ヒラリー・クリントン
―その政策・信条・人脈―

未 読
ヒラリー・クリントン
ジャンル
著者
春原剛
出版社
定価
760円 (税抜)
出版日
2016年08月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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ヒラリー・クリントン
ヒラリー・クリントン
―その政策・信条・人脈―
著者
春原剛
未 読
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定価
760円 (税抜)
出版日
2016年08月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
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レビュー

2016年11月の大統領選挙にて、米国初の女性大統領候補となったヒラリー・クリントン。トランプとの一騎打ちに、世界中が注目を寄せている。2008年に舐めた苦杯を胸に、ヒラリーは何をめざすのか。側近や閣僚候補はどんな人たちなのか。「親中・反日」になるとの憶測は本当なのか。本書では、ヒラリーへの単独インタビューを行った経験を持ち、日米の外交・安保の関係筋にも精通している著者が、ヒラリーの半生を振り返りながら、「ヒラリー政権」の未来図を鮮やかに描き出していく。

ファーストレディの時代には、目立ち過ぎてひんしゅくを買い、夫の不倫問題では「耐える妻」という印象を与えたヒラリーだった。しかしその後、上院議員から国務長官、そして大統領候補へと、波乱万丈ながらも一気にスターダムを駆け上がってきた。彼女が大統領になれば、歴史上、世界で最も権力を持った女性となるといえよう。ところがヒラリーは、こうした華々しいキャリアを積んできた割には、大統領候補としての好感度は、本書が書かれた時点では、さほど高くはない。その理由は何なのか。ヒラリーが大統領になった場合、どんな陣を敷くのか、とりわけアジアではどのような外交政策を展開するのか。そして、日本との関係はどうなるのだろうか。こうした数々の論点に対する、緻密な取材に下支えされた、著者の鋭い分析には舌を巻くことだろう。日本人が知るべき内容を盛り込んだ「決定版」と呼べる本書は、今後の日本の政治、経済を見通すうえでも重要な示唆を与えてくれる一冊だ。

松尾美里

著者

春原 剛(すのはら つよし)
1961(昭和36)年東京都生まれ。上智大学卒業後、日本経済新聞社入社。ワシントン支局勤務などを経て編集局長付編集委員。上智大学グローバル教育センター客員教授、日本経済研究センター・日米プロジェクト(富士山会合)事務総長。著書に『暗闘 尖閣国有化』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    ヒラリー政権は、中間層の復活や「国家資本主義」による不平等の是正といった経済問題への対処を重視している。TPPについては反対を示しているが、当選後には「支持」に転じるという見方が濃厚だ。
  • 要点
    2
    外交政策においては、「アジア旋回」の戦略を主軸に据え、日米同盟などの二国間同盟体制を維持しながらも、同盟国間の横のつながりや、より機動的なネットワークを求めることが予想される。
  • 要点
    3
    ヒラリーは、女性の権利向上をライフワークとしており、今後は「女性」や「女権」における日米協調がいっそう求められるようになる。

要約

ヒラリーの思想、戦略、信条

国内・経済問題を重視するヒラリーの戦略

ヒラリーが正式に大統領選挙の出馬を表明したのは、2015年4月のことだった。「絶対本命」と言われながらもバラク・オバマに苦杯を喫した2008年の選挙。それ以降、彼女は今度こそ「打ち漏らしはしない」という決死の覚悟で臨んでいる。そんなヒラリーの戦略とは、どのようなものなのか。

著者によるインタビューからうかがい知れるのは、国内・経済問題を重視する姿勢である。将来の雇用がどの分野から生まれるのか、そこで活躍できる人材をどう育てるのかといった課題が、選挙の争点の中心になるというのだ。ヒラリーはファーストレディの時代から一貫して、中間層と呼ばれるアメリカ国民に目線を向けてきた。この「中間層の復活」こそ、ヒラリー政権の至上命題になるといえる。

経済政策について、ヒラリーが示唆するもう一つの重要なことは、ロシアや中国などの新興国家に見られる「国家資本主義」に明確な対立の構えを見せている点である。政府の後ろ盾を持つ国営企業のせいで、優れた多国籍企業が不平等な戦いを強いられていると、ヒラリーは強く批判しているのだ。

TPPをめぐる変節の真相
Nelson_A_Ishikawa/iStock/Thinkstock

ヒラリーがTPPに関して意見を翻していることも注目に値する。国務長官時代のヒラリーは、TPPが公平な貿易に道を開くと、賛意を示していた。ところが、2015年春に一転して「まだ決められない」と慎重な姿勢を見せるようになった。民主党内でTPPへの反対・慎重論が増えていることを踏まえた、大きな方針転換であった。アメリカ人の雇用も生み出さず、賃金を上げることにも寄与しない協定は、彼女の基準を満たしていないというのが、不支持の根拠とされた。ヒラリーの態度の豹変ぶりを、米メディアの一部は非難した。

しかし実際には、TPP反対は国内政治、選挙対策を考えてのものであることが今では明白となっている。貿易赤字や失業問題を想起させるTPPに賛成を示していると、民主党の大統領候補を決める予備選で不利になる可能性があった。ヒラリー選挙対策本部の関係筋によると、ヒラリーは選挙戦術の一環としてTPPに反対を表明しているだけにすぎず、当選後には「支持」に転じるという見方が濃厚だ。

【必読ポイント!】 ヒラリー、アジアに旋回す

アジアへの旋回という新たな外交ドクトリン
istocksdaily/iStock/Thinkstock

ここからは、ヒラリーの外交哲学や安全保障政策観を解説していく。ヒラリーはアメリカの外交の司令塔である国務長官時代、外交誌の論文「米国の太平洋の世紀」にてアメリカのアジア・太平洋における方針を示した。その方針とは、中国の軍事的な台頭を睨み、「親中派」が主要だった伝統的な対中政策を離れて、アジアでの「前方展開外交(Forward Deployed Diplomacy)」に舵を切るというものだ。この論文の随所に、日米同盟重視、対中警戒の構えが見られた。中でも着目すべき点は「旋回点(Pivot Point)」という表現である。ここには、テロとの戦いを皮切りに欧州やロシア、中東にばかり向けてきた矛先を、抜本的にアジアに移すという意味が込められていた。

実のところヒラリーは、政治、経済、軍事的に興隆するアジア・太平洋地域といかに折り合っていくかという課題をこれまでも重視していた。国務長官に就任するとすぐに最初の外遊地としてアジアを選び、日本・韓国・中国・インドネシアを訪問したのも、「アメリカはアジアを見捨てない」という戦略的メッセージを発するためである。

中国などの新興大国が存在感を増す現在、アメリカを中核とする複数の同盟ネットワークである「ハブ&スポーク」という関係だけでは、もはや新しい安全保障環境に対応できないという危機感が、アメリカ内に広まっている。

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