日本郵政

JAPAN POST
未読
日本郵政
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日本郵政
出版社
東洋経済新報社
定価
1,760円(税込)
出版日
2015年02月27日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

イギリスのロイヤルメールをはじめ、ベルギー、ポルトガルなど、ここ数年、郵便会社の株式上場が国際的な潮流になっている。日本でも2014年12月、日本郵政の西室泰三社長は持株会社である日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命の三社を同時に上場する計画を正式に発表した。2015年秋、政府が保有する日本郵政の株式が市場に売り出され、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融二社の株式についても同時に売り出し、上場することを目指している。親会社と子会社が同時に上場することは異例のことで、国外からも注目を集めている。

日本郵政グループは、従業員数、売上高、ネットワークのどれをとっても国内トップクラスの事業規模を誇る。中でも最たる強みは、全国に張り巡らせた約2万4000局のネットワークだ。主な諸外国の郵便局数と比べてみても、一番多いアメリカで3万5369ヵ所、国土面積がほぼ日本と同規模のドイツで1万3000ヵ所と、日本の約1/2の数だ。この統計からも日本の郵便局ネットワークがいかに強固なものかがうかがえる。

本書では、この巨大ネットワークを拠点に事業を展開する日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、それぞれの運営の仕組みや近年の動向を紹介するとともに、強みや抱える悩み、将来性などを考察し、その実力を探っている。上場を目の前に控えた日本郵政のこれまでとこれからを知ることができる一冊だ。

著者

井手秀樹(いで ひでき)
慶応義塾大学商学部教授。1949年福岡県生まれ。神戸大学大学院経済学研究科修了後、三菱総合研究所等を経て、1996年に慶応義塾大学商学部教授に就任。ビジネスブレイクスルー大学客員教授を兼任。2012年原子力発電環境整備機構(NUMO)理事。2013年より公益事業学会会長。日本経済政策学会常務理事、郵政行政審議会委員などを歴任。
現在、情報通信審議会など多数の審議会の委員を務める。1999年郵政大臣賞を授賞。
主な著書に、『規制と競争のネットワーク産業』(勁草書房、2004年)、『次世代のエコカー「天然ガス自動車」——ポスト・フクシマの選択』(エネルギーフォーラム、2013年)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本郵政の最大の強みは、全国に張り巡らされた郵便局ネットワークである。郵便局ネットワークの徹底活用こそが株式上場のキーポイントであり、成長戦略のカギである。
  • 要点
    2
    この巨大ネットワークを支えているのが、経常利益の6割を占めるゆうちょ銀行だ。郵便局ネットワークとゆうちょ銀行が一体的に営業を行うことが日本郵政の経営を左右する。
  • 要点
    3
    日本郵政は国内トップクラスの事業規模だが、近年はゆうちょ銀行の貯金残高、かんぽ生命の保有契約件数が減少している。より多様なライフスタイルに応じた商品・サービスを提供する総合サービス企業への変貌が求められている。

要約

はじめに

事業規模は日本トップクラス
joel-t/iStock/Thinkstock

日本郵政株式会社の下には、郵便事業と郵便局を運営する日本郵便株式会社、貯金を扱う株式会社ゆうちょ銀行、保険を扱う株式会社かんぽ生命保険という三つの主要子会社がある。あまり知られていないが、その事業規模は国内でもトップクラスだ。たとえば従業員数でみると、トヨタの33万人、日立製作所の32万人、パナソニックの27万人に次いで、NTTと日本郵政グループは約22万人と圧倒的に多い。売上高では2014年3月時点で、トヨタに次いで第二位の約15兆円(連結)。経常利益は、トヨタ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャル・グループ、NTTに次いで第五位で、約1兆1000億円(連結)。持株会社も合わせたグループ全体(2014年3月期連結決算)では、純利益が4790億円に上る。また、所有不動産簿価も全国有数の規模を誇る。

2007年の郵政民営化後、さまざまな試みが施されてきたが、株式を上場するということになると、さらなる事業の発展や収益基盤の強化が求められるだろう。

郵便、郵便局事業

全国に張り巡らされた巨大なネットワーク
Torsten Lorenz/iStock/Thinkstock

郵便局は全国津々浦々、1741すべての市町村に存在しており(2014年4月5日現在。東京都の特別区を含む)、その数は2万4511(2014年3月末現在)局と、全国の銀行の店舗数よりも多い。コンビニ最大手のセブン―イレブン・ジャパンの営業拠点と比較すると、東京都と茨城、栃木など関東6県ではセブン―イレブンの店舗数が上回っているが、それ以外の地方では圧倒的に郵便局の方が多い。民間の金融機関であれば、採算に合わないことを理由に店舗を閉鎖したり、あえて進出しない地域にも郵便局は設置されており、その地域の人々の暮らしを支える役割を担っている。

郵便局は大きく分けて、日本郵便が直接運営する郵便局(直営郵便局)と、地域の人々に郵便局の運営を委託している簡易郵便局の二種類がある。また、直営郵便局のなかでも、窓口業務だけではなく、郵便局の外に出て顧客へ保険商品の営業活動を行ったり、郵便物などを届けたりする社員がいる比較的大規模な郵便局と、窓口業務のみを行う中小規模の郵便局がある。後者が圧倒的に大多数を占めていて、その内の半数近くに及び、特に地方に立地する郵便局は2、3名程度の社員で運営されていることが多い。他方、簡易郵便局は、過疎地等を中心に立地しているが、直営郵便局の手の届かない地域にも郵便局のサービスを提供するために、必要不可欠な存在となっている。

このように全国あまねくサービスを提供できるよう、地域のニーズや顧客の利便性を考慮して戦略的に店舗が配置されている。この先、地方では郵便局ネットワークは確実にライフラインとして重要性を増していくだろう。

総合サービス企業へ

郵便局では、さまざまな商品・サービスを提供している。郵便物・ゆうパックの引き受けや、郵便切手・はがきの販売といった郵便のサービス、あるいは、貯金・預金、送金・決済サービスの取り扱い、国債や投資信託の販売といった貯金の商品・サービス、また生命保険の募集や保険金の支払いといった保険の商品・サービスなど、私たちが生活をしていくうえで必要不可欠なものばかりだ。

しかし、近年引受郵便物の数やゆうちょ銀行の貯金残高、かんぽ生命の保有契約件数は減少傾向にある。今後は、より顧客一人ひとりの多様なライフスタイルやライフステージに応じたさまざまな商品・サービスを提供する、「総合サービス企業」を目指す必要がある。アメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)との業務提携はその一歩であり、規制の足かせのない新規事業を相次いで打ち出し、郵便局ネットワークの活用を本格化させようとしている。

国内最大の営業拠点網を武器に、郵便・貯金・保険のユニバーサル・サービスを維持しながら、「攻め」に転じられるかどうかが民営化の成否を握ることとなるだろう。

【必読ポイント!】 ゆうちょ銀行

グループの中核企業
Keith Brofsky/Photodisc/Thinkstock

郵便貯金はもともと国の事業として1875年に創設されたのが始まりで、140年という長い歴史がある。この長い年月で培われたブランド力は、ゆうちょ銀行の強みといえるだろう。

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