「イノベーションのファーストマイル」とは、優れたアイデアを市場で花咲かせるまでの過程の初期段階を指す。
起業家はファーストマイルでつまずくことが多い。ビジネスモデルに欠陥があるにもかかわらず、ただひたすら突き進んだり、一度に多くの目標を達成しようとして、大切なことを見失ったりする。新しいものを創り出すときには、常に想定より長い時間と多くの費用を費やすものであり、その結果、リソースを使い果たせばそこで終了となる。このようにファーストマイルには問題が山積みなのだ。
これらの問題を解決するためには、戦略上の主要仮説を科学的手法でコントロールすることが必要だ。本書ではそのためのツールとして頭文字「DEFT」で示される4つのプロセスを紹介している。Dはアイデアの文書化(Document)、Eはアイデアをいろいろな角度から評価し、不確実性について明らかにすること(Evaluate)、Fは戦略上の主要仮説にフォーカスすること(Focus)、そしてTは成功への確度を高めるために行うテスト(Test)を指す。
DEFTの最初のステップは、アイデアを書き下ろすことだ。自分がこれからしようと思っていることを書き下ろす。ばかばかしいと思うかもしれないが、驚いたことに、実に多くのイノベーターがこのステップをおろそかにしている。
アイデアを書き下ろす際に気をつけるべきことは、イノベーションによって解決しようとしている問題点と、問題を解決することによって達成されるべき目標(売上、利益など)が明確になっていなければならない。市場/顧客が求めているものがはっきりと見えているか、その需要にこたえる方法が明確になっているか、その方法は価値を創り出すものであるか、という3つの要件を満たしていなければ、成功するイノベーションにはなり得ない。
次の点にも注意しながら、アイデアを書き下ろしていこう。
① アイデアとビジネスを区別すること。「もし~だったら」というアイデアは、イノベーションの発端になるとはいえ、それだけではなにも確約されない。その事業でイノベーションを起こし、それを収入に結びつけ、利益やキャッシュフローを生むためには生産、流通、アフターサービスなどの企業運営上の問題も解決されていなければならない。
② 初めか終わりかの一方だけに注力しないこと。イノベーターは企業が最初の1ドルをどのようにして稼ぐかをはっきりとイメージする(誰が顧客になってくれるのか、顧客は何に対して支払いをしてくれるか、どのようにして製品・サービスを手に入れるのか)と同時に、もし自分たちが成功したならば3~5年後に自分たちの周りがどう変わっているという最終的なゴールについてはっきりしたイメージを持っていなければならない。
③ 一部の関係者の視点だけで物事を見ないこと。
3,400冊以上の要約が楽しめる