ドライバーレス革命
自動運転車の普及で世界はどう変わるか?

未 読
ドライバーレス革命
ジャンル
著者
ホッド・リプソン メルバ・カーマン 山田美明(訳)
出版社
定価
2,160円
出版日
2017年02月27日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
4.5
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自動運転車の普及で世界はどう変わるか?
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ホッド・リプソン メルバ・カーマン 山田美明(訳)
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2017年02月27日
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レビュー

自動車が近代社会に与えた影響ははかり知れないものがある。同様に、ドライバーレス・カーも社会を一変させる革命的テクノロジーとして私たちの前に現れるだろう。

自動車が普及を始めた直後から、ドライバーレス・カーは夢の技術として何度も試みられてきたものの、そのたびに挫折をくりかえしてきた。ところが、ここ数年の人工知能技術の進展、センサーの高性能化、およびコンピュータ処理速度の劇的向上により、ドライバーレス・カーは現実のものとなってきている。

本書は、ドライバーレス・カーの仕組みと社会に与える影響を、様々な観点から網羅的に書いたものだ。著者の専門が人工知能ということもあり、その原理であるニューラルネットワークの歴史や背景についても詳しく解説されている。また、日本ではあまり知られていない、人工知能分野における派閥抗争まで描かれている点も興味深い。

自動車産業が強い日本では、ドライバーをまったく必要としないドライバーレス化を推進する声はあまり聞こえてこない。しかし著者は、自動車業界関係者が思い描く「自動運転カー」、すなわちドライバーと機械の協調運転を真っ向から否定し、完全にドライバーレス・カーにすべきと主張する。

人工知能の専門家が語るドライバーレス・カーの実現可能性や意義は、重要かつ貴重だ。自動車業界に関わる者にかぎらず、広く読まれるべき一冊である。

谷田部 卓

著者

ホッド・リプソン (Hod Lipson)
コロンビア大学機械工学教授。創造的機械研究室を主宰し、人工知能や製造プロセスのデジタル化を専門とする。自己複製、内省、質問、創造など、これまでおよそロボットには無理だと思われていた分野の設計・製作に取り組むかたわら、執筆・講演・メディア出演などを通じてロボット工学の魅力を伝えている。著書に『2040年の新世界:3Dプリンタの衝撃』(M・カーマンとの共著、東洋経済新聞社)がある。

メルバ・カーマン (Melba Kurman)
著述家・テクノロジーアナリスト。ドライバーレス・カー、人工知能、3次元印刷などの革新的なテクノロジーに関する執筆・講演活動を行っている。著書に『Tech Transfer 2.0: How Universities Can Unlock Their Patent Portfolios and Create More Tech Startups(技術移転2.0――大学の著作権を利用してテクノロジー企業を興す)』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ドライバーレス・カーは、自動車の抱えていた問題を解決する一方で、世界経済を牽引する自動車産業に多大な影響を与えるだろう。
  • 要点
    2
    各種センサーの高性能化とディープラーニングの登場により、人工知覚の能力が飛躍的に向上したことで、ドライバーレス・カーは現実的な技術となってきた。
  • 要点
    3
    ドライバーレス・カーは、社会を一変させる革新的テクノロジーである。ドライバーが不要になるなど、人間の仕事に与える影響も非常に大きなものになるだろう。

要約

ドライバー不要の時代へ

自動車が近代社会を形成した

100年前に発明された自動車は、世界の都市や社会、人々のライフスタイルを形づくってきた。しかしその代償は大きい。街は車に溢れかえり、空気は汚れ、交通事故により数百万人もの命が失われている。

この問題を解消するためには、人間ではなく人工知能に運転をさせればよい。すなわちドライバーレス・カーだ。そのほうが、より安全かつクリーンで、はるかに便利な移動手段になるはずである。

ドライバーレス・カーは信頼性の高い人工知能を必要とするため、長年実現にはいたらなかった。だが、近年の飛躍的な視覚情報処理技術の発達により、ドライバーレス・カーは現実のものになろうとしている。

ドライバーレス・カーの実用化を阻むもの
Ljupco/iStock/Thinkstock

アメリカでの調査によると、若者ほど運転は退屈だと感じており、ドライバーレス・カーへの興味が高い。それにもかかわらず、ドライバーレス・カーがなかなか実現しないのは、様々な誤解にもとづく反対意見があるからである。

まず、「自動運転テクノロジーは、段階的に移行すべき」という主張に反論したい。これは、現在の運転支援機能を徐々に拡大して、人間と機械がハンドルを共有すべきというものだ。しかしこのような方式では、人間は運転に注意を払わなくなり、かえって危険な状態をつくりだしてしまう。

また、「自動運転テクノロジーの実現には、莫大なインフラ投資が必要となる」という誤解も根深い。これは米国運輸省が、かつて「コネクテッド・カー」構想として、道路に莫大な投資をしようとしてきたことに由来する。しかしドライバーレス・カーを実現するうえでは、道路ではなく車に知性を持たせればよいため、莫大なインフラ投資は必要でない。

さらに、「ドライバーレス・カーは、100%安全でなければならない」という現実性に乏しい意見もある。だが、そういう意見をもつ人々は、そもそも人間が運転する車によって毎日のように自動車事故が発生していることを無視している。平均的なドライバーを超える安全性が確保されたら、ドライバーレス・カーは導入してもよいと考えるべきだ。

自動車産業への影響
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

電気自動車、カーシェアリングなどの出現により、自動車メーカーは従来のビジネスモデルを再考しなければならない段階にきている。これに加え、もしドライバーレス・カーが普及すれば、自動車メーカーは生き残りをかけて、さらなる再編を余儀なくされるはずだ。

その場合、自動車メーカーは独自のソフトウェアを開発するか、車体製造に専念するしか道はない。つまり自動車メーカーの未来は、車に知性を与えるOSを自動車産業とソフトウェア産業のどちらが開発するかで決まることになる。

現在、自動車メーカーはドライバーレス・カーへの移行プロセスをできるだけ緩やかに進めようとしている。これは、自動車メーカーがまだ人工知能ソフトウェアの開発にまだ不慣れであり、ドライバーレス・カーの時代になると消費者がマイカーを買わなくなると予想しているからである。

自動車産業は、米国のGDPの12%を占めている巨大産業である。この巨大な市場をめざして、自動車メーカーとグーグルは別方向からアプローチしている。もしグーグルが勝てば、自動車メーカーはコスト効率の良い車体を製造するだけの請負企業となってしまうだろう。

自動運転のテクノロジー

人工知覚の開発

OSは、ドライバーレス・カーを実現する重要なテクノロジーのひとつである。ただ、パソコンのOSと異なり、ドライバーレス・カーのOSの性能が悪ければ、犠牲になるのは人間の命だ。

このため、ドライバーレス・カーのOSには、3つの重要な性能が求められる。

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