ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから
孫正義の参謀の表紙

孫正義の参謀

ソフトバンク社長室長3000日


本書の要点

  • 2005年に行われた郵政解散総選挙での落選を契機に、3期9年を務めた衆議院議員からソフトバンクの社長室長に転じた著者の視点から、孫正義氏とソフトバンクの激動の日々が綴られている。

  • ボーダフォン日本法人の買収後、一時は利用者の3分の1が離れてしまうかもしれない危機的状況を迎えたが、ソフトバンクはホワイトプランの投入や積極的なCM展開を経て、純増数No.1を実現していった。

  • ソフトバンクは、光ファイバーを中心とした超高速ブロードバンドを全国民に行きわたらせる「光の道」構想を支援していくも、NTTの抵抗や内閣改造を経て、実現が非常に厳しい状況となってしまった。

1 / 2

序章

ソフトバンク社長室長、8年3000日

Vepar5/iStock/Thinkstock

2014年5月7日、ソフトバンクの決算説明会で、売上高は6兆7000億円、営業利益は1兆円を超えたと発表した。営業利益が1兆円を超えた会社は、日本経済史上においてNTT、トヨタ自動車、そしてソフトバンクの3社だけである。もちろんソフトバンクが設立後最短、最速での達成だ。

2005年9月11日の郵政解散総選挙で、民主党に所属していた著者は衆議院議員の議席を失った。その4日後に孫社長を訪ね、政界から転じビジネスのトップランナーをめざしたい旨を伝え、ソフトバンク社長室長への転進が決まった。

著者が入社した頃のソフトバンクは、営業利益が前年の254億円の赤字から623億円の黒字に転じたところだった。社長室長として著者は、ソフトバンクを「やんちゃなベンチャー企業」から「ちょっと大人のソフトバンク」に進化させるとともに、営業利益「1兆円クラブ」企業に至る道を支えてきた。

2 / 2

【必読ポイント!】携帯事業への参入と「光の道」構想

ケータイ三分の計

Fuse/Thinkstock

2006年3月17日、東京・汐留のコンラッドホテルにて、ボーダフォン日本法人をソフトバンクが買収、という記者会見を行われた。2010年代を見据え、モバイルインターネット時代の覇者となるために、ソフトバンクには携帯電話事業が必要だった。

2兆円近い資金が必要になるボーダフォン日本法人の買収は、思い切った意思決定である。ソフトバンクの社外役員に、ファーストリテイリングの柳井会長がいる。孫社長は飛躍を志向する一方で、柳井氏は「冷静で合理的な判断」を重視し、役員会でも牽制役として、孫社長と激しく討議することもあるという。そんな柳井氏が、ボーダフォン日本法人買収に関しては、「ボーダフォンを買えなかったときのリスクを考えるべきだ。これぐらいの値段で買っておいたほうがいい」と孫社長の尻をたたいたのだった。ここが勝負どころと見たのであろう。

情報通信産業界は正に『三国志』と言える状況にあった。強大な力を持つ順に、魏はNTT、呉はKDDI、豊富な人材と活力がある蜀はソフトバンクだろう。蜀の軍師となる諸葛孔明が蜀の皇帝になる劉備に提言した『天下三分の計』を参考にすれば、組むべき相手は呉の国、つまりはKDDIであり、共同でNTTに対抗していくという構想である。参考に2005年時点のシェアは、NTTドコモ53%、KDDI26%、ボーダフォン16%という状況。NTTとの差は歴然としていた。

買収のスキームはLBO、つまり買収先の資産を担保に負債を調達する形式だった。財務上のリスクが急激に高まったと見なされ、買収発表後にソフトバンクの株価は6割も暴落することになる。過去にもソフトバンクはヤフーへの投資を実行した際、ブロードバンド事業に投資した際にそれぞれ株が暴落し、その後実績を出すことで株式市場の評価を変えていった。孫社長は4年周期のオリンピックのようなもの、と会議で明るく話していたという。

4つのコミットメント

ボーダフォン日本法人買収後に生き残るための条件はシンプルで、「今いるお客様を維持する」ことに尽きた。2006年10月24日に導入が迫っていた「番号ポータビリティ(MNP)制度」、つまり携帯電話の加入者が別の事業者に切り替える際に電話番号を引き継げるという制度の導入後、利用者がどのような動きをするかが勝負を分ける。事前の予想では3位のボーダフォンの顧客が奪われると言われ、3分の1のお客様が他の事業者に乗り換えてしまうという調査結果もあった。

孫社長はこうした厳しい予想の中で、ボーダフォン社長に就任した。

もっと見る
この続きを見るには...
残り1899/3389文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2015.04.03
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

ザ・ファーストマイル
ザ・ファーストマイル
川又政治(訳)スコット・D・アンソニー山田竜也(監修)津田真吾(監修)津嶋辰郎(監修)
世界の一流だけが知っている 成功するための8つの法則
世界の一流だけが知っている 成功するための8つの法則
中西真雄美(訳)リチャード・セント・ジョン
大前研一ビジネスジャーナル No.2
大前研一ビジネスジャーナル No.2
大前研一(監修)good.book編集部(編)
弁護士ドットコム
弁護士ドットコム
上阪徹元榮太一郎
大前研一 日本の論点 2015~16
大前研一 日本の論点 2015~16
大前研一
仕事。
仕事。
川村元気
すべては1979年から始まった
すべては1979年から始まった
北川知子(訳)クリスチャン・カリル
大統領のリーダーシップ
大統領のリーダーシップ
ジョセフ・S.ナイ藤井清美(訳)

同じカテゴリーの要約

できるリーダーが意思決定の前に考えること
できるリーダーが意思決定の前に考えること
内田和成
頭のいい上司は死んでも答えを教えない。
頭のいい上司は死んでも答えを教えない。
白潟敏朗
アメーバ経営 新装版
アメーバ経営 新装版
稲盛和夫
Z世代の頭の中
Z世代の頭の中
牛窪恵
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
越川慎司
完訳 7つの習慣
完訳 7つの習慣
スティーブン・R・コヴィーフランクリンコヴィージャパン(訳)
「人事のプロ」はこう動く
「人事のプロ」はこう動く
吉田洋介
無料
1分で話せ
1分で話せ
伊藤羊一
「仕事ができるやつ」になる最短の道
「仕事ができるやつ」になる最短の道
安達裕哉
部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也