ゲーム・チェンジャーの競争戦略

ルール、相手、土俵を変える
未読
ゲーム・チェンジャーの競争戦略
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ルール、相手、土俵を変える
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ゲーム・チェンジャーの競争戦略
ジャンル
出版社
日本経済新聞出版社

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出版日
2015年01月23日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

インターネットやスマホの普及は、既存の業界の競争ルールを全く変えてしまうプレーヤーの出現を促している。新たな競争相手は、既存の企業が主力事業として収益の中核を占めていたサービスを無料で提供してしまい、儲けの仕組みがその外にあるようなケースもある。そのような競争相手の出現は、既存企業の存立そのものを脅かすため、近年は安定していると言い切れる業界は、ほとんど見当たらなくなっているのではないだろうか。

本書では、今までの競争ルールを一変させてしまうプレーヤーを「ゲーム・チェンジャー」と呼び、彼らがどのような戦略を取る傾向があるかについての構造的な分析が紹介されている。さらに、ゲーム・チェンジャーが現れた際に、どのように対処していくべきなのかも提言されている。

起業や新規事業を手掛ける側も大変だが、一旦その新規参入を許すと、既存企業側の対応は困難を極めることが本書から伝わってくる。どの対応策も、定石と言えるようなものではなく、自社の強みを最大限に活かしながら綿密に組み立てた対抗策を加えていく必要があるのだ。つまり、新規参入側の困難と同等以上のチャレンジが既存企業にも求められることになり、長く業界に居座る企業としてその変化が行えるのかどうかが命運を分けてしまう。

本書はその難しい反撃を行う、あるいは新規参入に備える企業経営者にとって最も価値のある書籍だろう。また、競争ルールを変えてしまおうという大胆なプランで起業したい人にとっても、参考になる部分は多い。どちらも難しい取り組みだからこそ、本書のような良書を参考にして、自信を持って果敢に挑むべきだ。

ライター画像
大賀康史

著者

内田 和成(うちだ・かずなり)
早稲田大学ビジネススクール教授。東京大学工学部卒。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表を務める。さまざまな業界の大手企業を中心に戦略の策定・実行を支援するプロジェクトを数多く手がけ、2006年には「世界で最も有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。
2006年より現職。ビジネススクールで競争戦略やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行う。また、三井倉庫社外取締役、キューピー社外監査役なども務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    競争の土俵・相手・ルールが変わるような、プレーヤーを「ゲーム・チェンジャー」と呼ぶ。ゲーム・チェンジャーは次の4つの類型に分類される。秩序破壊型/市場創造型/ビジネス創造型/プロセス改革型
  • 要点
    2
    手強いゲーム・チェンジャーによる参入を許してしまった場合、自社の強みを活かして戦う場をずらすか、主力事業を別の市場に求める方策が現実的な対処法だ。

要約

新たなゲームのはじまり

ゲーム・チェンジャーの4類型
RomoloTavani/iStock/Thinkstock

消費者にとって、新しいビジネスやサービスは歓迎すべきものだ。一方で、既存事業を抱える企業には、新たな競争相手の出現という脅威になるものである。相手との距離感がわかっている業界内での戦いではなく、異業種からも競争を仕掛けられることは近年の大きなリスクとなってきている。

このように競争の土俵・相手・ルールが変わるようなプレーヤーを本書では「ゲーム・チェンジャー」と呼んでいる。ゲーム・チェンジャーにはどのようなタイプが存在するだろうか。製品・サービスと、儲けの仕組みのそれぞれが既存のプレーヤーと異なるかどうかによって、4つの類型に分類される。

・秩序破壊型

既存の製品やサービスでありながら、新しい儲けの仕組みで提供する、既存事業者にとって最も手強いプレーヤー。

・市場創造型

新しい製品やサービスを提供し、儲けの仕組みは変わらない、既存市場を侵食しないプレーヤー。新市場が既存市場を置き換える場合、既存プレーヤーにとって問題が生じる。

・ビジネス創造型

新しい製品やサービスを、新しい儲けの仕組みで提供するプレーヤー。

・プロセス改革型

既存の製品やサービスを提供し、既存の儲けの仕組みを踏襲しつつも、バリューチェーンに変革を加えてくるプレーヤー。

【必読ポイント!】ゲーム・チェンジャーの戦い方

秩序破壊型
violet-blue/iStock/Thinkstock

秩序破壊型には無料チャットアプリの「LINE」が挙げられるだろう。「スタンプ」というユニークな絵文字を利用する、使いやすいチャット機能が支持され、利用者数は2014年4月現在で4億人とも言われている。

そのLINEには利用者同士が無料で通話できる「無料通話機能」が提供されているところが、音声通話への課金で収益を挙げていたNTTドコモやauといった携帯電話会社に対して脅威をもたらしている。LINEは音声通話で儲けるのではなく、チャットで使うスタンプなどのアイテムや、LINEが提供するゲームを有利に進めるためのアイテムに課金をして収入を得ている。音声通話は利用者を拡大する手段と割り切って、アイテム課金という新しい儲けの仕組みを持ち込んでいることで、既存の業界秩序を破壊していると言える。

2014年7月には、NTTドコモなどの携帯電話会社が、一定料金で通話し放題という内容の完全定額制の音声通話サービスを導入する結果となった。LINEの無料通話機能などの脅威が無視できない存在になったことが、導入の要因である。

その他の事例として、既存のゲーム業界を侵食しているスマホゲームの存在がある。今までは「ニンテンドーDS」のようにハードウェアを購入した上で、そのプラットフォーム上で遊べるゲームを購入しなければならなかったが、スマホゲームの多くはインストールするだけで無料で遊べ、ゲームを有利に進めるためのアイテムに課金する形式を取っている。そのため、スマホの利用者が増えるにつれ、多数のゲーム初心者が利用する流れとなっている。

市場創造型

ユーチューブやフェイスブックでよく目にする、サーフィンやスノーボードの臨場感あふれる動画は、「GoPro(ゴープロ)」で撮影されていることが多い。

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要約公開日 2015.04.22
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