチェックし、代わりの製品を探した。その過程で、帳は在庫商品の20%が受け入れがたいレベルの品質であることに気づいた。

意を決した帳は、76人の従業員に76台の低品質な冷蔵庫を運び出させ、表通りの公衆の面前で巨大なハンマーを使って粉々に破壊させた。新品の価格で売ることができた製品をだ。

この出来事は人びとの記憶に強く残り、少なくともハイアール従業員や顧客が2世代にわたって今でもその話をしている。また、この出来事により、中国のほぼすべての消費者の頭の中で、ハイアールというブランドと品質が強く結びつけられたのだ。

新しいビジネスモデルのための変革
Rasica/iStock/Thinkstock

「高品質で差別化された商品を高値で売る」というビジョンは、当時の中国では想像もつかないことだった。供給さえあれば需要が生まれる、完全な売り手市場だったからだ。しかし帳は、経済革命が将来市場の激変を生み、差別化された商品はそのときに強い競争力をもつはずだと確信していた。

しかし、従業員は、努力をしても収入が上がらないことを見越して、やる気を失っていた。

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