世界中でお菓子は愛されている。著者は言葉も習慣も違う彼ら彼女らが食べているのはどんなお菓子なのかと、現地のお菓子を買い求めては、いつもこう思うのである。「日本のお菓子の方がおいしくないか?」と。
世界中で日本のお菓子は販売されており、たとえば香港の庶民派スーパー、ウエルカムでは、「じゃがビー」「ポッキー」「コアラのマーチ」「カラムーチョ」「カール」「ベビースターラーメン」「ハイチュウ」「たべっ子どうぶつ」などが陳列されている。が、しかし、その売場の大きさは日本のインスタントラーメンの規模には到底かなわない。即席麺の棚は日本の「出前一丁」にほとんどの場所を占められているのだ。
日本のお菓子にもそれくらい売れるポテンシャルはあるだろう。おいしく、安全性も高く、パッケージの細部の工夫まで施されている日本のお菓子が国内市場だけにとどまっているのはあまりにももったいない。まだまだ有望な市場が広がっている世界に出ていかない手はない。
笑顔をもたらすお菓子は、「平和な日本」を象徴している。そしてまた、お菓子業界で働く人々が醸し出す空気の「ほのぼの感」も高い。人を幸福な気分にするお菓子を扱っている業界の人は、知らずと周囲を和ませるハッピーな空気を漂わせているのだろう。
しかし、そんなお菓子業界が変わろうとしている。大手お菓子会社のカルビー本社は、庶民的な場所から都内のど真ん中へと移り、オーナー経営の会社から外資系の経営手法を取り入れた企業へと変貌した。創業家の松尾一族は、異業種からのスカウト組や転職者を招き入れ、実権を握らせた。さまざまな企業で社長、最高顧問を歴任してきたという松本会長は「ビジネスで大事なことは、世のため人のためと、儲けること」と明言しており、「儲けること」を全面的に肯定し、コスト管理のテコ入れを行い、無駄を徹底的に排除した。そしてカルビーの営業利益は見違えるほど改善した。
「サプライチェーン」を制している企業に戦いを挑むことは難しい。カルビーの主力商品と言えばポテトチップスだが、世界のジャガイモの流通はアメリカの巨大食品会社フリトレーのポテトチップス「レイズ」が握っている。フリトレーのジャガイモの調達量は尋常ではなく、そこにカルビーが食い込むことはほぼ不可能だ。となると、安定供給のためのサプライチェーンが確立できないため、勝ち目はない。
海外でビジネスとして勝つためには、先行企業がつくれないもので活路を見いだすのが王道である。アメリカ進出の際、カルビーが見いだした活路は「豆」であった。えんどう豆のスナック「ハーベストスナップス」を発売したところ、豆=健康のイメージで健康志向の強い白人富裕層の心をつかみ、大好評となった。
海外ではおいしくて安いだけでは売れない。必要なのは「戦略」である。カルビーは商品を変えただけでなく、「ハーベストスナップス」の陳列場所をスナック菓子売り場ではなく生鮮食品の横の棚という異例の場所にした。また、販売チャネルも発売当初はオーガニック食品などを販売する高級スーパーに絞った。こうした戦略が成功につながった。
そして、もう一つ大切なことは他の企業が模倣できない技術力を持つことである。それを実現できた商品は、メジャーリーガーに愛され球団から依頼を受けスポンサー契約までできた唯一無二の食感の「ハイチュウ」だ。
キャラメルでもなく、ガムでもない。キャンディーは競合も多い分野だが、「ハイチュウ」の食感はどこにも出せない。
誰かに真似され市場に埋もれることのない技術が海外進出には不可欠なのである。
チョコレートの本場といえるのは、フランスやベルギーだろう。しかし、
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