インダストリー4.0

ドイツ第4次産業革命が与えるインパクト
未読
インダストリー4.0
インダストリー4.0
ドイツ第4次産業革命が与えるインパクト
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インダストリー4.0
出版社
日刊工業新聞社

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出版日
2015年07月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

インダストリー4.0とは、ドイツが国家政策として進める、ものづくりのさらなる高度化に向けたプロジェクトのことだ。文字通りの意味としては、第4次産業革命、ということになる。製造業に携わる方々は既によくご存じの言葉かもしれないが、最近新聞やニュースを通して知った方も多いのではないだろうか。

世界の製造業は、「ものづくりネット革命」という新しい潮流に直面している。製造の現場の個々の機械設備がインターネットで接続されることで、全体がシステムとして稼働することが可能になる。そのことで、大幅に生産性がアップしたり、そのためのソフトウェアや、収集したビッグデータなどの新たな巨大市場が生まれたり、というように、まさに革命と呼ぶべき大きな変化が起ころうとしているのだ。

「ものづくりネット革命」を大規模で積極的に推進するのが、ドイツの国家プロジェクト、インダストリー4.0というわけだ。

本書は、インダストリー4.0をよく知らないという方、技術のことはわからないという企業経営者やビジネスパーソンも、この取り組みを理解できるように構成されている。まずは、ドイツが官民一体となってインダストリー4.0に取り組む背景と、具体的な体制が紹介される。そして、インダストリー4.0とは何か、それによって何が実現できるのか、日本はそれをどう受け止めるのか、といったところを、技術面をかみくだいて説明しながら、解説している。この注目すべき取り組みを知るためのはじめの1冊にふさわしい書籍であるといえるだろう。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

岩本晃一
経済産業省地域経済産業グループ産業政策分析官、経済産業研究所コンサルティングフェロー。
1958年香川県生まれ。京都大学卒、京都大学大学院(電子工学)修了後、通商産業省入省。産業技術総合研究所つくばセンター次長、内閣官房総合海洋政策本部事務局内閣参事官などを経て、2012年7月から現職。

本書の要点

  • 要点
    1
    インダストリー4.0の背景には、ドイツが強い国際競争力を持っている製造業で経済成長を促進したい、新しい「ものづくりネット革命」の潮流のなかで他国より先を行きたい、という事情がある。
  • 要点
    2
    インダストリー4.0は、製造現場に「モノとサービスのインターネット(Internet of Things and Services:IoT, IoS)」が導入され、機械同士のコミュニケーションを可能にすることといえる。
  • 要点
    3
    すると、機械が自律的に製造工程を最適化し、生産性や製品の柔軟性(多品種少量生産など)を飛躍的に高める。製品に搭載されるセンサーが集めるデータは、ビッグデータ市場を生む。

要約

ドイツが国をあげてインダストリー4.0に取り組む理由

ドイツは経済成長をしなければならない
©iStock/RainerPlendl

ドイツが官民一体となってインダストリー4.0を推進する最も大きな理由は、「ドイツが経済成長をしなければならない」からである。

ドイツで経済成長がなぜそれほどまでに望まれているかというと、主に下記のような理由による。

1.東西統一後、「欧州の病人」とまで言われた景気低迷期から、現在の繁栄に至るまで、国民は必死の努力をした。だからこそ二度と苦しい時代には戻りたくない。

2.ドイツ国内では、ドイツ人と同じ賃金や福祉の待遇を受けている移民が多く存在する。景気が悪化すると移民排斥の動きが強まる。

3.ドイツ人の感情にかかわらず、ユーロ経済圏の安定はドイツ経済の強さに大きく頼っている。

また、最近競争力の強まっているアジア新興国や米国の製造業より一歩先をゆかねばならないという危機感も、インダストリー4.0推進の理由のひとつだ。

ドイツが強い国際競争力を持っているのは製造業、なかでも「自動車」、「電機」、「機械」、「化学」の分野であるため、インダストリー4.0を通して得意分野のさらなる発展をめざしたいのである。

ドイツ国内の体制

インダストリー4.0プロジェクトは、ドイツで2012年3月に決定された、「ハイテク戦略2020行動計画」のなかの「未来プロジェクト10」と呼ばれる省庁横断型プロジェクトの1つとして発表された。ドイツは、製造業現場に押し寄せるデジタル化の波を飛躍のチャンスととらえ、積極的に打って出たのだ。2013年に発表された、「戦略的イニシアティブ インダストリー4.0実施のための提言」というレポートには、ボッシュ、シーメンス、サップといったドイツを代表する企業の名前が並び、民間企業との強い連携がうかがえる。情報技術・通信・ニューメディア連盟、ドイツ機械工業連盟、ドイツ電気電子工業連盟による、「インダストリー4.0プラットフォーム」も、2013年に立ち上げられた。また、政府が支援する

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要約公開日 2015.12.22
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