リスクを取らないリスク

未 読
リスクを取らないリスク
ジャンル
著者
堀古英司
出版社
クロスメディア・パブリッシング 出版社ページへ
定価
1,450円 (税抜)
出版日
2014年09月21日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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リスクを取らないリスク
リスクを取らないリスク
著者
堀古英司
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定価
1,450円 (税抜)
出版日
2014年09月21日
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4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
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レビュー

本書は、金融機関の運用部門に長きにわたり所属し、現在はニューヨークで投資顧問会社を経営する著者が、日本の読者に対し「リスクを取らないリスク」について様々な視点から記した注目の一冊である。「お金に弱い日本」を何とかしたいという想いからニューヨーク勤務を希望、その後現在に至るまでニューヨークに拠点を置く著者だからこそ分かる、外から見える日本の現状とこれからの日本の展望、そして日本人一人一人が意識すべきリスク概念の変革に寄せる強い思いが、本書から伝わってくる。

本書では、例えば円安や格差問題といった、日本経済ひいては日本に住む国民が今後直面するだろう様々なリスクを、具体例を基に詳しく解説している。また最後の3章では、個々人がリスクを取るための心構えや「リスクを取らないリスク」対策を分かりやすく説明しており、全体的に読み応えのある一冊に仕上がっている。

日本経済の現状及び将来に関し論じている本は数多くあるが、リスクを取らない日本の姿勢に対しメスを入れている本は珍しいのではないか。本書によると、元来人間はリスク回避の傾向があるそうだが、特に日本人は伝統的に安定志向でありリスクを取るリスクばかり注視するのだという。本書では日本独自の保守的な考え方が現在の日本経済の停滞要因の一つと捉え、「リスクを取らない」リスクも同時に検討していく必要があると説いている。画期的かつ非常に的を射た本書の視点を、是非多くの人に理解してもらいたいと思う。

著者

堀古 英司(ほりこ・ひでじ)
ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)為替資金部ドル・円ディーラー、部長代理、同ニューヨーク支店バイス・プレジデントを歴任した後、ニューヨークにてファンドマネージャーとしてヘッジファンドの運用に携わる。関西学院大学経済学部卒。ニューヨーク大学大学院(ビジネススクール)にて金融を専攻、経営学修士(MBA)。2006年、アメリカで最も優れたアジア系ビジネスマン50人の1人として、アジア・アメリカ・ビジネス賞受賞。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、テレビやラジオに多数出演。日本シニアアメリカンフットボール協会に加盟するチーム″LEGENDERS″に所属する現役アメフト選手。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間はリスク回避の性質を有すること、リスクを取るには相応のリターンが必要なこと、リスクとリターンのバランスは需要と供給により変化する、というリスクに関する3つのルールを意識したい。
  • 要点
    2
    日本はリスクを取らないリスクという概念に乏しく、その結果、アメリカの景気後退の波を受けてしまった。リスクを取るリスクだけでなくリスクを取らないリスクも考慮し判断すべきだ。
  • 要点
    3
    現時点で将来考えられるリスクを想定し、起こるべきリスクへの対応策を考えておいた上で、必要な対象については積極的にリスクを取ることが大切だ。

要約

【必読ポイント!】 リスクに関する3つのルール

リスクにはルールがある!
AnsonLu/iStock/Thinkstock

リスクとは「損失を被る、又は不利な状況に陥る可能性」を意味する。出来るだけ不利な状況に陥りたくはないが、転職や投資など、時にリスクを取る決断が必要なときもあるだろう。不利な状況を回避するには、リスクに関する三つのルールを理解しておくことが重要だ。一つ目は、人間は本来リスク回避本能を有していること、二つ目は人間にリスクを取らせようとすればそれなりのリターンが必要だということ、三つ目はリスクとリターンのバランスは需要と供給により変化することだ。

投資とギャンブルは似ていると思われがちだが、両者は別物だ。ギャンブルは投資に見合ったリターンが用意されておらず、むしろコストを支払うようになっているからだ。但し、バブル期のように、投資も「投機」になってしまうケースもあり、その際は判断が必要だ。

また、リターンの大きさは、先に述べたルールの三つ目のように、需要と供給により変化する。リスクを取る人が少なければ少ないときほど、リスクを取る人は有利になるのだ。

リスクの担い手がいないとどうなるか ――アメリカ金融危機の例――
juliannafunk/iStock/Thinkstock

2008年9月、金融史上に残る大惨事ともいえる「リーマン・ショック」が起こる。しかしそれ以上にインパクトが大きかったのは、リーマン・ショックと前後して起こった世界最大の保険会社AIGの破綻懸念だ。AIGは損害保険や自動車保険のみでなく、金融に対する保険も取り扱っており、世界最大の保険会社だった。AIGが破綻すれば、取引を行っている世界の金融機関は総倒れの様相をも呈し、更なる悪循環に陥っただろう。

自分の代わりにリスクを負ってくれている保険会社が危なくなれば、そのリスクを自分が負わなければならなくなる。すると人々は貯蓄に走り、進んでリスクを取る人はいなくなり、経済は一気に冷え込む。

このときに必要とされていたのは「リスクの担い手」なのだ。資本主義の自己責任の原則からすれば、そもそもの発端である住宅バブルを起こした張本人の金融機関が、いざ危機に陥って政府に救済の手を求めるのはおかしい。しかし、アメリカ政府は、金融破綻が住宅バブルの関係ない市民にまで及び、世界経済に大きな影響を与えることを勘案して、大手金融機関に公的資金を注入することを決めた。同時に、金融危機が終了するまで、自己責任のルールは適用しないということにした。

そもそもこのような金融危機が生じたのは、住宅市場の状況が先に挙げた三つ目のルール「リスクとリターンのバランスは需要と供給で決まる」から逸脱したためだ。住宅バブルに興じて人々がリターンばかりを追求し、いざバブルが崩壊した時にはリスクを取る人が誰もいなかったのだ。

これほど大きな出来事でなくとも、経営や消費など、身の回りには様々な経済活動があり、そこには常にリスクとリターンが存在する。リスクの担い手がいないと経済活動が成り立たない、ということは常に意識していきたい。

「リスクを取らないリスク」の例 ――日本の金融政策――

日本に足りない「リスクを取らないリスク」という考え方
Vlad Kochelaevskiy/iStock/Thinkstock

アメリカと日本では中央銀行の目的に大きな違いがあり、この違いが、長期に円高・ドル安をもたらすことになった要因といえる、と著者は分析する。アメリカでは、中央銀行の目的として「雇用最大化」、「物価安定」、「適切な長期金利」の3つが定められている。

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