本書の要点

  • 本書では、戦わずして勝つことが最上と主張され、戦争を奨励はしていない。しかし、いざ戦争となったとき、いかにして自国の被害を最小限に抑え、同時に大きな利益をあげることができるかを考察している。

  • この目的を達成するためには、敵を知り自軍を知ったうえで、冷静に状況分析をすることが必要になる。そして、自軍が戦いにおいて主導権を握れるような戦略を立てる。戦術の極致は、敵に自軍の形を見せず、相手が備えることを不可能にすることである。

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戦わずして勝つことが最上である

実際に戦うことは上策ではない

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戦争は国家にとって非常に大きな決断であり、国民の生死や国の存亡がそこで決まる。そして戦争には膨大な準備が必要となり、多くの費用もかかる。長期間陣営を保とうとすれば、国家の経済にも大きな影響を及ぼす。国が弱れば、外国の恰好の餌食ともなってしまう。こうした戦争の損害を知らない者は、戦争の利益も十分にわかっていないといえる。このように、戦争は国家の一大事であるからして、慎重に事を進めることが重要である。戦争において、敵を撃破して降伏させることは最も良い作戦ではない。敵を傷つけずに降伏させることが最も良いのである。百回戦争をして百回勝つことは確かにすごいことではあるが、最高に価値のあることではない。戦わずに勝つことこそが最上なのである。そう考えると、最も優れた勝ち方は、敵国が陰謀をめぐらせているあいだに、その陰謀を打ち破ることである。敵国同士が連合した時はそのつながりをほどくのがその次に良い。そうできなかったときに、ようやく敵の軍隊を打ち破るということになる。最も良くない勝ち方は、敵の城を攻めるということである。城を攻めようとすると、準備に莫大な時間と費用がかかり、自軍が被害を受けることも避けることはできない。戦争を上手く行う者はこうした戦い方をしない。無傷で利益を得ることを目指すのである。

戦わずして勝つためには戦術が必要である

戦争に勝つためには相手の裏をかかねばならない。例えば、仮に自分たちが強くても弱いと思い込ませる、勇猛さを隠して臆病と思わせる、あるいは、近くにいるにもかかわらず遠くにいるように見せかけること。そして敵の様子を観察し、混乱しているときにはそれに乗じて攻めたて、気力充実とみれば防御に徹する。このようにして敵の不意を突くことが重要である。

必ず勝つために何をすべきか

kiankhoon/iStock/Thinkstock

戦争においては、自軍が敵の十倍いたときは、敵を包囲すべきである。そして、五倍であれば敵を攻撃すべきである。二倍であれば敵の勢力を分散させることを優先し、同じ数なのであれば懸命に戦う。自軍が少ないとき、力がかなわないときは、退却し、あるいは隠れるべきである。そして、必ず勝つためには、五つのことを頭に置いておかねばならない。

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要約公開日 2016.03.31
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