フェイスブック 不屈の未来戦略

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フェイスブック 不屈の未来戦略
出版社
出版日
2017年07月05日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

2004年にハーバード大学生向けサービスとして誕生し、今や19億人をつなぐ世界最大のSNSの座を獲得したフェイスブック。2009年初頭には1億5000万人ほどだったユーザー数は、2015年終盤には15倍となり、時価総額は3000億ドルを超えるまでに成長した。そして、フェイスブックの創業者でCEOである、マーク・ザッカーバーグは世界を代表する事業家、慈善活動家となった。フェイスブックは、どのようにしてモバイルコンシューマーサービスの頂きをきわめたのか。

本書は、開発者の一人であり、フェイスブックの広告事業を率いてきた著者が、フェイスブックの成長の軌跡を克明に描き出したものである。いかに同社がIPOの失敗から再起したのか。広告事業の発展、競合の参入、人材獲得競争といった困難を乗り越えてきたのか。こうしたストーリーが、ライブ感たっぷりにつづられている。

「人々をオープンにつなげる」というミッションの達成に向けて、フェイスブックが下した決断や、そこから得た教訓、フェイスブックが見ている未来、今後注力しようとする分野をつまびらかにするという、大盤振る舞いの一冊だ。

フェイスブックの戦略の変遷とその背景を知ることで、不確実性の高いインターネット業界で躍進するための秘訣や、テクノロジーの未来を見通すためのヒントが数多く得られるだろう。何よりも、自分自身のミッションを問い直さずにはいられない。心に火をつけてくれる渾身の挑戦記を、ぜひお読みいただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

マイク・ホフリンガー(Mike Hoefflinger)
25年に渡り、シリコンバレーで経歴を積む。インテルの元会長兼CEOアンディ・グローブの下でインテルインサイドプログラムのゼネラルマネージャーを務めた経験を持つ。2009年、フェイスブックのグローバルビジネスマーケティング部門のディレクターに就任し、同社の広告ビジネスの発展に貢献。現在はエクシード・キャピタルに籍を置く起業家。

本書の要点

  • 要点
    1
    フェイスブックは幾多の困難にぶつかりながらも、「世界をよりオープンにつなげる」というミッションを追求し続けている。
  • 要点
    2
    ニュースフィードのローンチにおいては、プライバシーに関する懸念から波乱が起きたが、ザッカーバーグはニュースフィードを撤回しないと固く決意していた。「コンテンツを見るレンズ」をより面白いものにするための改善が続く。
  • 要点
    3
    「プロダクトの北極星」、「マジック・モーメント」、「コア・プロダクト・バリュー」という3つの指標をもとに、継続的なグロースをめざしている。

要約

【必読ポイント!】 小さなサービスが大企業になるまでに得た教訓

ヤフーからの10億ドルの買収提案を辞退
frankpeters/iStock/Thinkstock

ザッカーバーグは、不可能を可能にするようなミッションに向け、熱意を絶やすことがない。2006年6月、ヤフーはフェイスブックに10億ドルの買収提案を持ちかけていたという。当時のフェイスブックの売上は約2000万ドル。フェイスブックに早くから出資していたベンチャーキャピタリストのピーター・ティールは、買収に合意するほうがよいと考えていた。ところが、ザッカーバーグは「売却することはまずない」と、提案を蹴った。ザッカーバーグが個人で2億5000万ドルを手に入れる可能性があったにもかかわらずだ。

この意思決定の背景には、これまで以上にサービスを拡大させ、さらに高い評価額で会社を上場させるという、ザッカーバーグの自信があった。もちろんそれは、困難な道のりに対する覚悟と、揺るがない精神力に下支えされたものである。そこから10年後、ヤフーによるフェイスブックの評価額は300倍以上見誤っていたことが発覚した。

ある機能をつくるには数カ月、プロダクトをつくるには1年かかるといわれる。しかし、ミッションを達成するには数十年を見込む必要がある。また、目標を高く掲げるほど、達成までの道のりは長くなる。ザッカーバーグは何十年がかりとなる、「世界をよりオープンにつなげる」というミッションに挑むと決意していたのだ。

ニュースフィード開発の舞台裏

誰もがスマホを通じて、いつでもどこでも人や企業とつながれる時代となった。しかし、ユーザーは自分にとって重要なことだけを知りたいと考えている。

フェイスブックが2006年にローンチ(リリース)したニュースフィード。その核となるアルゴリズムは、ユーザーの大切な友人や、関心の高いコンテンツだけを選択して表示するというものだ。チーフ・プロダクト・オフィサーのクリス・コックス率いるプロダクトチームは、「つながっている友人や企業の最新の状況がすぐにわかること」の価値に気づき、ニュースフィードのコンセプトを思いついた。友人やフォローしているページの投稿や写真、活動状況などの情報が新着順に表示されていくというものだ。

しかし、これを実現するには、グーグル検索よりはるかに複雑なテクノロジーが求められる。そのうえで、膨大な情報量でユーザーを圧倒しない工夫も必要となる。そこでフェイスブックは、数百の情報をもとに、ユーザーのつながりの中にある、1日平均1500以上の投稿から、約300の投稿を選び、表示順を決めることにした。これは、プロフィールページの比較的奥にあった情報が、前面に押し出されることでもあった。

波乱のローンチ、壁をどう乗り越えたのか

一番の難所は、ローンチ直後に訪れた。つながっている人のうち、誰が何の情報を閲覧できるのか。こうしたプライバシーに関する不安が、ユーザーの間に瞬く間に広がり、ニュースフィード機能に反対するフェイスブックグループが立ち上がった。しかし、ザッカーバーグはニュースフィードを撤回しないという確固たる決意のもと、ニュースフィードの目的やプライバシー設定へのコミットメントを説明した。さらには、ユーザー自身が、より細かくプライバシー設定をコントロールできるようにした。

この波乱から10年近く経った今、ニュースフィードは世界で毎分2億以上の投稿を届けるという、メディア史上最大規模の影響力をもつに至った。実名ユーザーとニュースフィードの組み合わせにより、フェイスブックは並外れたエンゲージメントと規模を実現できたのである。より高い品質のニュースフィードを実現するべく、改善は続く。

レンズをより洗練された、面白いものにするために
g-stockstudio/iStock/Thinkstock

デジタルメディアへの接触時間が増え続ける現在、人々と世界との情報の関わり方において最も大きな違いを生んでいるのは、「コンテンツを見るレンズ」である。

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要約公開日 2017.06.26
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