国富論

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国富論
ジャンル
著者
アダム・スミス 水田洋(監訳) 杉山忠平(訳)
出版社
岩波書店
定価
1,166円
出版日
2000年05月16日
評点(5点満点)
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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レビュー

経済学の父、アダム・スミスが18世紀後半に著した『国富論』。原題“An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations”を直訳すると「諸国民の富の性質と原因の研究」となる。資本主義社会を初めて体系的にとらえた、古典派経済学を代表する大著である。その思想は、「比較生産費説」を説いたデヴィッド・リカードや、マルクス主義を打ちたてたカール・マルクスなどにも影響を及ぼした。

アダム・スミスというと、「個々人が自分の利益を追求すると、『みえない手』によって調整され、市場はうまく機能する。だから、政府による市場の規制を撤廃して競争を促すべきだ」という自由放任政策にばかりスポットライトがあたる。しかし、彼が説いたのは、あくまで市場内部の不合理な規制の撤廃である。『国富論』の土台となるのは、労働生産性を高めることで、国民の生活が豊かになるという考えだ。

この文脈に沿って『国富論』をひもとくことは、私たちの生活から切り離せない「経済学」を正しく理解するための必須事項だといえるだろう。全四巻にわたる本書に挑戦するのは勇気がいるかもしれないが、スミスが18世紀当時の平均的な教育を受けた人々に向けて書いたというだけあって、論旨は明快であり、意外に読み進めやすい。本書に著されている普遍的な理論を知ることは、付け焼刃の知識を得るよりも、はるかに深い経済学の学びを可能にするということを実感できるはずだ。

松尾 美里

著者

アダム・スミス
(1723~1790)
イギリスの経済学者・哲学者。スコットランド生まれ。
10年を費やして執筆された『国富論』により、後年「経済学の父」と呼ばれる。『国富論』は、経済学を初めて体系化した大著であり、近代経済学、マルクス経済学の源流となった。ほかに、『道徳感情論』がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    労働の生産性が向上したのは分業が進んだためであり、この結果、社会の最低階層の民衆までもが、多くの品物を所有し交換できるようになり、普遍的に豊かになっていく。
  • 要点
    2
    市場価格は、当該商品の供給量と、その商品の自然価格を支払おうという人々の需要(=有効需要)との関係によって決まる。すべての商品の価格は、自然価格に落ち着く方向へ向かっている。
  • 要点
    3
    個人が自分の安全と利益だけを追求した結果、「みえない手」に導かれて、意図せずとも公共の利益を最大化する、つまり一国の富を増大させるという目的を推進することになる。

要約

労働の生産力の改良と、労働の生産物の配分について

分業の効果
Photokanok/iStock/Thinkstock

スミスは、生活必需品や便益品を国民がどの程度享受できるかを豊かさの指標としている。生活必需品や便益品は、国民の労働によって生産されたもの、その生産物と引き換えに輸入されたものである。

まず本書においてスミスは、豊かさの原資となっている国民の労働の生産力について考察する。

労働の生産性が著しく向上したのは、社会における仕事全体で分業が進んだからといえるだろう。分業の恩恵を受けている製造業の一つ、「ピン製造」を例にとろう。ピンを作る工程は多数の部門に分割され、針金を引き伸ばす作業からピンを白く磨く作業まで、それぞれが独自の仕事になっている。すべての工程を一人でやろうとしては、一日に二十本のピンを作ることさえできないだろう。一つの完成品を生産するのに必要な労働が分割されることで、手仕事の労働の生産性は高められるのだ。

ただし、作業の性質上、農業においては分業体制を築くのは難しい。よって、農業においては、富国の労働のほうが貧しい国の労働よりも生産的だとは言いきれない。

分業によって生産性が上がるのは次の三つの理由による。一つ目の理由は、各人の仕事を特定の単純な作業にして、ある職人に専念させることで、その職人の腕前を上げられるからだ。二つ目の理由は、仕事の移動にかかる時間を節約できるからだ。仕事場を移動する時間だけでなく、新しい仕事に着手して気乗りするまでの時間は、想像以上に長い。三つ目の理由は、分割された仕事に対応する多種多様な機械が発明され、労働を容易にかつ迅速に行えるようになるからである。

分業で生産力が向上した結果、生産物が社会の最低階層の民衆にまでゆきわたり、社会全体が豊かになっていく。

商品の自然価格と市場価格について
Stockbyte/Stockbyte/Thinkstock

労働によって生産されたものは、貨幣を媒介して人々に配分されていく。生産物の交換価値を規制する原理を明らかにすべく、スミスが考察するうちの一つ、現実の価格(自然価格)と市場価格がときに一致しない原因について述べた部分を、ここでは紹介しよう。

自然価格というのは、ある商品を生産し、市場に流通させるのに必要とされる、平均的な地代と、賃金と、利潤を合計したものである。自然価格で売られている場合、その商品はまさにその値打ち通りに売られているといえる。

一方、市場価格とは、ある商品が市場で実際に売買される価格のことである。市場価格は、商品の供給量と、その商品の自然価格を支払おうという人々の需要(=有効需要)との関係によって決まる。

ある商品の供給量が有効需要を下まわるときは、「もっとお金を支払ってでもその商品がほしい」という人が現れ、価格は自然価格を超える。反対に、その供給量が有効需要を超える場合は、全体の価格は引き下げられる。価格が上がれば利害関心が動いて人々はもっと商品を用意しようとし、下がれば逆のことが起こるため、ある商品の市場供給量、および労働の総量は自然に有効需要と一致し、価格は自然価格と一致する方向へ向かう。

しかし、ときには偶然や行政上の規制により、商品の市場価格を自然価格よりもかなり高い状態にとどまることがある。

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国富論
未 読
国富論
ジャンル
政治・経済 リベラルアーツ
著者
アダム・スミス 水田洋(監訳) 杉山忠平(訳)
出版社
岩波書店
定価
1,166円
出版日
2000年05月16日
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