大前研一ビジネスジャーナル No.5
2040年の崩壊 人口減少の衝撃/地域活性化の現状と課題

未 読
大前研一ビジネスジャーナル No.5
ジャンル
著者
大前研一(監修) good.book編集部(編)
出版社
定価
1,500円 (税抜)
出版日
2015年05月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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大前研一ビジネスジャーナル No.5
2040年の崩壊 人口減少の衝撃/地域活性化の現状と課題
著者
大前研一(監修) good.book編集部(編)
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定価
1,500円 (税抜)
出版日
2015年05月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
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レビュー

大前研一氏が経営者向けに講義するために集めた選りすぐりのコンテンツを書籍化した、『大前研一ビジネスジャーナル』の第五弾。今回のテーマは、「人口減少」「地域活性化」の二本立てである。

本書を手に取ると、「時代遅れの戸籍制度から脱却できない日本」、「日本企業は人口ボーナス国を狙い撃て」、「世界のリゾートにあって、日本の観光地に欠けているもの」といった刺激的な見出しが目に入ってくる。大前節とも呼べる軽快なテンポで語られており、読者はその知的な面白さと、視点の鋭さに引き込まれ、読み切ってしまうだろう。

大前氏によると、「人口減少」を食い止めるためには、「出生率改善」「移民受け入れ」という二つの対策が必要になる。本書では、こうした対策が日本でも実効性を発揮できるように、工夫すべき点が紹介されている。

「地域活性化」については、増田レポートによると、2040年までに全国896自治体のうち、半数がコミュニティーを維持できなくなるという驚愕の予測がなされている。また、世論調査では、「地方は活性化すると思うか」という質問に「そう思わない」と答えた人が全体の約4分の3を占めるという。こうした見通しの暗い現状のもと、大前氏は、地域活性化を達成している世界の事例を参考にしようと提言する。

待ったなしの危機を乗り越え、企業や個人が生き抜くための知恵を得るうえで、本書が非常に投資対効果の高い教材であることは間違いない。

松尾 美里

著者

大前 研一(おおまえ・けんいち)
1943年、福岡県若松市(現北九州市若松区)生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー日本社長、本社ディレクター、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長等を歴任。94年退社。96~97年スタンフォード大学客員教授。97年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院公共政策学部教授に就任。 現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。オーストラリアのボンド大学の評議員(Trustee)兼教授。 また、起業家育成の第一人者として、05年4月にビジネス・ブレークスルー大学大学院を設立、学長に就任。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開学、学長に就任。02年9月に中国遼寧省および天津市の経済顧問に、また10年には重慶の経済顧問に就任。04年3月、韓国・梨花大学国際大学院名誉教授に就任。「新・国富論」、「新・大前研一レポート」等の著作で一貫して日本の改革を訴え続ける。『原発再稼働「最後の条件」』(小学館)、「洞察力の原点」(日経BP社)、「日本復興計画」(文藝春秋)、「一生食べていける力」がつく大前家の子育て(PHP研究所)、「稼ぐ力」(小学館)、「日本の論点」(プレジデント社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本では、女性と高齢者を最大限に活用しても、労働力人口の減少スピードが速く、労働力不足をカバーできない。出生率改善と移民受け入れという二つの対策が求められる。出生率改善のためには、予算を割いて手厚い育児支援を行うことと、婚外子差別と少子化を助長する戸籍制度を撤廃することが必要だ。
  • 要点
    2
    各地域が活性化を目指すためには、中央依存から脱却し、観光客をはじめ、人・モノ・金が海外から入ってくる仕組みをつくる必要がある。また、開発においては、構想力と継続的なリーダーシップが重要になる。

要約

【必読ポイント!】 人口減少の課題と解決策

人口減少の現実

日本は今後、一気に人口が減少すると予測されている。2065年頃には65歳以上の人口の割合が、社会保障費を負担する側の割合より多くなり、国が維持できなくなる。人口減少が、国債暴落の引き金になりかねない状況である。債務が増え続けるにもかかわらず、それを返済する人が減っていく以上、国債デフォルト、ハイパーインフレが起きてしまうからだ。

安倍首相は「女性を戦力に」という成長戦略を掲げている。2013年には「高年齢者雇用安定法」の改正により、60歳の定年後も希望者全員を雇用することが企業に求められるようになった。しかし、女性と高齢者を最大限に活用しても、2030年には労働力人口が292万人も不足する。労働力人口の減少スピードが速く、労働力不足をカバーできないのだ。こうした負のシナリオを回避するには、出生率改善と移民受け入れという二つの対策が求められる。

手厚い育児支援の重要性

日本の合計特殊出生率は、「1.41」と先進国の中でも最低レベルである。世界に目を向けると、スウェーデンやフランスは出生率を「2」までリカバリーさせている。例えばフランスでは、子どもを産めば産むほど所得税が大幅に下がり、多額の育児給付金が支払われる。また、「家族関係政府支出の対GDP比」は日本が0.96%であるのに対し、フランスは3.2%、スウェーデンは3.76%である。少子化を解消している国では、予算を割いて、手厚い育児支援を行っているのだ。

「産まない」理由は、時代遅れな戸籍制度
monkey3000/iStock/Thinkstock

欧米では婚外子の出生割合が高まっており、フランスやスウェーデンにおいては、二人に一人が婚外子である。一方、婚外子の割合がたった2.2%である日本では、2013年の民法改正によって婚外子の相続差別はなくなったものの、社会的な差別はまだ残っている。出産前に「籍を入れる」ことが暗黙の了解になっており、戸籍が出産の障壁になっているのだ。

著者は、婚外子差別と少子化を助長する戸籍制度を撤廃すべきだと考えている。住民票がありながら、時代遅れの戸籍を維持するメリットはない。2016年には「マイナンバー」の運用が始まるが、徴税、年金管理という役所側のメリットばかりが重視されている。ユーザー側のメリットが軽視されているうえに、マイナンバーを悪用される場合の手立てが不足している。そこで著者は、国民一人ひとりが生まれた瞬間から個人情報をすべてデータベース化し、国家が一括して管理、保護するという「コモンデータベース法」を提言している。

移民受け入れの道筋
masahironakano/iStock/Thinkstock

日本の移民比率は「1.1%」であり、世界的に見て非常に少ない。出生率上昇が見込めないならば、移民を受け入れるしかない。アメリカでは、世界から年間約100万人の移民が流入しており、持続的成長を支えている。日本も、外国人留学生を育成し、日本の文化を学んでもらって、その後国内で働いてもらうことを検討すべきだ。

日本政府は、人手不足を解消するため、急きょ外国人労働者の活用に動いたが、特区や足りない業種のみに付け焼刃的に対応するのではなく、中長期的に対応するべきである。円滑に移民を受け入れるためには、著者が提示する「3つのステージ」の移民政策が有効となるだろう。

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