日系自動車メーカーの中国戦略

未 読
日系自動車メーカーの中国戦略
ジャンル
著者
柯隆
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,200円 (税抜)
出版日
2015年03月31日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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日系自動車メーカーの中国戦略
日系自動車メーカーの中国戦略
著者
柯隆
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東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,200円 (税抜)
出版日
2015年03月31日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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レビュー

日系自動車メーカーの中国展開や、中国地場の自動車メーカーの動向について、多くの人は頻繁にメディアで目にしていることだろう。欧米・韓国のメーカーが売上・シェアを順調に伸ばしている中で、日本メーカーは大きなプレゼンスを得られないでいるように感じられる。政治の問題もあろうが、他に要因はないのだろうか。本書はそのような疑問に対して、マクロな視点から各企業の戦略というミクロな視点まで包括的に語られた、十分に整理された一冊だと言えるだろう。

中国地場の自動車メーカーは、漢字が読みにくいこともあり、なかなか頭に入ってこないかもしれない。ボルボが中国企業に買収されたことは知っていても、それが具体的に何という企業だったか、思い出せない方も多いのではないだろうか。注目する新興自動車メーカーの歴史や戦略の骨子が詳しく語られていることは、そのような曖昧な理解を補完するものとして有用だろう。

『日系自動車メーカーの中国戦略』というタイトルからは、自動車メーカーに勤める人に向けて書かれた本だと思うかもしれない。もちろん自動車メーカーに勤める人にとっては有用な情報が満載であるが、本書はクルマ好きや、新興国開拓を担う人に向けても、興味深い内容となっている。中国の高級車市場の大きさや、人材獲得競争の熾烈さなど、想像を超える内容も多く含まれている。是非、多くのビジネスパーソンに読んでいただきたい一冊だ。

大賀康史

著者

柯 隆(カ リュウ)
静岡県立大学グローバル地域センター特任教授 (株)富士通総研主席研究員
中国出身。1994年、名古屋大学修士(経済学)。中国経済・金融を専門とする日本の代表的エコノミスト。日本、中国、アメリカ等国内外で執筆・講演活動を行うほか、財務省外国為替審議会委員、財務省中国研究会委員等を歴任。著書に、『中国の不良債権問題』、『暴走する中国経済』ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    VWの技術で自動車工業の基礎を固め、次に外資メーカー間の競争を促進して、自動車産業を伸ばすという中国の戦略は成功したと言える。
  • 要点
    2
    過去に日本の自動車産業は、欧米の技術を模倣し、世界最強の自動車工業を確立した。中国企業はまさに同じ方向へ急ピッチで進んでいると言える。
  • 要点
    3
    中国の自動車メーカーで成功する企業には、リバース・エンジニアリングの活用、ローエンドをターゲットにすることによる市場の棲み分け、外部人材の積極的な採用という共通点が存在している。
  • 要点
    4
    中国の自動車産業は、既に供給過剰になっており、大気汚染も日増しに深刻化している。今までのような急激な販売台数の増加から、もうじき転機を迎えることになるだろう。

要約

【必読ポイント!】中国の風土と自動車産業の特質

自動車企業の分散と多企業の存続

1960年代の中ソ対立の激化に伴い、ソ連からの攻撃を受けることを恐れ、中国では重要産業を分散立地させた。そのため、自動車工業をはじめ、工業の地方分散が進んでいる。主に工業を担う企業を国境と海岸線に近いところから、内陸山間部に移転させることを政策の中心に据えた。

当時の自動車生産の中心は、軍事品であるトラックであり、全国の大都市で行われた。小型の組み立てメーカーが設立され、各メーカーは基幹部品を外注して組み立てる方式をとった。

VW依存から競争促進へ
RonFullHD/iStock/Thinkstock

85年、中国政府はフォルクスワーゲン(VW)に懇願し、国有企業である上海汽車との合弁会社である上海VWを設立、Santanaの生産を開始した。Santanaは、高関税率で輸入品との競争から守られるなどの優遇措置を受け、順調に販売が進んだ。80年代後半からの高度成長期で、幹線道路が舗装されていき、将来の自動車需要を見込んで世界の有力自動車メーカーは中国進出を目論んだ。しかし、中国政府はVWに国産部品を使用させることの対価として、VW以外の海外自動車メーカーの進出を許さなかった。そして、部品の国産化率を85%に上げていった。

その後、中国政府はVWが独占的な地位になることを恐れ、80年代終わりから90年代にかけて、GM、ホンダ、プジョー・シトロエン、フォード等に中国企業との合弁会社の設立を許可していく。合弁会社設立の際は、中国側が51%以上の株式を所有することを条件とすることで、経営権は外資に手放さず、生産技術を吸収していくことを目指していた。

部品産業の未成熟を理由に、進出に及び腰だったトヨタも2002年に一汽と全面提携して、広範囲な車種の中国生産を開始する。VWの技術で自動車工業の基礎を固め、次に外資間の競争を促進して、自動車産業を伸ばすという中国の戦略は成功したと言える。

中国進出への期待

中国政府は外資との間の合弁企業が成長すると、優遇措置を廃止していった。現在は大気汚染の防止が喫緊の課題となっており、電気自動車、ハイブリッド車などの技術を中国に移転することを望んでいる。VW、GM、現代自動車はその要請に応じ、日本の自動車メーカーも追随していった。

各社は、中国市場の更なる成長という機会、中国政府に好印象を与えるという意向、の2つを勘案し、中国政府の要望に応じているようである。中国政府は、自国の需要の大きさを武器に、外資に技術移転を強要し、中国の自動車産業を世界のトップに押し上げていくことを志向している。

過去に日本の自動車産業は、欧米の技術を模倣し、技術の吸収後は国産製品を保護し、世界最強の自動車工業を確立していった。中国企業はまさに同じ方向へ急ピッチで進んでいると言えるのである。

中国自動車市場における外資系自動車メーカーの戦略

VWの戦略
Olga Serdyuk/iStock/Thinkstock

VWは他外資メーカーより10年以上も早く中国市場に進出し、確固たるブランド・イメージを築いてきた。中国の消費者は、VWは中国の自動車産業を立ち上げてくれたという特別な思いをいだいているように見受けられる。

VWは中国の2大自動車メーカーである上海汽車と第一汽車の2社と合弁事業を展開している。多数ある展開車種のうち、SantanaとJettaは合計で年間30万台も販売されており、突出した販売実績を持っている。

VWは中国市場拡大に伴う需要増に、生産能力を向上させることで、積極的に対応している。上海VWは2016年に、長沙(湖南省)に同国では9番目となる乗用車工場を建設する方針だ。2018年までに生産能力を現在の250万台から400万台に拡大させていくのだという。

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