宇宙の「一番星」を探して

宇宙最初の星はいつどのように誕生したのか
未読
宇宙の「一番星」を探して
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宇宙最初の星はいつどのように誕生したのか
未読
宇宙の「一番星」を探して
出版社
出版日
2011年11月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

子供のころ、太陽が沈みゆく薄暗い空に目を凝らし、最初に輝く星を探すゲームをしたことはないだろうか。「目的は1つだ。『一番星、見ぃつけた!』この一言を、他の誰よりも先にいいたいからだ。」そう語る著者は、銀河、巨大ブラックホール、暗黒物質、宇宙の大規模構造などの研究を通して、誕生間もない銀河の発見などに貢献した宇宙物理学者だ。そんな著者の野望は、夕刻の空に最初に輝く一番星を見つけることではない。137億年という歴史をもつ宇宙の中で最初に誕生した星を見つけることだ。これは、まさに現代天文学が抱えている重要な命題のひとつである。「一番星」という言葉の持つロマンを、誰よりも強く感じる著者が描く、宇宙の一番星探索物語である本書からは、著者の宇宙へのあふれる愛を感じることができる。途中に差し込まれる、星や銀河のフルカラーの写真はじつに美しく、思わず見とれてしまう。

「現在の理論予想では、宇宙の一番星ができたのは宇宙年齢が1億年から数億年の頃だと推定されている」そうだ。つまり、一番星を探すには、少なくとも130億光年以上彼方の宇宙の出来事をひも解くことになるという。本書では、地球、太陽系、天の川銀河、銀河群……と徐々に規模を拡大させながら宇宙について語られていく。「宇宙は壮大だ」。一読後にはこの言葉の真意に触れることになるだろう。

著者

谷口義明(たにぐち・よしあき)
愛媛大学宇宙進化研究センター・所長、教授。東北大学にて理学博士号取得。日本学術振興会一般研究員、同特別研究員、東京大学東京天文台助手、東京大学理学部天文学研究センター助手、東北大学大学院理学研究科助教授、愛媛大学大学院理工学研究科教授を経て、2007年より現職。専門は宇宙物理学で銀河、巨大ブラックホール、暗黒物質、宇宙の大規模構造などの研究を行っている。誕生まもない銀河の発見、暗黒物質の3次元地図作製など、研究論文数は約300編。『宇宙の進化の謎』(単著、講談社ブルーバックス、2011年)、『4%の宇宙―宇宙の96%を支配する“見えない物質”と“見えないエネルギー”の正体に迫る』(翻訳、ソフトバンククリエイティブ、2011年)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    137億年の宇宙の歴史の中で、最初の星がどのようにして、いつ生まれたのかという疑問は、現代天文学の重要な命題のひとつだ。
  • 要点
    2
    星は、数光年から数十光年もの規模の巨大な冷たいガスの雲の中で、熱核融合によって生まれる。
  • 要点
    3
    ガス雲の中の1つの星の誕生は、1つの銀河の誕生でもある。
  • 要点
    4
    ある天体が遠ければ遠いほど、光が届くまで時間がかかるので、その天体の若い姿を観測していることになる。最初の星を探すためには、できるだけ遠くの銀河の姿を観測することが必要になる。

要約

壮大な一番星探しゲームの幕開け

最初の星が生まれた瞬間を求めて
m-gucci/iStock/Thinkstock

夜空を見上げると、目に飛び込んでくる数えきれないほどの星。この地球上から肉眼で見ることができる星の数は約3000個もあると言われている。大きく明るく輝く星もあれば、小さくかすかに瞬く星もある。

星によって明るさが違うのはなぜだろう。星の明るさは、見かけの明るさであり、星本来の明るさを表している。遠くにある星は暗く見え、近くにあれば明るく見えるのだ。

また、星の色もさまざまだ。その色は星の表面の温度に対応している。温度が高ければ青く見え、低ければ赤く見えるのだ。

すべての星がこのように自身のエネルギーで輝いているわけではないことも述べておこう。たとえば、夕方や明け方の空にひときわ明るく輝く宵の明星や明けの明星は金星のことだが、金星自身が輝いているわけではなく、太陽光を反射しているのだ。明るく見えるのは、普通の星に比べて圧倒的に地球の近くにあるからだ。

子供のころ、本書のタイトルにもある「一番星」探しゲームをしながら帰り道を歩いた読者もいるのではないだろうか。天文学者である著者がおこなっている一番星探しゲームはもっと壮大だ。それは『宇宙の一番星』を探すこと。この宇宙で誕生した最初の星を探すことだ。現在、宇宙の年齢は137億歳だと言われている。宇宙が誕生したその瞬間は、もちろん星や惑星といった天体など、なにもなかった。しかし、最初の星が生まれた瞬間が必ずあるはずなのだ。いつ、どこで生まれたのか。本書は、この宇宙の一番星を求め、今も探求の旅を続ける著者の物語だ。

星の誕生と、天の川銀河

星はガス雲の中から生まれる
100lec/iStock/Thinkstock

星はどのようにして生まれるのか。それには星の正体を知る必要があるだろう。もっとも身近な星、太陽のことを考えてみよう。じつは、太陽はガスの塊にすぎない。太陽の成分は、質量にして70%が水素、28%がヘリウムだ。つまり、星をつくるには大量のガスの雲があればよいことになる。

星をつくるためにはまず、数光年から数十光年(1光年は光〔秒速30万キロメートル〕が1年間に進む距離のことを指し、9.46兆キロメートルに相当する)もある巨大な、冷たい分子ガス雲が必要だ。この分子雲には、ところどころに分子の密度が高いところが存在する。そこには、周りに比べて重力が強くかかるために、周りのガスを巻き込み、より質量が増えていく。質量の増加にともない、分子ガス雲は回転をしながら円盤をつくり、収縮していく。すると、中心部はさらに収縮し、温度と圧力が上がりやがて「熱核融合」が発生する。そして、そのときのエネルギーによって輝き始める。これが星の誕生だ。このように、太陽や、そして地球などの惑星もまた、はじめは分子ガス雲の中で生まれたのだ。

私たちは天の川銀河の片田舎に住んでいる
Yuriy_Kulik/iStock/Thinkstock

夜空に浮かぶ星、ひとつひとつにそれぞれの誕生ドラマがある。その星々が集まってひとつの流れる川のように夏空に見えるのが、天の川だ。

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要約公開日 2015.01.20
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