ザ・ファーストマイル

イノベーションの不確実性をコントロールする
未読
ザ・ファーストマイル
ザ・ファーストマイル
イノベーションの不確実性をコントロールする
未読
ザ・ファーストマイル
出版社
定価
3,080円(税込)
出版日
2014年12月02日
評点
総合
4.2
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

起業家や新規事業開発を担う人は「ファーストマイル」と呼ばれる初期段階でつまずくことが多い。ビジネスモデルに欠陥があるにもかかわらず、ただひたすら突き進んだり、一度に多くの目標を達成しようとして、大切なことを見失ったりしてしまうからだ。特にスタートアップ企業は当初の想定よりも長い時間や多くの資金を費やしてしまいがちで、リソースを使い果たせばそこで終了となる。

本書はこのファーストマイルを一刻も早く、無事に通り抜けるためのツールを提供してくれる。著者はコンサルティングや投資の経験から、システマティックにアイデアを評価し、仮説検証を行うツールを編み出した(※一部のツールは参考文献から引用しているものもある)。本書に限らず、新規事業のための書籍は数多く出版されているが、これまではアイデアを生み出すことやそのアイデアを事業化してからやるべきことについて述べたものが多かった。アイデアを事業化するところについては、「勇気を持ってまずは一歩踏み出してみよう」「小さく始めて、後で改善していこう」という論調のものも少なくない。そういった意味では、本書のようにアイデアを錬成し、初期の不確実性を可能な限り取り除くことに特化した書籍は目新しいと言える。

投資家が書いた本ということは、投資家の目からみて、どういったアイデアなら出資してくれそうか、という判断基準を記した本としても読むべき価値があり、資金ニーズがある起業家にはぜひおすすめしたい。

ライター画像
苅田明史

著者

スコット・D・アンソニー
クレイトン・クリステンセン教授が創設したイノサイト社のマネージング・パートナー。イノベーション分野に特化したグローバル経営コンサルティングと投資活動を行なう。シンガポール・オフィスを本拠地として、アジア太平洋地域でベンチャーキャピタル投資活動を行なう(イノサイトベンチャーズ社)。また、グローバル企業が長期にわたって存続するための戦略立案や、イノベーション実現に向けて支援を行なっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    起業家は優れたアイデアを市場で花咲かせるまでの過程の初期段階、「ファーストマイル」でつまずくことが多い。
  • 要点
    2
    ファーストマイルにおける問題を解決するためには、「DEFT」で示される4つのプロセス(Dはアイデアの文書化(Document)、Eはアイデアをいろいろな角度から評価し、不確実性について明らかにすること(Evaluate)、Fは戦略上の主要仮説にフォーカスすること(Focus)、そしてTは成功への確度を高めるために行うテスト(Test)を指す)を実践するべきだ。

要約

ファーストマイルとは何か

起業家はファーストマイルでつまずくことが多い
KentWeakley/iStock/Thinkstock

「イノベーションのファーストマイル」とは、優れたアイデアを市場で花咲かせるまでの過程の初期段階を指す。

起業家はファーストマイルでつまずくことが多い。ビジネスモデルに欠陥があるにもかかわらず、ただひたすら突き進んだり、一度に多くの目標を達成しようとして、大切なことを見失ったりする。新しいものを創り出すときには、常に想定より長い時間と多くの費用を費やすものであり、その結果、リソースを使い果たせばそこで終了となる。このようにファーストマイルには問題が山積みなのだ。

これらの問題を解決するためには、戦略上の主要仮説を科学的手法でコントロールすることが必要だ。本書ではそのためのツールとして頭文字「DEFT」で示される4つのプロセスを紹介している。Dはアイデアの文書化(Document)、Eはアイデアをいろいろな角度から評価し、不確実性について明らかにすること(Evaluate)、Fは戦略上の主要仮説にフォーカスすること(Focus)、そしてTは成功への確度を高めるために行うテスト(Test)を指す。

【必読ポイント!】 DEFTとは何か

Document
Peshkova/iStock/Thinkstock

DEFTの最初のステップは、アイデアを書き下ろすことだ。自分がこれからしようと思っていることを書き下ろす。ばかばかしいと思うかもしれないが、驚いたことに、実に多くのイノベーターがこのステップをおろそかにしている。

アイデアを書き下ろす際に気をつけるべきことは、イノベーションによって解決しようとしている問題点と、問題を解決することによって達成されるべき目標(売上、利益など)が明確になっていなければならない。市場/顧客が求めているものがはっきりと見えているか、その需要にこたえる方法が明確になっているか、その方法は価値を創り出すものであるか、という3つの要件を満たしていなければ、成功するイノベーションにはなり得ない。

次の点にも注意しながら、アイデアを書き下ろしていこう。

① アイデアとビジネスを区別すること。「もし~だったら」というアイデアは、イノベーションの発端になるとはいえ、それだけではなにも確約されない。その事業でイノベーションを起こし、それを収入に結びつけ、利益やキャッシュフローを生むためには生産、流通、アフターサービスなどの企業運営上の問題も解決されていなければならない。

② 初めか終わりかの一方だけに注力しないこと。イノベーターは企業が最初の1ドルをどのようにして稼ぐかをはっきりとイメージする(誰が顧客になってくれるのか、顧客は何に対して支払いをしてくれるか、どのようにして製品・サービスを手に入れるのか)と同時に、もし自分たちが成功したならば3~5年後に自分たちの周りがどう変わっているという最終的なゴールについてはっきりしたイメージを持っていなければならない。

③ 一部の関係者の視点だけで物事を見ないこと。

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要約公開日 2015.03.26
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