今、名古屋発祥の「コメダ珈琲店」が大人気だ。東京都内をはじめ全国各地に出店し、2016年9月の時点で704店と、スターバックス、ドトールコーヒーショップに次ぐ国内3位となっている。その人気の秘密は、どこにあるのだろうか。
最近の大手カフェチェーンは、どこもセルフサービスだ。それに対してコメダは、店員が注文や飲食を運ぶフルサービスなので、お客がくつろげる。また椅子もゆったりとして居心地がよいので、中高年の支持が高いのだ。
居心地の良い喫茶店は客席回転率が悪くなり、儲からないように思える。しかしコメダの場合は郊外型なので、午前中の高齢者、昼時の子連れ主婦、午後は商談のビジネスパーソン、夕方には学生で、夜となると食事の家族客となっている。つまり朝から夜まで、全時間帯でまんべんなく客席が回転することで、平均滞在時間の長さという不利を補っているのだ。
コメダの看板メニューは、自社工場製デニッシュパンにソフトクリームとチェリーをトッピングした「シロノワール」だ。64層にもなる温かいデニッシュパンに、ソフトクリームが溶け浸されてくるのが人気となっている。またボリューム満点の「みそカツサンド」や、大量の野菜が添えられた「ジャーマン」など、パンメニューが自慢。コメダは喫茶店激戦区の名古屋が発祥なので、ボリューム感やオトク感を重視しているのだ。
コメダ最大の主力商品は、コーヒーだ。もちろん豆と焙煎、抽出にこだわっているが、専用工場での製造であり店で淹れるわけではない。これは淹れる人によって味が変わらないよう、均質化にこだわっているからだ。その味のコンセプトも通好みではなく、万人に好まれるよう設計されている。さらに注文を受けてから抽出するより速くコーヒーを提供できるので、お客さんを待たせない。だからコメダのコーヒーには人気があるのだ。
看板商品のシロノワールや山型食パンは、専用のパン工場で製造されている。上質の小麦粉をブレンドした独自製法のパンは、手間をかけている。普通のデニッシュは24層や36層だが、コメダのデニッシュは64層というきめ細かさ。バーガー類のバンズも、ハンバーガー店とは差別化しており、カツサンド専用のパンの型があるほどだ。
コメダのメニューには、「ごはんモノ」はない。パンメニューは16種類と豊富で、ピザやグラタンなども揃っているのだが、カレーライスなどのごはんモノは手がけていない。コメダは喫茶店としてのスタンスにこだわり、定食屋ではないのでごはんモノは置いていないのだ。
コメダの接客の特徴は、マニュアルを重視していないことだ。これは、かゆいところに手が届く接客を大切にしているからだが、このため店舗スタッフの教育に力を入れている。接客業にとって笑顔や表情は最も大切なので、朝礼の際に顔の体操を指導する笑顔担当もいるという徹底ぶりだ。
また工場長や本社スタッフたちは、近くのコメダに一般客として頻繁に訪れている。これは、実際の店でパンの品質は良いか、どんなふうに食べられているかを知るためだ。期間限定のメニューがあれば、それを頼んで味わうとともに、頼んだお客さんを観察するそうだ。一般客として店を訪れるので、店のスタッフは気づいていないらしい。
それだけでなく、現在の社長である臼井氏は就任直後から3年たった今でも、毎週コメダの制服に着替えて、店でコーヒーを提供している。それどころか、コメダ入社前の2週間は皿洗いをしていたという。本社で数字やデータばかり見ていたのでは現場とかい離してしまうので、これからも続けていくそうである。
スターバックスが日本に上陸して以来、おしゃれなカフェが日本の喫茶文化を変えてしまった。コーヒーのメニューが多様化し、女性客が増え、店舗もスタイリッシュになった。だが、スターバックスが苦手な人は意外に多い。わかりにくいメニューや、カッコつけているところが好まれなかったりする。それに対して、コメダは肩ひじ張らない店にしているので、カジュアルに利用されている。
コメダのメニューには、スターバックスにあるような舌をかみそうなメニューはない。高度経済成長期に浸透したメニューそのままにしているので、年配客に好評だ。お客さんの年齢別データを見ると、20代以下と60代以上が多く、世代を問わず来店されていることがわかる。
近年のコメダの店舗数の増加は驚異的だ。
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