アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略

未読
アリババ  中国eコマース覇者の世界戦略
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アリババ  中国eコマース覇者の世界戦略
出版社
新潮社
出版日
2015年10月15日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

アリババというと、2014年9月に行われた空前の規模のIPOについて、印象に強く残っている方は多いのではないだろうか。アリババは上場により25兆円にも及ぶ時価総額となり、大株主であるソフトバンクの含み益が8兆円に達したことも話題となった。ただ、インターネット業界への特別な感度を持っている人を除き、アリババのビジネスの内容や創業者のジャック・マーについて詳しく知っている人は多くないかもしれない。

アリババは様々な事業を展開するコングロマリットであるが、単純化すれば事業の柱は3本存在する。1つ目は、何百万もの中小の製造業者や商社からなる卸売りマーケットプレイスである、アリババチャイナとアリババインターナショナルだ。2つ目は、中国最大のマーケットプレイスであるタオバオと、大手ブランドや小売り業者と消費者をつなぐティーモールといった消費者向けビジネスだ。3つ目は、決済を中心とした金融サービスを提供するアリペイ等のサポートサービスである。

このような壮大な企業が、一介の英語教師であった起業家、ジャック・マーにより導かれていることも興味深い。ジャック・マーは電子メールやインターネット利用以外のパソコンの機能を使いこなせないほど、テクノロジーに詳しくないというから驚きである。

本書の著者は、アリババグループに同社初のアメリカ人社員として入社し、副社長まで務めた人物であることも注目である。謎に満ち、多くの人の興味を惹きつけて止まないアリババを詳しく知りたいならば、本書を一読することが最も効果的だろう。シリコンバレーに負けないチャイナドリームが鮮やかに描かれており、心躍る時間になるに違いない。

ライター画像
大賀康史

著者

ポーター・エリスマン PORTER ERISMAN
2000年から2008年まで、アリババグループに同社初のアメリカ人社員として勤務。副社長を務め、国際サイトの運営や国際マーケティングを指揮した。アリババを退社後、アリババと創業者ジャック・マーの成功の軌跡を追ったドキュメンタリー映画『揚子江の鰐』を制作。新興市場の電子商取引に詳しく、アフリカ、アジア、南米の電子商取引企業のコンサルティングを手がけている。上海在住。

黒輪篤嗣(くろわ・あつし)
翻訳家。上智大学文学部哲学科卒業。おもな訳書に『ハイパーインフレの悪夢』(新潮社)、『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』(日本経済新聞出版社)、『サイクル・サイエンス』(河出書房新社)、『デザインイノベーション』(翔泳社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    アリババは、1999年に一介の英語教師であった起業家、ジャック・マーにより創業された。創立当初から世界最大規模のインターネット企業になることをめざす、野心的な企業だった。
  • 要点
    2
    創業間もない頃、カリフォルニア州へのオフィスの展開を図り失敗。大規模なリストラを行うという苦難の時代があった。
  • 要点
    3
    中国市場におけるイーベイとの熾烈な競争の末、イーベイは中国市場から撤退した。これは、インターネット界の巨人を打ち破る快挙となった。

要約

大跳躍

ジェフ・ベゾスとジャック・マー
©iStock/ lucielang

2006年11月7日、サンフランシスコで開催されたウェブ2.0サミットにおいて、ジャック・マー(アリババの創業者)は壇上に登った。会場にはしゃがみ込みながら、ジャックの言葉を書き留める人がいた。なんとそれは、アマゾンの創業者かつCEOのジェフ・ベゾスだった。電子商取引の父とも言えるジェフ・ベゾスがアリババから学ぼうというのだ。

ジャックがジェフに会いたいと強く願っていたこともあり、講演後に両者は話をした。ジェフはジャックに、素晴らしい講演だった、是非シアトルに遊びに来てほしいと言った。その7カ月後、ジェフが話題に出した中国展開の方法は、ジャックの講演の内容が反映されたものとなっていた。

アリババの始動

絶好の場所に、絶好のときにいた、絶好の人物

ジャックは1964年9月19日に生まれた。ちょうど毛沢東の文化大革命が始まる2年前のことだ。幼少時は政治の混乱の最中で、知識人、芸術家、資本家が虐げられた時代だったため、父親が弾き語りの民族芸能の芸人だったジャック一家は、共産主義者から目の敵にされた。

そんな現実を忘れるために、ジャックは武侠小説を読み、強大な敵を打ち倒すストーリーに思いを馳せていた。身長が低いジャックは、父親から、「それから、こいつ(ジャック)はごみ捨て場から拾ってきました」というように紹介されるような扱いも受けたが、それもジャックの胆力を鍛える要因だったのだろう。また、西湖の近くに外国人がいることを聞いたことをきっかけに、自転車で出かけ英語の練習をすることを日課とした。そのことはジャックの英語力と国際感覚を高めることに繋がった。大学卒業後、ジャックは大学で英語教師として働くようになった。

ジャックは杭州師範学院の恩師から5年間は英語教師を続けてほしいと言われていたため、その約束を果たした上で、翻訳の会社を立ち上げた。その後、シアトルの友人を訪ねた際に、インターネットと出会い、世界中の情報が掲載されているのに、中国の情報が一切見つからない現実に直面し、この分野に身を投じようと心に決めた。

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要約公開日 2015.12.08
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