茶の本

未 読
茶の本
ジャンル
著者
岡倉覚三 村岡博(訳)
出版社
岩波書店
定価
454円
出版日
1961年06月05日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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茶の本
著者
岡倉覚三 村岡博(訳)
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岩波書店
定価
454円
出版日
1961年06月05日
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3.8
明瞭性
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革新性
4.0
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レビュー

著者の岡倉覚三は、岡倉天心という名でよく知られる美術評論家である。西洋化が進み日本の伝統文化がなおざりにされていた明治時代に、改めて日本の文化を見つめなおそうと奔走した人物だ。岡倉は世界に向けて日本やアジアの伝統文化の価値を広めるために、英語で『THE BOOK OF TEA』を著した。それを日本語に訳したのが本書である。

タイトルからは一見、茶の作法を説いた本のように思われるかもしれないが、その中身は、一杯の茶の中に凝縮された日本特有の美意識や世界観を浮かび上がらせる思想書である。日本人が何を良しとし、何を美しいとしたかの真髄に迫る、密度の濃い1冊だ。本書を読み進めていけば、日本建築や庭園、衣服、絵画に至るまで、あらゆるところに茶道の考え方が影響していることがわかる。日ごろ茶道に馴染みがない人でも、「真の美は『不完全』を心の中に完成する人によってのみ見いだされる」「些事の中にでも偉大を考える」という考え方には、うなずけるところがあるのではないだろうか。

岡倉は、同時期に刊行されていた新渡戸稲造の『武士道』を、「兵士に喜び勇んで身を捨てさせる死の術」として、それに対し茶道は「生の術」であるとした。昔も今も、我々は「世界に通用する日本」をめざしているが、その過程で、自らの価値、日本文化の価値を軽視してしまうことがままあるのでないか。世界に羽ばたくための変化が、単純な「西欧化」になっていないか、と待ったをかける岡倉の言葉は、今の時代を生きる私たちの心にも十分響くものである。

北山 葵

著者

岡倉 覚三(おかくら・かくぞう)
(1862~1913)
美術評論家、思想家。1875年、東京大学入学。在学中にアメリカ人教授アーネスト・フェロノサと出会い、共に美術調査を行う。卒業後は文部省に入省し、東京藝術大学の前身である東京美術学校を設立。日本美術の保護及び日本画家の育成に努めた。
その後頻繁に海外を訪れ、1904年にボストン美術館の顧問に就任。東洋の美術品の収集に励み、日本文化の価値を世界中に広めるべく活動した。著書に『東洋の理想 』『日本の覚醒』『茶の本』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    東洋と西洋はお互い批判しあう関係であったが、西洋における物質主義に限界を感じた者たちが、東洋の茶道の精神に活路を見出した。茶道における「不完全さ」を真摯に見つめることにこそ、東西の相互理解の道がある。
  • 要点
    2
    茶道には、「虚(何もない状態)」の中に完全さを見出す道教の考え方と、日常の小さなものに偉大さを見出す禅の考え方の2つが息づいている。
  • 要点
    3
    千利休をはじめ、一流の茶道家たちの最期は、みな風流なものであった。美と親しみながら生きた者だけが、美しい往生を遂げることができる。

要約

茶碗の中には、人の情が満ちている

茶道には日本の美意識が凝縮されている

茶はもともと薬用として用いられ、その後飲料となった。中国では8世紀に、詩歌と並んで高尚な遊びとして楽しまれたが、15世紀の日本ではさらにその価値は高まり、「茶道」となった。茶道は日常の俗事の中にある美を見出し、「不完全なもの」を崇拝する一種の儀式である。そこからは、純粋と調和、互いに愛し合うことの神聖さ、社会秩序の賛美を学びとることができる。

日本人の住居や習慣、衣食、陶漆器、絵画、そして文学に至るまで、みな茶道の影響を受けている。日本の文化を研究しようとするものは、茶道の影響を無視するわけにはいかない。

茶は東西をつなぐ架け橋となりうる
gresei/iStock/Thinkstock

よその国から見れば、たかだか一杯の茶のことでこれほど騒ぎ立てるのは不思議に思われるかもしれない。しかし、自分が持つ偉大なものの小ささに気づけない者は、他人が持つ小さいものの偉大さにも気づけないものである。普通の西洋人は、かつては日本を野蛮な国だと見なしていた時代もあり、茶の湯を東洋の奇行の一つだとしてあざ笑っているだろう。しかしそろそろ、東西が互いを酷評しあうのをやめて、尊重しあうべきではないか。東洋と西洋はこれまで発展する方向を異にしてきたが、それぞれの長所と短所を補い合うことができるはずである。

幸いなことに、今のところ「茶」においては、東洋と西洋は相互に理解しあうことができているようだ。西洋人は東洋の宗教道徳をあざ笑ったが、紅茶という飲み物についてはあっさりと受け入れた。茶は東洋の精神を色濃く残したまま西洋の文化として根づいている。

また、美を見出すために美を隠し、表現することをはばかりつつほのめかすといったふるまいこそが、茶道の真髄である。これを理解する人が、本当の茶人だといえる。サッカレーやシェイクスピア、文芸が退廃した時代の詩人たちは、物質主義に対する反抗の結果、茶道の精神を受け入れた。茶道における「不完全さ」を真摯に見つめることにこそ、東西の相互理解の道がある。

【必読ポイント!】 道教・禅の思想と茶道

茶道の始まり
DAJ/Thinkstock

茶の文化は中国で興り、煎茶、抹茶(ひきちゃ)、そして淹茶(だしちゃ)へと進化を遂げた。煮る団茶、かき回す粉茶、淹す葉茶はそれぞれ、唐、宋、明の時代精神を示している。茶道を理想の域へと押し上げたのは、8世紀の唐に生まれた詩人の陸羽(りくう)である。

つづいて宋の時代では、仏教徒の間で、

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