HARD THINGS

答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
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おすすめポイント

この本は圧倒的だ。著者のベン・ホロウィッツの語る経験談は衝撃的な困難のオンパレードで、ベンチャー企業や新規事業に関わる全ての人にとって、読んでいると胃が締め付けられるような心持ちがすることだろう。人ごととして気楽に読むことができないのは、著者が直面した問題の数々は規模の大小の違いはあれ、多くのベンチャー企業が遭遇することになる、現実そのものだからだ。

著者が直面した問題は例えば次のようなものだ。上手くいかないベンチャー企業で従業員として働くことの苦労、家族との関係のきしみ、巨大企業からの攻勢、ベンチャーキャピタルからの助言に従った末の失敗、資金枯渇へのカウントダウン、業績の大幅下方修正、従業員のレイオフ、大型顧客の倒産など。ベンチャー企業を経営するとはなんと過酷な試練なのだろうか。ただ、これらは決して失敗談ではなく、最終的に上手くいった起業家の話である。ベンチャー企業経営は、9割はつらいことで占めるという説もある。それだけ、問題が溢れているものなのだ。

本書にはベン・ホロウィッツの起業家としての回顧録、ベンチャー企業に携わるものに向けた助言、シリコンバレーで最も勢いのあるベンチャーキャピタルとも言えるアンドリーセン・ホロウィッツの創業ストーリーが掲載されている。そのどれも素晴らしく、内容の深いものばかりだが、要約では圧倒的な存在感を誇る、ベン・ホロウィッツの起業家としての経験部分にフォーカスしてまとめている。『HARD THINGS』は、読者の行動に影響を与えることが間違いない、衝撃の本だと言えるだろう。

ライター画像
大賀康史

著者

ベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)
シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者兼ゼネラルパートナー。次世代の最先端テクノロジー企業を生み出す起業家に投資している。投資先には、エア・ビー・アンド・ビー、ギットハブ、フェイスブック、ピンタレスト、ツイッターなどがある。それ以前はネットスケープなどを経て、オプスウェア(元ラウドクラウド)の共同創業者兼CEOとして、2007年に同社を16億ドル超でヒューレット・パッカードに売却した。ホロウィッツは、コンピュータサイエンス専攻の学生、ソフトウェアエンジニア、共同創業者、CEO、投資家という経歴から得た体験と洞察をブログに書き、1000万人近い人々に読まれている。サンフランシスコのベイエリアに、妻のフェリシアと共に暮らしている。

本書の要点

  • 要点
    1
    本当に難しいことは、マネジメントの自己啓発書に書かれていることではない。それは、目標を達成できないときに社員をレイオフすることや、優秀な社員が不当な要求をしたときに対処することのような現実的な問題への対応だ。そのような問題には決まった対処法が存在しないから厄介だ。
  • 要点
    2
    ベン・ホロウィッツが直面した問題の数々は、ベンチャー起業家やベンチャーキャピタリスト、新規事業担当者であれば、経験したことがあるだろうものばかりである。本書はそのような難しい舵取りが求められる際にこそ改めて目を通すべき、金言集でもある。

要約

はじめに

本当に難しいのは何か

マネジメントに関する自己啓発書を読んでも、本当に難しいことは書かれていないことが多い。

本当に難しいのは、大胆な目標を設定することではなく、目標を達成できないときに社員をレイオフすることだ。優秀な社員を採用することではなく、優秀な社員が不当な要求をしたときに対処することだ。そのような問題には決まった対処法が存在しない。ただ、困難な経験から得られる教訓はある。本書は著者が直面した困難を中心に展開する。ゼロから何かを作り上げようとして、苦闘する人々こそ、本書からインスピレーションを得られるに違いない。

スタートアップで働くということ

シリコンバレーで働き詰め
Bplanet/iStock/Thinkstock

著者は大学でコンピュータ科学を専攻していた頃、シリコン・グラフィックス(SGI)という会社でインターンをしていた。『ターミネーター2』の特殊効果に使われるソフトウェアや、フライトシミュレーター等、様々なクールな製品を作っている会社だった。

そして大学院を卒業後、著者はSGIで働くことになった。夢が実現した心持ちだった。1年後、SGIの元マーケティング部長でスタートアップ(ベンチャー企業)を経営するロゼリーから熱烈な誘いがあり、彼女の会社、ネットラボで働き始めた。

しかしネットラボは創業者ではなく、ベンチャーキャピタリストによって送り込まれた経営陣で運営され、彼らの製品やテクノロジーへの理解不足から、右往左往していた。ネットラボで働き詰めの中で、著者の2人目の子供、マリアが自閉症と診断され、家族への負担は増していた。

エアコンも買えないような生活をしている最中、著者の父が訪ねてきた。40度の暑さの中、3人の子供は泣き続けていた。父は離婚こそが最も高くつくものだと忠告する。著者はこのままでは家族を失いかねないと感じ、一番大切なことである家族を重視することにした。翌日に、ネットラボを辞め、ロータス・ディベロップメントでの職を見つけ、家庭生活を取り戻していった。

天才マーク・アンドリーセンの面接を経てネットスケープに入社

ロータスで働いている時、同僚から「モザイク」というインターネット閲覧ソフトを紹介された。それまでインターネットは大学や研究所だけで使われていたが、「モザイク」のグラフィカルなインターフェースは未来のインターネットを形にしたようなものだった。そして、シリコン・グラフィックスの創業者であるジム・クラークと、モザイクの開発者のマーク・アンドリーセンがネットスケープというスタートアップを創業するという記事を読み、著者は応募することを決めた。

ネットスケープでは、エンタープライズ・ウェブサーバーの開発事業を任された。ネットスケープは設立後1年4カ月で株式上場を果たす。マイクロソフトの上場でも設立後10年以上かかったことからも、ネットスケープの早期の上場は世界に大きな衝撃を与えることになる。

しかし、ネットスケープはマイクロソフトの反撃を受けた。マイクロソフトはパーソナル・コンピュータ市場の95パーセントを握る強みを活かして、ウィンドウズ95にブラウザを無料でバンドルしてきたのだ。

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要約公開日 2015.04.20
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