IoTとは何か 技術革新から社会革新へ
技術革新から社会革新へ

未 読
IoTとは何か 技術革新から社会革新へ
ジャンル
著者
坂村健
出版社
定価
800円 (税抜)
出版日
2016年03月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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著者
坂村健
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定価
800円 (税抜)
出版日
2016年03月10日
評点
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4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
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レビュー

本書は、ユビキタス、そしてIoTを30年にわたり第一線で研究開発してきた著者が、IoTとは何か、描く未来像、いま社会に必要だと思うことなどをまとめた一冊である。前書きでも語られているように、IoTに関して網羅的に概論を語ったものではなく、著者の考えを反映したトピックスを中心に取り上げている。

IoTが次世代の新しいインフラとして人々の生活の中心になるかどうかは、技術的に可能かという話だけでは終わらせてはいけないようだ。社会全体としてその技術がどう使われ、どう管理し、何を決めていかなければならないか。その構想がないまま技術だけが進化しても、結局は使われずじまいということになりかねない。事実、技術的な面ではすでに実現、実用化が可能という段階にあり、今後はそれを受け容れる社会の体制を整えることが望まれている。どこか一か所が責任をもつギャランティ体制とは違って、IoTはインターネットと同様に、利用する一人ひとりの最大限の努力、「ベストエフォート」があってこそ成り立つものだという。

IoTの普及によって実現できる新しい可能性は、さまざまに分野に広がっているはずだ。そのメリットを享受できるよう、IoTの本質を正しく理解し、社会にとって有益に活用されるためにどう使っていけばよいのか、一人ひとりがその可能性に気づき、それぞれの立場からの「IoTのベストエフォート」を考えていかなければならないときなのかもしれない。

著者

坂村 健(さかむら・けん)
1951年東京生まれ。工学博士。東京大学大学院情報学環教授、ユビキタス情報社会基盤研究センター長。1984年からオープンなコンピュータアーキテクチャ「TRON」を構築。携帯電話、家電、デジタル機器、自動車、宇宙機などの組込みOSとして世界中で多数使われている。2002年よりYRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長を兼任。いつでも、どこでも、誰もが情報を扱えるユビキタス社会実現のための研究を推進している。2003年に紫綬褒章。2006年に日本学士院賞、2015年にITU(国際電気通信連合)150Awardsを受賞。『ユビキタス・コンピュータ革命――次世代社会の世界標準』『不完全な時代 科学と感情の間で』(ともに角川oneテーマ21)、『コンピュータがネットと出会ったら モノとモノがつながりあう世界へ』(監修/角川インターネット講座14 KADOKAWA)、『ユビキタスとは何か――情報・技術・人間』(岩波新書)、『毛沢東の赤ワイン 電脳建築家、世界を食べる』(角川書店)、『痛快!コンピュータ学』(集英社文庫)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    IoTで目指しているのは、クローズな環境でモノとインターネットがつながることではなく、あらゆるモノや場所がインターネットのようにつながり、クラウド上で高機能に作用しあうという状態である。
  • 要点
    2
    IoTの実用化のためには、ひとつひとつのモノや場所に識別コードを組み込むことや、データを公開して誰でも制御のプログラムを作れるようにする必要がある。
  • 要点
    3
    IoTの実用化には技術面だけでなく、責任や権限をどうするかといった社会的制度の面からも議論が必要であり、それが整ってはじめてオープンなインフラとしてIoTが普及する。

要約

IoTのしくみ

IoTとは何か

IoTは、「ユビキタス」と呼ばれていた時代から数えると約30年間研究が続いている分野である。その期間の長さはインターネットが研究開発されて普及するまでの期間と同等であり、まさにインターネットと同じようにオープンなインフラとして社会を支えるものとして取り組まれているテーマだ。現在はすでに実用化へ向けたフェーズに入っていると言える。

一般的に「モノのインターネット」と訳されることが多いが、「モノをインターネットで繋ぐ」というよりも「あらゆる垣根を超えてモノがインターネットのように繋がっている」と捉えるべきだろう。前者は所有者が機器を制御するクローズな利用だが、IoTで目指しているのはもっとオープンな利用のイメージである。

IoTに欠かせない、組込み用OS
Jelena83/iStock/Thinkstock

IoTを実現させるためには、さまざまなモノにコンピューターが組み込まれる必要がある。かつてはハード上に直接、まるで職人のように組み上げるシステム開発が主流となっていたが、この方法では開発効率が上がらないのが課題であった。

そこで著者は「組込みシステム開発用の標準OS」(TRONプロジェクト)を作り、広く普及させるために技術仕様やライセンスを無償で公開する「オープンアーキテクチャ」とした。この組み込み用OSの普及で組込みシステムの開発は安定し、技術者の教育は容易になり、ノウハウやユーティリティを共有し蓄積することが可能となった。

コンピューターがどうはたらくか

モノに組み込まれるコンピューターの構成要素は、基本的に「センサー」「コンピューター」「エフェクター」の3つとなる。たとえば電気炊飯器であれば、重量センサーや熱センサーで米の重さや温度をはかり、コンピューターがどう動かすかを判断し、エフェクターがはたらくことで実際に温度を下げたり加熱時間を変えたりするという流れだ。人間の入力や調整は必要なく、状況を読みとって判断し最適なアウトプットを出すということであり、多くのものにセンサーやエフェクターがついていればいるほど、状況を多面的に認識し、人間にとって有用なアウトプットが細かく出せるということになる。

「ギャランティ」か「ベストエフォート」か
velinRadkov/iStock/Thinkstock

日本はTRONプロジェクトの成果もあり、技術的には世界に先んじてIoTの構想をもち、各企業において実現もされている。しかしそれはあくまで一企業の中での仕組みであり「クローズな」環境である点が、世界の企業がめざすオープンな社会の枠組みづくりとは異なるのだ。

確かに企業の枠を超えてシステムが連携するとなるとその責任の所在は曖昧になり、ギャランティ(保証)ができなくなる側面はある。しかしよく考えてみればインターネットのように特定の管理者はいないがそれを利用する人たちそれぞれのベストエフォート(最大の努力)によって成り立つというインフラも存在する。むしろ広く普及するのは後者の仕組みであり、その恩恵も大きなものになると言えるだろう。日本が、クローズなシステムからオープンなシステムへと移行していくのかどうか、今はまさにその分岐点にあると言える。

IoTの実用化

モノのトレーサビリティ

IoTの研究ですでに実現されているものに、「トレーサビリティ」がある。製品自体に電子タグを取り付け、どこでどうやって作られ、どのような過程で運ばれ、どう使われたかなどの情報をすべてコンピューターに記録し追跡できるというものだ。ひとつひとつの製品の管理はもちろん、何か問題があった場合の回収や対応も迅速かつ効率的に行うことができる。

例えば食品や飲料ひとつひとつに電子タグがつけば追跡が可能になるのはもちろんのこと、

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