戦略思考でマーケティングは強くなる

なぜ「戦略」で差がつくのか。

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なぜ「戦略」で差がつくのか。
出版社
出版日
2017年03月10日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

今や戦略について書かれた本は山のようにあり、経営戦略、マーケティング戦略、広告戦略、営業戦略など、企業はたくさんの「戦略」で溢れている。では、「戦略」とはなにかを定義付け、汎用性のある概念的な説明ができる人はどれだけいるだろうか。実のところ、日常的に使われている割にその定義や意味が曖昧なことが多いように思える。

たとえば、事業縮小などの後ろ向きで歓迎しにくいことを説明する際に「戦略的判断」といった飾り言葉として使われたり、「今回のブランドは戦略ブランドになる」など、単に「重要な」という意味で形容詞的に使われたりすることもある。あるいは、「計画」「目的」「ヴィジョンや理念」の同義語として使っている人もいるだろう。しかしながら、言葉の定義が曖昧なまま、有効な戦略の策定はまず不可能といっていい。

まずは、戦略という言葉の定義を明らかにしたうえで、戦略の概念や考え方について理解を深めていけば、メンバーとの議論の効率が上がっていき、戦略の中身がより効果的になるのは間違いない。

本書は、マーケティング担当者のための実践的な戦略立案の解説書であるが、具体的な事例が豊富に盛り込まれているため、マーケティング担当者以外の人にとっても実にわかりやすい内容となっている。本書を読めば、組織やチームの戦略の良し悪しがわかるようになり、また戦略を立案する立場の人であれば、外部環境などの変化に動じない、勝負強いリーダーになれることだろう。

ライター画像
金井美穂

著者

音部 大輔(おとべ だいすけ)
関西学院大学商学部卒業後、P&Gジャパンのマーケティング本部に入社。17年間の在籍中、ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドマネジメントを経て、US本社セントラルチームでイノベーションに関する知識創造プロジェクトのマーケティングサイドを主導。帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂などさまざまな文化背景、製品分野の企業でブランドマネジメントやマーケティング組織育成を指揮。2016年、CNET JapanのCMO Awardを資生堂ジャパンCMOとして受賞。博士(経営学 神戸大学)。

本書の要点

  • 要点
    1
    戦略とは「目的達成のための資源利用の指針」である。達成すべき目的があるからこそ戦略が必要となる。また、資源は有限であるからこそ使い方に巧拙が生じ、そこに戦略を持つことの意味がある。
  • 要点
    2
    戦略に絡むあらゆる問題と考察は、すべて「目的」と「資源」の2点に集約されていくか、この2点に端を発している。いずれかに変化があったときには戦略を変更すべきだが、判断に迷ったときには「目的」に立ち返るべきで、いたずらに戦略を変更してはならない。

要約

【必読ポイント!】 戦略の定義

戦略と混同されがちな4つの概念

まずは、戦略と混同されがちな4つの概念との違いに着目し、戦略が持つ特徴的な側面を明らかにしていく。

概念の1つ目は「計画」である。たとえば、「来年の戦略は、新しい消費者を獲得するために商品Aを新規に市場導入する」といったとき、「来年の戦略」を「来年の計画」と言い換えても意味は通るため、両者を混同しやすい。しかし、計画の立案を導く方針や指針があってこそ、無理や無駄のない計画がつくれる。この判断基準を示す役割として期待される、計画の上位概念こそが戦略である。

2つ目は「目的」である。たとえば、「我々の戦略は消費者満足の最大化である」や「どこよりも安い価格で提供するのが戦略である」といった例では、戦略と目的は同義となりうる。しかし戦略は、目的をどうやって達成するかを示すべきもので、目的そのものではない。

3つ目は「ヴィジョンや理念」である。ヴィジョンや理念は、個人や組織の究極的な達成や存在理由を示すものである。「すべての消費者の満足のために」などと、説明を要さないほどに絶対的な善であることが多い。同時に、ヴィジョンや理念はそれをどう達成していくかの直接的な方法を指し示すものではない。ここが戦略との大きな違いである。

4つ目は「方針」である。戦略が「方針」あるいはより具体的な「指針」であるという考え方は、戦略がどう機能するかという側面をうまく捉えている。広く見れば、戦略は方針のひとつだと考えてもいい。そこで本書では、戦略は、目的を達成するためのなにがしかの方向性や選択肢を示す「方針・指針」であると考える。

戦略が必要な2つの理由

戦略の定義と同じく、戦略がなにに貢献するかが曖昧なままにされていることも少なくない。戦略の存在理由を問うことで、曖昧な定義をより明確にできる。

戦略が必要な第1の理由は、「達成すべき目的があるから」である。逆に言えば、達成すべき目的がなければ、戦略は必要ない。そして、目的をいかに明確にするかが、その後の行動計画と有効性にきわめて大きな影響を及ぼす。

たとえば、サンプリング(試供品の提供)の目的は、「1人でも多くの消費者に製品を渡すこと」ではない。これではサンプリングという行動を記述したに過ぎない。製品の非使用者にその製品を体験してもらいたいのか、ブランドの使用者に新しいアイテムを追加使用してもらいたいのか、競合ブランドの使用者に製品体験を通して自ブランドの優れた点を認識してもらいたいのか。目的によって最適なサンプリングの仕方は異なるはずだ。

戦略が必要な第2の理由は、「資源には限りがあるから」である。もし資源が無限であれば、考えつくことをすべて実行すればいいのだから戦略は必要ない。しかし、資源は常に有限である。限界があるからこそ、達成手段を取捨選択しなければならないし、そこに資源の使い方の巧拙が出てくる。ここに、戦略を持つことの意味が生まれるのだ。

すなわち、戦略とは「目的達成のために資源をどう利用するかの指針」となり、本質的には「目的」と「資源」のふたつの要素に集約される。

戦略の構成要素(1)「目的」

いい目的がないと人も組織もつまずく

組織やチームが行動するとき、目的を明確にすることは当たり前のように思える。ところが、戦略的な失敗の大部分を目的の不明確さが占めているケースは珍しくない。

いい「目的の設定」がなければ、どこをめざすべきかが不明確になり、遠回り、寄り道、逸脱が頻発する。

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要約公開日 2017.06.24
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