思考の整理学

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思考の整理学
出版社
出版日
1986年04月24日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

30年間で200万部以上売れたロングセラー、それが『思考の整理学』である。毎年多くの学生が購入している本書であるが、たんなる学生向けとあなどるなかれ。ここには「思考」の本質が描かれている。

日本人はよく「表現することが苦手」と言われるが、それは実のところ、「考えることが苦手」ということに他ならない。考えることが得意になるためには、著者のいうように思考の「整理」が必要だ。30年以上前に書かれていた本ではあるが、著者の考え方は今でも十分新鮮である。ここに書かれていることを実践すれば、思考の質が変わっていくのを実感できるはずだ。

また、エッセイ集として読んでも単純におもしろい。90歳を過ぎた今もなお、エッセイストとして活躍する著者だが、その実力は本書からも読みとることができる。なによりメタファーの使いかたにグッとくる。人間の感性に訴えかける表現にあふれているからこそ、本書は今日まで読み継がれているといえる。

「知」という営みに対する向き合い方を考えるうえで、まさに礎となる一冊である。本書の帯には「もっと若い時に読んでいれば……」と書かれているが、読むのに遅すぎるということはない。まだ読んだことがないという方も、学生時代に読んだことがあるという方も、これを機会にぜひ本書を手にとってみてはいかがだろうか。

著者

外山 滋比古(とやま しげひこ)
1923年生まれ。東京文理科大学英文科卒業。お茶の水女子大学名誉教授。専攻の英文学に始まり、テクスト、レトリック、読書、読書論、エディターシップ、思考、さらに日本語論の分野で、独創的な仕事を続けている。平明で論理的な日本語を開拓したエッセイストとしても定評がある。著書に『「読み」の整理学』『ライフワークの思想』『アイディアのレッスン』『知的創造のヒント』『知的生活習慣』(筑摩書房)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    学校教育は、自力で飛び立てないグライダー人間ばかり生みだしてきた。だがこれからの時代で必要とされるのは、自力で飛び回れる飛行機人間である。
  • 要点
    2
    思考を整理するうえで、寝かせることほど大事なことはない。
  • 要点
    3
    本当にやるべきことは、1つのことだけに注力しているとなかなか見えてこない。
  • 要点
    4
    知識をいたずらに所蔵してはいけない。必要なもの以外は忘れてしまうべきだ。
  • 要点
    5
    深く考えず、とにかく気軽に書き始めたほうがいい。そうすれば道筋が見えてくる。

要約

学習について

グライダーかつ飛行機であれ
ipopba/iStock/Thinkstock

学校信仰というものがある。新しいことを始めたいのであれば、学校へ行くのが一番だとする考え方のことだ。学校信仰をもっている人たちは、学ぶにはまず教えてくれる人が必要だと考えている。だからこそ、教える人と本を用意して待ってくれている学校へ行くのが当然だというわけである。

だが、学校での学びは、あくまで先生と教科書にひっぱられたものでしかない。それはまるでグライダーのような学び方だ。学校では、どこまでもついていく従順さが尊重され、逆に自力で動く飛行機のような学び方は敬遠されてしまう。

もちろん、グライダー能力自体がダメなわけではない。そもそも人間には、グライダー能力と飛行機能力の両方が備わっている。グライダー能力がまったくなければ、基本的な知識の習得すらおぼつかないだろう。何も知らないまま一人で飛ぼうとすれば、待っているのは悲惨な結末である。

だが、現実にはグライダー能力ばかり成長していて、飛行機能力に欠けている人があまりに多い。さらに悪いことに、そういう人も「翔べる」という評価を社会で受けてしまっている。そのような環境が、新しい文化の創造を阻んでいるのだ。

学習は逆説的である

学校がグライダー訓練所のようになってしまうのも、考えてみれば当然である。とにかく言われるまま勉強するよう教えこむからだ。そのような環境では、各人の自発的な学習意欲は期待できない。

ここで参考になるのが、昔の塾や道場のしきたりである。かつての教育機関では、入門してもすぐに教えるようなことはしなかった。むしろ、教えるのを拒んでいたほどである。

すると当然、弟子は不満をいだき、なんとしてでも師匠の知識や技術を盗みとろうとする。すると次第に、新しい知識や情報を自ら取得する力が養われていくというわけだ。

いまの学校は、教える側が積極的すぎるし親切すぎる。それでは学ぶ側の依存心を助長するだけで、好奇心をないがしろにしてしまうだけである。

【必読ポイント!】 発想について

問題は寝かせよ

通常、問題から答えが導かれるまでには時間がかかるものだ。その間、ずっと考え続けているのはかえって悪影響を及ぼしかねない。一晩寝てから考えるぐらいがちょうどよい。

むしろ、一晩では短すぎる場合もある。

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要約公開日 2017.05.31
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