コーオウンド・ビジネスの表紙

コーオウンド・ビジネス

従業員が所有する会社


本書の要点

  • コーオウンド・ビジネスとは、社員がその会社の大株主となり、利益極大化に向けて行動することが、会社の利益向上や社員の幸福につながるビジネスモデルである。

  • 成功するコーオウンド会社の共通点は、情報共有とプロフィット・シェア、そしてオーナーシップ・カルチャーである。

  • コーオウンド会社は、非コーオウンド会社に比べて、売上高、収益性、平均従業員増加率、従業員一人あたりの売上高貢献度も高いという調査結果が出ており、最大の優位性は従業員の高いコミットメントにある。

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コーオウンド・ビジネスとは何か

元祖コーオウンド会社

コーオウンド・ビジネス(従業員所有事業)とは、社員が会社の大株主となり、利益極大化に向けて行動することが、会社の利益向上や社員の幸福につながるビジネスモデルである。コーオウンド会社の経営者や社員たちには共通して、「わかちあい」のエトス(気風)が満ちている。元祖コーオウンド会社は、英国の老舗百貨店「ジョン・ルイス」だ。同社の事業目的は「成功したビジネスを通じたパートナー(従業員)たちの最大幸福追求」である。また、年度の利益に応じ、パートナーの年収に対して等率のボーナスが支払われる。会社は、社員の幸福を追求する中で、社員の家族や地域、環境に積極的に貢献するようになる。また社員は、自社で働いていることに誇りを感じ、共に協力し合い、わかち合う「オーナーシップ・カルチャー」を醸成していく。また、「経営の専管性」が同社の憲法に規定されており、経営の意思決定はトップ経営者(会長)の手に委ねられている。一方、パートナーたちは会長の罷免権を持っている。これがコーオウンド会社に一般的に見られるスタイルだ。

コーオウンド化していくプロセス

架空の会社シャインズ株式会社がコーオウンド化していくプロセスを疑似体験してみよう。ある日、オーナー社長は「この会社を社員みんなにあげる」と言い出し、自身の所有する株を社員たちに譲渡していった。オーナーとなった社員たちは、会社の経営情報をこれまでよりも熱心に学ぶようになった。また、好業績により、「パートナーズ・ボーナス」として全員に公平に利益が分配された。すると社員たちは「自分たちの成果次第で手にする配分が増える」と俄然やる気になった。仕事のスタイルにおいても、各社員が最適解を求めて自律的に判断を下すようになってきた。「一緒に稼いで利益をシェアする」という共通認識が、残業で会社の人件費を上げたくないという考えを生み、残業時間の削減につながった。その結果、何の号令がなくとも経費節約のために社員が動き、仲間を助け合う気運が社内に満ちていった。さらには、一生懸命、親切、笑顔、ポジティブといった空気が社内に浸透し、お客様や取引先、自分たちの家族、地域、社会への「貢献」が意識されるようになっていったのだ。

会社のあげ方・もらい方

©iStock.com/Rawpixel Ltd

上記の物語の解説を通じて、コーオウンド・ビジネスの本質や押さえるべきポイント、組織に生まれる気運や気風を汲み取ってほしい。

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要約公開日 2015.12.28
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