誰が音楽をタダにした?
巨大産業をぶっ潰した男たち

未 読
誰が音楽をタダにした?
ジャンル
著者
スティーヴン・ウィット 関美和(訳)
出版社
定価
2,484円
出版日
2016年09月25日
評点(5点満点)
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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レビュー

いつから音楽は無料になったのか。日本の場合、WinMxやWinnyの登場あたりからという答えになるだろうし、アメリカにおいては、多くの人がナップスター以降と答えることだろう。だが、そもそもそういったファイル共有サイトが立ち上がる前から、音楽ファイルはインターネット上を漂っていた。

ファイル共有サイトのヘビーユーザーであった著者は、それらが一体どこから来たものなのか、突き止めたいという衝動に駆られた。その結果、生まれたのが本書だ。著者は、音楽がタダになった理由として、(1)音楽の圧縮技術の向上、(2)音楽リークグループの出現、そして(3)広告収入という新しいモデルの登場を挙げている。この3つの物語が混じり合い、いくつもの謎解きと冒険が錯綜する本書は、まるでアドベンチャー小説のようですらある。すでに映画化も決まっているという話にも納得だ。

また本書には、90年代からゼロ年代のアメリカの主要アーティストたちの名前が次々と出てくる。音楽ファン以外が読んでも間違いなく面白い1冊だが、洋楽(特にラップ)ファンだと、ニヤリとさせられる場面も多いだろう。

CDが売れなくなった時代において、音楽産業ははたしてどこに向かおうとしているのか、そしてなぜそこに向かわなければならなくなったのか。本書を読んでいけば、その答えの一端が見えてくるはずだ。

石渡 翔

著者

スティーヴン・ウィット (Stephen Witt)
1979年生まれ。ジャーナリスト。シカゴ大学卒業、コロンビア大学ジャーナリズムスクール修了。シカゴ及びニューヨークのヘッジファンドで働いたほか、東アフリカの経済開発に携わる。『ニューヨーカー』などに寄稿。

本書の要点

  • 要点
    1
    mp3は技術的にすぐれていたものの、長い間mp2の後塵を拝していた。しかし、一般消費者がmp3ファイルを気軽に作れるようになったことで、mp3は音楽の新しい流通方式を生みだした。
  • 要点
    2
    ほとんどすべての話題のアルバムをネット上に流出させたのは、たった1人の男だった。彼の最初の目的はカネだったが、最後はリーク活動そのものに取り憑かれていた。
  • 要点
    3
    ファイル共有がメジャーになったことで、音楽業界は大きく低迷していた。その結果、広告収入によって利益を生み出すというビジネスモデルが生まれた。

要約

第1の要因:mp3の登場

mp3はこうして生まれた
Darrin Klimek/DigitalVision/Thinkstock

音楽がタダになった大きな要因の1つが、mp3の登場だ。もともと音楽CDは、1秒のステレオサウンドの保存に140万ビット以上も使っていた。そこで、当時大学院生だったカールハインツ・ブランデンブルクは、人間の耳で実際に聞き取れるだけのビット数だけを確保することで、できるかぎり音質を保ちながらファイルを圧縮するという研究を行い、特許を取得した。業績を認められたブランデンブルクは、公的研究機関から、最先端のスーパーコンピュータやハイエンドの音響機器、著作権の専門家、そしてすぐれたエンジニア人材を与えられた。

1990年のはじめになると、ほぼ完成品といえるものができあがった。勢いに乗るブランデンブルクたちは、MPEG(動画専門家グループ)の主催するコンテストへの参加を決めた。このコンテストは、これからの時代の標準規格を設定することを目的にしたもので、14のグループが参加していた。結果、ブランデンブルクたちのグループが首位になったのだが、MUSICAMというグループもほぼ同点につけていた。そのため数カ月後、MPEGは複数の規格を承認するという方針を固め、ブランデンブルクたちもそれに従った。そしてMUSICAMの方式はmp2、ブランデンブルクの方式はmp3と呼ばれるようになった。

敗北続きのmp3

mp3のほうがmp2よりも技術的にすぐれていたが、mp2は知名度が高く、フィリップスという資金力豊富な企業からの支援があった。mp2が、デジタルFMラジオ、インタラクティブCD―ROM、DVDの前身であるビデオCD、デジタルオーディオテープ、無線HDTV放送のサウンドトラックの規格として選ばれた一方で、mp3はどこからも選ばれなかった。

mp3への主な批判は、音質のわりに処理能力がかかりすぎるというものだった。ただ、これは当初の規約に、MUSICAMの定めたルールに従うことが盛り込まれていたのが原因だった。フィリップスは、非効率な方式を押しつけることで、mp3を蹴落とそうと画策したのである。さらに、mp3へのネガティブキャンペーンも積極的に展開された。

それでも、ブランデンブルクのチームは懸命に状況を改善しようと試みた。この献身が実を結び、1994年までに、mp3は圧縮スピードでmp2にほんの少し劣るものの、mp2よりはるかに音質がすぐれた規格となった。だが、それでもmp3はmp2に負けつづけた。

新しい音楽のかたち
Stadtratte/iStock/Thinkstock

最初にmp3の価値を見出したのは、テロス・システムズというスタートアップ企業だった。mp2とmp3を聴き比べ、mp3のほうが断然良いと判断したテロスは、mp3をナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)にライセンスし、その後も北米のあらゆるスポーツリーグに売り込んでいった。それでも、ブランデンブルクたちの取り分はわずかだった。

ブランデンブルクたちは、家庭用のユーザーにmp3を売り込むため、パソコン向けのmp3ファイルの圧縮と再生アプリケーション「L3enc」を開発した。これにより、一般消費者は、自分でmp3ファイルを作り、家庭用パソコンで再生することができるようになった。L3encの登場は、これからの音楽の新しい流通方式を示唆していた。

第2の要因:音楽リークグループの出現

音楽の不正コピーという「文化」

音楽がタダになった第2の要因は、インターネット上で発売前のアルバムをリークする秘密組織の存在だ。そのうちの1人が、ほとんどすべての話題のアルバムの流出源になっていた。それが、アメリカ南部のCD製造工場に勤務していたベニー・ライデル・グローバーである。

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未 読
誰が音楽をタダにした?
ジャンル
マーケティング 産業・業界 グローバル テクノロジー・IT
著者
スティーヴン・ウィット 関美和(訳)
出版社
早川書房 出版社ページへ
定価
2,484円
出版日
2016年09月25日
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