レジリエンスとは何か

何があっても折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる
未読
レジリエンスとは何か
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レジリエンスとは何か
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2015年03月13日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

「レジリエンス」という言葉を聞いたことはあるだろうか?

英語では「復元力」「弾力性」「再起性」などと訳される単語で、もともとは物理用語のひとつだった。

時が経ち、レジリエンスは「外的な衝撃にもぽきっと折れてしまわず、しなやかに立ち直る強さ」という概念を持つようになり、まずは生態系と心理学の分野で発展し、教育、子育て、防災、地域づくり、温暖化対策などさまざまな分野で使われるようになった。レジリエンスという言葉の新しい使われ方が広まってきたのはそれほど昔のことではない。

著者は、レジリエンスを「何かあってもしなやかに立ち直れる力」と定義し、レジリエンス先進国の世界各国の取り組みとまだ途上にある日本とを比較しながら、「レジリエンスがある姿」と「ない姿」を対比している。今日、激化する気候変動の影響、いつ起きてもおかしくない大地震や金融危機、いじめ問題、エネルギー危機、我々はさまざまな危機に直面している。何か起こった時に切り抜けるためには、しなやかに強く立ち直れる力が重要だ。本書には我々がすぐに取り組める事例も数多く掲載されている。

我々一人一人、それぞれの家庭、それぞれの企業や組織、それぞれの地域や社会がレジリエンスとは何かを理解し、身につけ、レジリエンスを強化するために具体的な行動を起こすことが必要だ。

ライター画像
山下あすみ

著者

枝廣 淳子
幸せ経済社会研究所所長、東京都市大学環境学部教授、(有)イーズ代表、(有)チェンジ・エージェント会長、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ代表。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。
『不都合な真実』の翻訳をはじめ、環境問題に関する講演、執筆、翻訳、テレビ出演ほか、企業の変革に向けてのコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
2011年からは本当の幸せを経済と社会との関わりで学び、考える研究所を主宰。GDPだけでは計れない地域の幸せを高めていく考え方の枠組みや経済・社会のあり方について研究を進めるとともに、社会のさまざまな立場の人が対話と共創で問題解決を進められるよう、合意形成に向けての場づくりやファシリテーターを数多く務める。
主な著訳書に『システム思考』『もっと使いこなす!「システム思考」教本』(東洋経済新報社)、『アル・ゴア 未来を語る-世界を動かす6つの要因』(KADOKAWA)、『「定常経済」は可能だ!』(岩波ブックレット)、『世界はシステムで動く』(英治出版)ほか多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    レジリエンスとは「外的な衝撃を受けても、折れることなくしなやかに立ち直れる力」のことである。
  • 要点
    2
    人々が生きてく上で必要な「心」のレジリエンスを高めるためには、自己肯定感と自尊感情を持つことが最重要である。これらを持てるかどうかは、幼少時の環境が大きく関係している。日本では自己肯定感の低い学生が多いが、家庭や教育機関でも子どもに自尊心を持たせるアプローチが大事である。
  • 要点
    3
    いつどんな災害や危機と直面するかは分からないが、日頃から準備やさまざまな側面における対策を行い、しなやかに生き抜いていく術を学ぶべきだ。

要約

レジリエンスとは何か

何かあってもしなやかに立ち直れる力
Maksim Koval/iStock/Thinkstock

レジリエンスとは「外的な衝撃に耐え、それ自身の機能や構造を失わない力」、「何かあってもしなやかに立ち直れる力」のことを指す。

2011年3月11日の東日本大震災では、物流や生産が完全に麻痺してしまった。工場は効率重視のジャスト・イン・タイム方式を導入し、在庫の少ない効率的な仕組みになっていたが、この地震のように何かが起こった際、すべてがストップしてしまう構造になってしまっていた。すなわち、レジリエンスを失ってしまっていたのである。

実は、世界ではしばらく前からレジリエンスへの関心が高まり、多くの研究者がこの分野での活動を進めている。異常気象や経済危機などの大きな課題に対して、レジリエンスという概念を国家に応用して考えるようになっているのだ。

こうしたレジリエンスの考え方を理解するべく、本書では国内外のさまざまな取り組みを紹介している。

【必読ポイント!】 心理学から考えるレジリエンス

折れない心を作る

トラウマ体験、ストレスになる出来事、またはネガティブな何かが起こった時、全員がPTSDを起こすわけではないし、その深刻度や回復過程も人によってさまざまだ。逆境にもかかわらず、上手に適応して精神的健康を損なうことなく立ち直り逞しく生きている人もいれば、心が折れてしまう人もいる。心理学の分野でレジリエンスが研究されるようになったのは、「障碍や逆境にも関わらず、問題を起こさない人や、そうした状況をばねにしてさらに成長している人もいるのはなぜなのか」という研究が40年ほど前から始まったことに起因する。

研究を重ねるうちにレジリエンスは、安定した家庭環境や学校環境、親子関係などの「環境要因」と、自律性や自己制御、共感性、問題解決能力、ソーシャルスキルなどの「個人内要因」の両方が重要で、それらが相互に作用しながらその人のレジリエンスを作り出していることが分かった。自己肯定・自己受容が高い人ほど、そして苦痛経験が多いほど、レジリエンス力が高い傾向がある。

また、レジリエンスを高めるためには、「コミットメント(困難な状況になったとしても、逃げずに真正面から状況に向き合おうとする姿勢)」、「コントロール(あきらめずに自分で何とかできると信じ、その状況に影響を与え続けようとすること)」、「チャレンジ(ストレス状況下にも成長の道を見出そうと努力し続けること)」という3つの姿勢、そして問題解決に向けた対処法や、他者と互いに助け合い励まし合う技術が必要だ。

レジリエンスを高め折れない子どもを学校で育む
GeertjanTillmans/iStock/Thinkstock

子どもたちや青少年に何か辛いことがあった時、しなやかに立ち直り、その辛い経験を糧に成長できることは、本人にとっても社会にとっても幸せなことである。心理学においてレジリエンスをつくり出す要素やレジリエンスを高めるために何が必要かが分かってきたことから、教育の分野でその知見を活かし、子どもたちや青少年の健全な発達につなげようという動きがいくつかの国で進められている。

「レジリエンス教育先進国」の一つとして例に挙げられるのがオーストラリアだ。

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要約公開日 2015.05.08
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