インダストリー4.0の表紙

インダストリー4.0

ドイツ第4次産業革命が与えるインパクト


本書の要点

  • インダストリー4.0の背景には、ドイツが強い国際競争力を持っている製造業で経済成長を促進したい、新しい「ものづくりネット革命」の潮流のなかで他国より先を行きたい、という事情がある。

  • インダストリー4.0は、製造現場に「モノとサービスのインターネット(Internet of Things and Services:IoT, IoS)」が導入され、機械同士のコミュニケーションを可能にすることといえる。

  • すると、機械が自律的に製造工程を最適化し、生産性や製品の柔軟性(多品種少量生産など)を飛躍的に高める。製品に搭載されるセンサーが集めるデータは、ビッグデータ市場を生む。

1 / 3

ドイツが国をあげてインダストリー4.0に取り組む理由

ドイツは経済成長をしなければならない

©iStock/RainerPlendl

ドイツが官民一体となってインダストリー4.0を推進する最も大きな理由は、「ドイツが経済成長をしなければならない」からである。

ドイツで経済成長がなぜそれほどまでに望まれているかというと、主に下記のような理由による。

1.東西統一後、「欧州の病人」とまで言われた景気低迷期から、現在の繁栄に至るまで、国民は必死の努力をした。だからこそ二度と苦しい時代には戻りたくない。

2.ドイツ国内では、ドイツ人と同じ賃金や福祉の待遇を受けている移民が多く存在する。景気が悪化すると移民排斥の動きが強まる。

3.ドイツ人の感情にかかわらず、ユーロ経済圏の安定はドイツ経済の強さに大きく頼っている。

また、最近競争力の強まっているアジア新興国や米国の製造業より一歩先をゆかねばならないという危機感も、インダストリー4.0推進の理由のひとつだ。

ドイツが強い国際競争力を持っているのは製造業、なかでも「自動車」、「電機」、「機械」、「化学」の分野であるため、インダストリー4.0を通して得意分野のさらなる発展をめざしたいのである。

ドイツ国内の体制

インダストリー4.0プロジェクトは、ドイツで2012年3月に決定された、「ハイテク戦略2020行動計画」のなかの「未来プロジェクト10」と呼ばれる省庁横断型プロジェクトの1つとして発表された。ドイツは、製造業現場に押し寄せるデジタル化の波を飛躍のチャンスととらえ、積極的に打って出たのだ。2013年に発表された、「戦略的イニシアティブ インダストリー4.0実施のための提言」というレポートには、ボッシュ、シーメンス、サップといったドイツを代表する企業の名前が並び、民間企業との強い連携がうかがえる。情報技術・通信・ニューメディア連盟、ドイツ機械工業連盟、ドイツ電気電子工業連盟による、「インダストリー4.0プラットフォーム」も、2013年に立ち上げられた。また、政府が支援する

もっと見る
この続きを見るには...
残り3454/4293文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2015.12.22
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

コーオウンド・ビジネス
コーオウンド・ビジネス
細川あつし
熱狂宣言
熱狂宣言
小松成美
「地球人財」がグローバル時代を勝ち抜く
「地球人財」がグローバル時代を勝ち抜く
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(編)
最速の仕事術はプログラマーが知っている
最速の仕事術はプログラマーが知っている
清水亮
ユートピア
ユートピア
トマス・モア平井正穂(訳)
ブランド・ジーン 繁盛をもたらす遺伝子
ブランド・ジーン 繁盛をもたらす遺伝子
阪本啓一
アップル、グーグルが神になる日
アップル、グーグルが神になる日
上原昭宏山路達也
最強の未公開企業 ファーウェイ: 冬は必ずやってくる
最強の未公開企業 ファーウェイ: 冬は必ずやってくる
田濤呉春波内村和雄(監訳)

同じカテゴリーの要約

非常識な「ハイブリッド仕事論」
非常識な「ハイブリッド仕事論」
文化放送 浜カフェ(著)入山章栄(編)
本が生まれるいちばん側で
本が生まれるいちばん側で
藤原印刷
AIエージェント革命
AIエージェント革命
シグマクシス
ユニクロ
ユニクロ
杉本貴司
愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと キャラクターは会社を変えられるか?
愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと キャラクターは会社を変えられるか?
ハヤシユタカ
ケーキの切れない非行少年たち
ケーキの切れない非行少年たち
宮口幸治
トヨタの会議は30分
トヨタの会議は30分
山本大平
両利きの経営(増補改訂版)
両利きの経営(増補改訂版)
チャールズ・A・オライリーマイケル・L・タッシュマン入山章栄(監訳・解説)冨山和彦(解説)渡部典子(訳)
キーエンス解剖
キーエンス解剖
西岡杏
シン・ニホン
シン・ニホン
安宅和人