現代ゲーム全史
文明の遊戯史観から

未 読
現代ゲーム全史
ジャンル
著者
中川大地
出版社
定価
2,800円 (税抜)
出版日
2016年08月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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文明の遊戯史観から
著者
中川大地
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定価
2,800円 (税抜)
出版日
2016年08月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
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レビュー

「ゲームは現実よりも強い」

この一言から始まる本書は、20世紀以降のゲームを総括する歴史書でありながら、同時にゲームの歴史を通して世界の変容を物語る文芸作品だ。ヨハン・ホイジンガやロジェ・カイヨワの文化人類学的な遊戯論を横軸にし、日本の社会学者・見田宗介の提唱した時代区分を縦軸として参照しつつ、ありとあらゆるゲームが織り込まれ、1つの大きなタペストリーを完成させていく。その手腕もさることながら、本書をまとめるまでにかかった年月を想像すると、畏敬の念すら湧いてくるのではないだろうか。

著者によれば、今日のエンターテインメントジャンルとしてのコンピューターゲームを育んできたのは、主にアメリカと日本という、戦後の自由貿易体制のもとで資本主義世界をリードしてきた2つの産業国に他ならないという。コンピューター技術そのものの黎明期から2010年代前半に至るまでのデジタルゲームを、遊びとテクノロジー、そして社会文化がせめぎあう特異な表現ジャンルとして捉え、その異種混合的なダイナミズムを余すことなく表現する本書は、西欧近代の文明原理と、日本文化の衝突と融和のプロセスを巧みに描き出している。

現代の日本文化を理解したいのであれば、もはやゲームを避けて通ることはできない。そう強く感じさせてくれる一冊だ。

石渡翔

著者

中川 大地(なかがわ だいち)
評論家/編集者
1974年東京都墨田区向島生まれ。ゲーム、アニメ、ドラマ等のカルチャー全般をホームに、日本思想や都市論、人類学、生命科学、情報技術等を渉猟して文化と社会、現実と虚構を架橋する各種評論の執筆やコンセプチュアルブック等を制作。批評誌『PLANETS』副編集長。
著書に『東京スカイツリー論』、編書に『クリティカル・ゼロ』『あまちゃんメモリーズ』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    戦後日本のアミューズメント史において、大きな影響力を発揮していたのがユダヤ人実業家たちであった。
  • 要点
    2
    ナムコが打ち出した『パックマン』は、ゲームそのものを超えて愛される、ビデオゲーム初の商用キャラクターとなった。
  • 要点
    3
    『ゼビウス』の登場以降、「表現」としてもゲームは評価されていった。また、この時期にゲーム同人誌文化が隆盛し、後のゲーム雑誌や攻略本の先駆けとなった。
  • 要点
    4
    ファミコンの大ヒットにより、アーケードゲームやパソコンゲームはファミコンと住み分けるため、独自進化を遂げていった。

要約

日本ゲームの胎動

アーケードゲームという潮流
gcammino/iStock/Thinkstock

日本のアミューズメント産業の創始者とされているのは、昭和3年(1928年)に日本娯楽機製作所(現:ニチゴ)を創業した遠藤嘉一である。彼は世界初の屋上遊園地「スポーツランド」の敷設事業を請け負った。このスポーツランドこそ、のちのゲームセンターにつながる日本のアミューズメント施設の原点である。

しかし、日中戦争から第二次世界大戦に至る国家総動員体制の下で、遠藤たち遊戯施設の事業者たちは、贅沢品規制によって事実上の営業停止に追い込まれた。そして戦後、アメリカに占領された日本は、それまでとは質・量ともに比較にならない規模でアメリカ文化の受け入れを余儀なくされ、その流れで、現在のゲーム業界に直接連なる娯楽機器メーカーの脈絡も立ち上げ直されていった。

1965年になると、現存最古参のアーケードゲーム企業である、セガ・エンタープライゼス(現:セガゲームズ)社が生まれ、朝鮮戦争後に日本を再訪した在米ユダヤ人であるデビット・ローゼンが初代社長に就任した。また、亡命ユダヤ人であり親日家であったミハエル・コーガンも、1953年に太東貿易を創業した後、ゲーム産業にシフトしていき、72年に社名をタイトーに変更。1978年に生みだした『スペースインベーダー』で世界的大ブームを巻き起こした。このように、ビデオゲーム受容までに至る戦後日本のアミューズメント史においては、ユダヤ人実業家たちがきわめて大きな影響力を発揮していたと言える。

ただ、ビデオゲーム以前からのエレメカ式アミューズメント機器の最大手として業界を牽引していたナムコの存在も忘れてはならないだろう。創業者の中村雅哉は1955年に中村製作所を立ち上げ(77年にナムコに改名)、子供向け・家族向け施設の国産遊具の制作に従事した後、アーケードゲーム業界に参入。1976年、エレメカ式レースゲーム「F1」をアメリカで販売し、日本産のアーケードゲームがアメリカで本格展開された初の事例を作りだした。

その他、ユニバーサルや日本物産、コナミ工業(現コナミ)、アイレム、新日本企画(SNK)、データイーストといった中小メーカーも参入し、日本独自のビデオゲームを生み出すという潮流が生まれたのである。

玩具メーカーの参入
yaruta/iStock/Thinkstock

アーケードゲームの登場とほぼ並行するかたちで、家庭用テレビゲームの受容と国産化も行われた。1972年に発売された世界初のテレビゲーム機「ODESSEY」が日本で発売されることはなかったが、その動向にいち早く注目していた玩具メーカーのエポック社は75年、国産テレビゲーム機第1号となる「テレビテニス」を発売。1976年から77年にかけて、アメリカからの輸入機や他の国産メーカーの参入が相次ぎ、急速に市場は発展していった。そのなかでも、花札やトランプ等の老舗であった任天堂が発売した「カラーテレビゲーム6」および同「15」や、玩具業界のバンダイが一気に5機種ものラインナップを用意した「TV-JACK」シリーズは、特に大きな存在感を発揮していた。

エポック社は、前田竹虎が考案した「野球盤」を売り出すため1958年に創業された。このゲームが爆発的なヒットを起こしてシリーズ化。さらに、「野球盤」以外にも各種ボードゲームやパズルを中心としたラインナップを並べたことで、独自の地位を確立した。他社に先駆けて、日本企業として初のテレビゲームを販売できたのも、エポック社が当時最も「ゲームデザイン」の経験に長じた存在だったからだと言えよう。

明治22年(1889年)に創業した任天堂は、さまざまな事業に手を出したのち、伝統的なゲーム会社たる自社の強みを活かすため、玩具事業に注力。当初は花札の製造ラインで設備保守の業務にあたっていた横井軍平の活躍もあり、玩具業界を代表するメーカーへと成長していった。バンダイも電動化とテレビ番組とのタイアップによるヒット手法を開拓したことで、本格的なキャラクターマーチャンダイジングの旗手となっていった。

【必読ポイント!】 ファミコン登場に至るまで

ゲームの「日本化」

インベーダーブームが収束した1980年代、タイトーに代わりアーケードゲーム界を牽引したのがナムコである。

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