なぜ、あなたの仕事は終わらないのか

スピードは最強の武器である
未読
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか
スピードは最強の武器である
著者
未読
なぜ、あなたの仕事は終わらないのか
著者
出版社
文響社
出版日
2016年06月07日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

1日中仕事ばかりで、本来大事なことに使う時間がない。そのような悩みを抱えているビジネスパーソンも多いのではないだろうか。しかし、この本で紹介される「超速時間術」を実践していくことで、人生の過ごし方を変えられるはずだ。

著者の中島氏は、米マイクロソフト本社でWindows95の開発に携わった伝説のプログラマーである。今では当たり前のように身体化されているだろう「ドラッグ&ドロップ」を普及させた張本人だ。このような世界を変える発明を生み出せたのは、「時間を使いこなしたことによる功績」だという。それまでの彼は、自分より優秀だと感じるプログラマーに圧倒され、おまけに英語も話せなかったのだ。しかし、時間の使い方に向き合い、効率化することで、優秀な人たちを飛び越えるくらいに能力を高めることができた。成功のカギとなったのは、著者が半生をかけて生み出した「ロケットスタート時間術」だ。猛烈なスタートダッシュにより、心の余裕を生み出し、成果を次々と出していくという。

さらに、本書の魅力は、時間術のノウハウを紹介するだけでなく、「時間とは何か」の本質に迫っている点である。読み進めるにつれて、時間を使いこなすメリットを痛感し、諦めかけていた「本当は実践したかったこと」に時間を投資できるようになるだろう。あなたの明日からの過ごし方を変えてくれる一冊であることは間違いない。

ライター画像
流石香織

著者

中島 聡(なかじま さとし)
1960年北海道生まれ。早稲田大学高等学院、早稲田大学大学院理工学研究科修了。高校時代からパソコン系雑誌『週刊アスキー』において記事執筆やソフトウェアの開発に携わり、大学時代には世界初のパソコン用CADソフト「CANDY」を開発。学生ながらにして1億円を超えるロイヤリティーを稼ぐ。
1985年に大学院を卒業しNTTの研究所に入所し、1986年にマイクロソフトの日本法人(マイクロソフト株式会社、MSKK)に転職。1989年には米国マイクロソフト本社に移り、Windows95、Internet Explorer3.0/4.0、Windows98のソフトウェア・アーキテクト(ソフトウェアの基本設計・設計思想〈グランドデザイン〉を生み出すプログラマー)を務め、ビル・ゲイツの薫陶を受ける。本書は、早咲きであった著者の「時間術」をまとめたもの。学生時代から、そして米マイクロソフト本社においても、「右クリック」「ダブルクリック」「ドロップ&ドラッグ」を現在の形にするなどWindows95の基本設計を担当し、またWindows98ではOSにインターネット・ブラウザの機能を統合することで、マイクロソフトのブラウザのシェアを世界一にするなど、大きな成果を上げ続けた秘訣こそが、この「時間術」だった。 2000年に米マイクロソフトを退社し、ソフトウェア会社のUIEvolutionを設立してCEOに就任、現在に至る。人気ブログ「Life is beautiful」及びメルマガ「週刊Life is beautiful」でも有名。

本書の要点

  • 要点
    1
    仕事を締め切りまでに終わらせるには、「仕事にかかる時間」を正しく見積もることが重要だ。心理的な余裕「スラック」を持つことが、生産性向上につながる。
  • 要点
    2
    締め切りをゴールに設定すると、予想外の事態(誤差)に対応できない。そこで、締め切りの前に、もう一つの締め切りを設定することが望ましい。
  • 要点
    3
    「ロケットスタート時間術」では、指定された期間の最初の2割を使って仕事に全力で取り組み、仕事全体にかかる時間を把握する。さらに、スタートダッシュで全体の8割方を仕上げて、余裕を生み出す。

要約

なぜ、終わらない仕事が発生するのか

時間の使い方を誤っている典型例

著者は以前、従順な部下であるAくんをマネジメントする立場にいた。Aくんは優秀なプログラマーであり、頼んだ仕事をいつも引き受けてくれる。しかし、彼は仕事の見積もりが苦手なため、「自分が理想とする完成日時」までに終えられると考えてしまうタイプだった。そのため、たとえば締め切りが1週間後の仕事を依頼したとき、ほかの案件に予想外の時間が取られ、締め切り前日に徹夜しても、結局は締め切りに間に合わない。Aくんのように、締め切り間際にラストスパートで仕事を終わらせようとするタイプは「ラストスパート志向」と言われ、仕事上では最も避けるべきタイプだ。

また著者には、Tくんという天才級の才能を備えた部下もいた。しかし、Tくんは才能と馬力に満ちているがゆえに、締め切り間際になって、設計されていない機能を追加してしまうのだ。納品間際に設計書にない機能を思い付きで追加すると、全体の計画に支障が出てしまう。仕事の出来にムラがあるため、能力が成果に見合っていないというタイプだ。この2人の仕事が終わらないのは、どちらも時間の使い方を間違えているからである。

応用問題を甘く見るのは禁物
GuidoVrola/iStock/Thinkstock

このような失敗を防ぐには、仕事にかかる時間を正しく見積もる必要がある。仕事の見積もりは、数学のテストに例えるとわかりやすい。数学のテストは、前半に基本問題、後半に応用問題が用意されている。基本問題はただの計算なので、どれくらいで解けるのかがわかりやすい。しかし、応用問題となると、解答にかかる時間が予測しづらい。仕事が期限までに終わらない人は、この応用問題を甘く見ている。本来なら、複雑な応用問題に先に取りかかり、かかる時間を把握する必要がある。

日本人は徹夜してでもラストスパートで仕事を終わらせようとする。一方、アメリカ人は朝早くから働く。この違いに効率的な働き方のヒントが隠されている。家族を大事にしているアメリカ人は、朝7時から働きはじめ、夕方には仕事を終えて家族と過ごす。よって、必然的に生産性を上げなくてはいけない。しかし、残業が美徳とされる日本の職場では、そのような強制力がなく、プライベートより会社を重視し過ぎた挙句、仕事の生産性は落ちやすくなるのだ。

効率のカギとなる「スラック」

仕事が終わらないとき、「もっと余裕を持っておけばよかった」と考えることがある。この心理的な余裕のことを「スラック」と呼ぶ。たとえば睡眠不足の人や、仕事に不安を抱えている人は、スラックを持ちづらい。

人はスラックがない状態が続くと、みるみる生産効率が落ちていく。そして、効率的な仕事の仕方に気付かず、がむしゃらに仕事にまい進してしまうのだ。暗闇のトンネルの中を進むかのような行為は「トンネリング」と呼ばれる。トンネリングにはまると、終わりが見えない中で処理能力が落ちていくので、結果として仕事は終わらないという悪循環に陥ってしまう。ここから脱するには、心の余裕を持つことがカギとなる。

時間を制する者は、世界を制す

仕事のリスクを考えて納期を重視する
BartekSzewczyk/iStock/Thinkstock

正しい時間の使い方をマスターすると、どのようなメリットが得られるのだろうか。まずは時間を上手く使いこなすことで、仕事のリスクを測定できるようになる。上司から指示された納期に間に合わないと判断すれば、すぐに報告すればよい。

また、仕事の質を追求した結果、締め切りに間に合わないとすれば本末転倒である。仕事が終わる見通しが立っていない状態で、質を高めようとするのは問題だ。なぜなら、

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要約公開日 2016.12.13
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