ホメロス イリアス

未読
ホメロス イリアス
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未読
ホメロス イリアス
出版社
岩波書店
出版日
1992年09月16日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ヨーロッパ文化の源流は大きく分けて、キリスト教文化とギリシア・ローマ文化の二つと考えられている。その、ギリシア・ローマ文化の端緒となっているのが、ホメロスによる『イリアス』『オデュッセイア』だ。ホメロスは西洋において万人必読の書といっても過言ではない。すなわち、他国文化への深い理解が当然の前提とされるグローバル・エリートを目指すには、やはり避けては通れない書目であるといえるだろう。

『イリアス』は、トロイア伝説を題材としており、トロイア戦争末期の数十日間のできごとが描かれる。トロイア軍(本書ではトロイエ)とギリシア連合軍(本書ではアカイア)、それぞれに肩入れする神々も入り乱れての戦争は、10年間にも及んだとされている。

本書の読みどころは、知略に長けたオデュッセウスや、トロイアの英雄ヘクトルら勇士たちの誇り高き戦いと死である。なかでも、物語の軸となるのは、神の血を引くギリシア随一の戦士、アキレウスだ。アガメムノンと仲たがいし、戦闘参加を拒否したアキレウスは、やがて思わぬ悲劇により戦場へ戻ることになる。『イリアス』はもともと口承で歌い継がれてきたものであるが、古代の人々は涙を流して聴き入ったことだろう。

とっつきにくさ、難しさを感じるという方にぜひお伝えしたいのは、『イリアス』が、三千年の時を越えて今も、さまざまな芸術に影響を与え続けているだけあって、非常な魅力にあふれた物語だということだ。ぜひ楽しんでみてほしい。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

ホメロス
紀元前8世紀ごろのギリシアの吟遊詩人と考えられている。小アジアのイオニア地方に生まれる。ヨーロッパ最古の叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』の作者といわれる。

本書の要点

  • 要点
    1
    『イリアス』は、「イリオス(またはイリオン)の歌」という意味であり、そのボリュームは一万数千行にもなる。『オデュッセイア』と並ぶ、ヨーロッパ最古の大叙事詩。
  • 要点
    2
    アカイア連合軍の総大将アガメムノンは、神の怒りをなだめるために、妾として手に入れた娘をしぶしぶ手放す。だが、腹の虫がおさまらず、勇将アキレウスの愛妾を取り上げる。怒りに燃えるアキレウスは、盟友パトロクロスと屈強の配下とともに戦線を離脱する。
  • 要点
    3
    トロイエ軍は、神ゼウスの導きもあって勢いにのり、アカイアの船陣にまで迫る。見かねたパトロクロスは、アキレウスの代わりに出陣する。

要約

アキレウスの怒り

悪疫
©iStock/sybanto

アカイア軍とトロイエ軍が戦いを始めて10年目にもなる。

戦争のそもそもの発端は、トロイエの王子パリスが、神に操られた運命によって、スパルタ王メネラオスの妃であるヘレネを寝取り、自国に連れ帰ってしまったことだった。メネラオスは、各国の王に呼びかけ、ヘレネ奪還のためにアカイア連合軍を起こした。連合軍総大将は、アカイアの国のなかでも広大なミュケネを統べる、メネラオスの兄、アガメムノン王である。

アカイア軍は、トロイエの海岸に船陣を構えていた。そこへ、アポロンの祭司クリュセスが訪ねてきた。アガメムノン王が、先の戦いで手に入れた妾クリュセイスを手放すよう、懇願しにきたのだ。クリュセイスはクリュセスの娘なのであった。

しかしアガメムノンは願いをはねつけた。クリュセスがアポロンに訴えると、怒りに燃えるアポロンは軍に悪疫をもたらす神の矢を射ちこんだ。そのために、アカイアの兵士たちはばたばたと死んでいった。

プティエの王子、剛勇無双で名高いアキレウスは、集会を開くことを提案し、占い師に状況を尋ねる。すると、占い師は、この悪疫の原因は、クリュセイスをアポロンの祭司に返さなかったため神の怒りにふれたことだという。アガメムノンはしぶしぶクリュセイスを手放すことを承知したが、腹の虫がおさまらず、アキレウスの愛妾ブリセイスを代わりにといって取り上げる。

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要約公開日 2015.12.29
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