エグゼクティブはなぜ稽古をするのか
エグゼクティブはなぜ稽古をするのか
エグゼクティブはなぜ稽古をするのか
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2024年12月27日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「稽古」という言葉からどんなイメージを抱くだろうか。茶道や華道、武道、舞踊、工芸――こうした稽古を続けている人に対し、要約者は憧れの念を抱いていた。いざ師匠をつけて稽古をするというと、「敷居が高そう」「続けるのが難しいのではないか」という気持ちがあった。

ところが、非常に多忙なエグゼクティブたちの中でも、稽古に打ち込む人は多いのだという。そこまで人々を魅了する稽古とは何なのか。

実は稽古にはこんな効能がある。たとえば、リフレッシュできる、心身が整ってパフォーマンスを発揮しやすくなる、立場を超えて本質的な人脈が育まれる、といったことだ。

著者は、師、知性、道具立て、美意識、健康、コミュニケーション、仕事、精神性という8つの観点から、稽古の本質をひもといていく。「美意識」のような文化・歴史の観点や、「知性」のような認知科学の観点、「仕事」への応用の観点など、切り口が実に多彩である。それぞれを行き来することで見識が広がっていくだろう。

稽古は、AIが持っていない「身体」と「感性」を活かして、高度な知性を発展させる方法である。しかも、海外で注目される日本文化の豊かな伝統や「暗黙知」が凝縮されている。本書を読むと、稽古によって培われる力は、まさに現代のビジネスパーソンに求められる力だと思わずにいられない。稽古の奥深さにふれる中で、人間的な成熟への指針が心に刻まれていくのではないだろうか。

ライター画像
松尾美里

著者

梅澤さやか(うめざわ さやか)
ブランド・プロデューサー/カルチャーマーケティング・コンサルタント
KAFUN株式会社 代表取締役
慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学卒。19歳から世界的な写真家・荒木経惟の専属モデルを務め、芸術的な環境に身を置く。凸版印刷株式会社マーケティング本部 消費行動研究所を経て独立し、国際広告賞などを受賞。30年近くにわたり、芸術・デザイン・ファッションを通じたブランド戦略に多数関わる。知識とリアルな体験を融合してたどり着いた「カルチャーマーケティング」の手法を用いて、ブランドの背景や特徴を分析。人々のライフスタイルや価値観との関わりを読み解き、ブランドの過去・現在・未来を貫く価値を見出し、最適なポジショニングを導き出す戦略からブランド・プロデュースを行っている。現在はジャパンブランドや伝統文化の海外展開を視野に入れたリブランディングやラーニング企画に力を入れている。

本書の要点

  • 要点
    1
    稽古には、リフレッシュ効果や心身の健康維持、創造力や問題解決力の向上、深いコミュニケーション能力の育成などの効果があるとされている。
  • 要点
    2
    AIが進化する現代において、稽古を通じて「身体」と「感性」を活かした高度な知性を発展させることが、エグゼクティブに求められる力である。
  • 要点
    3
    一流の人々が道具を大切にする理由は、道具の微細な変化に敏感になることで、より高度な技が可能になるからだ。

要約

稽古と師

デジタル時代における「師」の意義とは

師との出会いは人生の新たな扉を開くことがある。古今東西で師弟関係が語り継がれてきた。古代ギリシャではプラトンがソクラテスから学び、戦国時代の日本では千利休の弟子「利休七哲」が茶の湯の発展に貢献した。師は新たな可能性を示し、その道を歩む方法を教えてくれる。

しかし、現代では情報へのアクセスが容易になり、師に学ぶ必要はないと考える人も増えている。また、「気軽にやめられない」「ルールが多そうで窮屈」といった理由で師につくことを敬遠する人もいる。

一方で、実際に稽古に通う人々は、師の指導があるからこそ、自分ひとりでは到達できない高みに至れると感じている。

まずは、稽古における師の役割を探り、デジタル時代における師の意義を考察する。

師につくことは、立場を捨てること
minoandriani/gettyimages

技術を身につけるうえで、自己流の学習には限界がある。汎用的な練習方法に頼るよりも、その道の達人について直接指導を受ける方がはるかに効果的だ。なぜなら、経験豊富な指導者は次の3つを心得ているからだ。

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要約公開日 2025.03.20
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