なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?

「お客が長居する」のに儲かるコメダのひみつ
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なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?
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なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?
出版社
プレジデント社
出版日
2016年11月01日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

昭和のレトロな雰囲気のある「コメダ珈琲店」が、人気となっている。近年は全国各地に店舗を拡大して700店舗以上となり、国内で3位だ。この名古屋が発祥の喫茶店が、なぜ人気になったのかを探ったのが本書である。

セルフサービスで安いドトールコーヒーが旧来の街の喫茶店を駆逐し、さらにお洒落なスターバックスが上陸すると、喫茶店は多様化してスタイリッシュになった。その一方で、年配の人たちが気兼ねなく入れる喫茶店がなくなってしまう懸念があった。そこに登場したのが、セルフサービスではなく昔の喫茶店を彷彿させる、フルサービスのコメダ珈琲店だ。コメダは郊外に広いスペースを確保し、間仕切りと大きめのソファで心地の良い場所をお客さんに提供した。しかも分かりやすいメニューと、パンメニューを中心としたボリューム感のある飲食で、幅広い客層を確保したのである。

著者は現在の社長や創業者にインタビューし、街の小さな喫茶店がなぜ東証一部上場できるまでになったか、その経営手法を聞き出している。それによると、喫茶店激戦区の名古屋で生き残るため、経営効率重視ではなく常にお客さん目線でサービスを提供し続けてきたとのことだ。従業員教育を徹底し、フランチャイズチェーン方式で地域特性に合わせた店舗にするなど、現場主義を貫いてきたことが秘訣のようである。

豊富なカラー写真と雑誌風の体裁で気軽に読めて、しかもコメダ珈琲店にさっそく行きたくなってしまう本なのである。

ライター画像
谷田部卓

著者

高井 尚之(たかい なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部、担当者の取材をし続ける。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。2007年からカフェ取材も始め、テレビやラジオの放送メディアでも解説を行う。著書に『カフェと日本人』(講談社)、『「解」は己の中にあり』(同)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)、『なぜ「高くても売れる」のか』(文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』(日本経済新聞出版社)、『花王「百年・愚直」のものづくり』(日経ビジネス人文庫)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    コメダ珈琲店は、郊外型店舗として広い駐車スペースを確保し、木のぬくもりを感じる山小屋風の建物で安らぎを演出。間仕切りと大きめのソファで居心地の良い落ち着いた空間をお客さんに提供して、人気を得ることができた。
  • 要点
    2
    店舗のほとんどはフランチャイズチェーン(FC)店とすることで、出店コストを抑えて短期間で一気に店舗を拡大させた。しかもFCの特性を活かして中央集権ではなく、地域特性に鑑みた現場の創意工夫が可能となっている。

要約

「コメダ珈琲店」人気の秘密

なぜ人気なのか?
GeorgeDolgikh/iStock/Thinkstock

今、名古屋発祥の「コメダ珈琲店」が大人気だ。東京都内をはじめ全国各地に出店し、2016年9月の時点で704店と、スターバックス、ドトールコーヒーショップに次ぐ国内3位となっている。その人気の秘密は、どこにあるのだろうか。

最近の大手カフェチェーンは、どこもセルフサービスだ。それに対してコメダは、店員が注文や飲食を運ぶフルサービスなので、お客がくつろげる。また椅子もゆったりとして居心地がよいので、中高年の支持が高いのだ。

居心地の良い喫茶店は客席回転率が悪くなり、儲からないように思える。しかしコメダの場合は郊外型なので、午前中の高齢者、昼時の子連れ主婦、午後は商談のビジネスパーソン、夕方には学生で、夜となると食事の家族客となっている。つまり朝から夜まで、全時間帯でまんべんなく客席が回転することで、平均滞在時間の長さという不利を補っているのだ。

メニューの秘密

コメダの看板メニューは、自社工場製デニッシュパンにソフトクリームとチェリーをトッピングした「シロノワール」だ。64層にもなる温かいデニッシュパンに、ソフトクリームが溶け浸されてくるのが人気となっている。またボリューム満点の「みそカツサンド」や、大量の野菜が添えられた「ジャーマン」など、パンメニューが自慢。コメダは喫茶店激戦区の名古屋が発祥なので、ボリューム感やオトク感を重視しているのだ。

コメダ最大の主力商品は、コーヒーだ。もちろん豆と焙煎、抽出にこだわっているが、専用工場での製造であり店で淹れるわけではない。これは淹れる人によって味が変わらないよう、均質化にこだわっているからだ。その味のコンセプトも通好みではなく、万人に好まれるよう設計されている。さらに注文を受けてから抽出するより速くコーヒーを提供できるので、お客さんを待たせない。だからコメダのコーヒーには人気があるのだ。

看板商品のシロノワールや山型食パンは、専用のパン工場で製造されている。上質の小麦粉をブレンドした独自製法のパンは、手間をかけている。普通のデニッシュは24層や36層だが、コメダのデニッシュは64層というきめ細かさ。バーガー類のバンズも、ハンバーガー店とは差別化しており、カツサンド専用のパンの型があるほどだ。

コメダのメニューには、「ごはんモノ」はない。パンメニューは16種類と豊富で、ピザやグラタンなども揃っているのだが、カレーライスなどのごはんモノは手がけていない。コメダは喫茶店としてのスタンスにこだわり、定食屋ではないのでごはんモノは置いていないのだ。

接客のアイデア
miya227/iStock/Thinkstock

コメダの接客の特徴は、マニュアルを重視していないことだ。これは、かゆいところに手が届く接客を大切にしているからだが、このため店舗スタッフの教育に力を入れている。接客業にとって笑顔や表情は最も大切なので、朝礼の際に顔の体操を指導する笑顔担当もいるという徹底ぶりだ。

また工場長や本社スタッフたちは、近くのコメダに一般客として頻繁に訪れている。これは、実際の店でパンの品質は良いか、どんなふうに食べられているかを知るためだ。期間限定のメニューがあれば、それを頼んで味わうとともに、頼んだお客さんを観察するそうだ。一般客として店を訪れるので、店のスタッフは気づいていないらしい。

それだけでなく、現在の社長である臼井氏は就任直後から3年たった今でも、毎週コメダの制服に着替えて、店でコーヒーを提供している。それどころか、コメダ入社前の2週間は皿洗いをしていたという。本社で数字やデータばかり見ていたのでは現場とかい離してしまうので、これからも続けていくそうである。

昭和型喫茶店の魅力

アンチスタバ派に好まれる理由

スターバックスが日本に上陸して以来、おしゃれなカフェが日本の喫茶文化を変えてしまった。コーヒーのメニューが多様化し、女性客が増え、店舗もスタイリッシュになった。だが、スターバックスが苦手な人は意外に多い。わかりにくいメニューや、カッコつけているところが好まれなかったりする。それに対して、コメダは肩ひじ張らない店にしているので、カジュアルに利用されている。

コメダのメニューには、スターバックスにあるような舌をかみそうなメニューはない。高度経済成長期に浸透したメニューそのままにしているので、年配客に好評だ。お客さんの年齢別データを見ると、20代以下と60代以上が多く、世代を問わず来店されていることがわかる。

近年のコメダの店舗数の増加は驚異的だ。

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要約公開日 2017.05.12
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