UXの時代

IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか
未読
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IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか
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未読
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著者
出版社
出版日
2016年12月05日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

GE、ミシュラン、Uberといった企業がビジネスモデルの中核に据えているUX(ユーザーエクスペリエンス)。これはユーザーが体験することによって得られる価値を指す。近年、テクノロジーの進化によって、ユーザーがコミュニティなどを通じて強く結びつくようになった。ユーザーサイドに立って開発された商品やサービスが、市場で高い支持を獲得できている傾向にある。

同時に、他人とモノを共有し、必要なときに必要な分だけ使うという「シェアリング」の考え方も市民権を得てきた。もし、シェアリングがさらに浸透したら、モノが売れず存続の危機にさらされる企業も出てくるだろう。こうした危機を打開するカギは、いかにUXを最大化するかを基準に、ユーザー起点でビジネスモデルを再構築することにある。そして、これからのUXビジネスに欠かせないのは、あらゆるものがインターネットでつながるIoTと、水平協働型社会による、組織の枠組みを超えたリソースの解放だという。

著者は、いち早くUXに注目してスポーツとウェルネスの分野で新しいビジネスモデルの構築に成功した。本書ではその経験をもとに、「UXリーダー」となって起業をめざすための戦略を提示していく。未来を変える画期的な技術の紹介も随所に盛り込まれているのも本書の魅力だ。世界のビジネスシーンで起きている地殻変動の本質と、今後のビジネスのシナリオを描く際の心構えを学べる格好のテキストとして、本書を熟読してみてはいかがだろうか。

ライター画像
山崎裕介

著者

松島 聡(まつしま あきら)
シーオス株式会社代表取締役社長。1969年、我孫子生まれ。東京薬科大学薬学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)在籍時に医療流通の複雑さと将来性に気づき、2000年にシーオス創業。医療流通事業を皮切りに通信、小売、メーカーをはじめとする多業種のロジスティクスをデジタル化。日本ロジスティクス大賞など受賞歴多数。AⅠ、IoTなどの技術面とUX(顧客体験)双方を追求した新サービスを生み出し、現在はロジスティクスにとどまらず、企業・個人向けのシェアリングビジネス、スポーツ・アクティビティー事業も牽引。自走式ロボットによる自動マップ作製、ドローンによる自動棚卸、空きスペースの自動認識ほかの研究開発でも注目を集めている。

本書の要点

  • 要点
    1
    シェアリングの概念が急速に拡大する現在、企業がユーザー起点でUXの最大化をめざし、ビジネスモデルを再構築することが急務である。
  • 要点
    2
    IoTに下支えされた水平協働型シェアリングエコノミーによって企業の持つリソースが解放されれば、ビジネスの効率化が進み、社内外へのUXの提供につながる事業に発展する可能性が生じる。
  • 要点
    3
    UXビジネスには、「UXリーダー」の存在が不可欠である。UXリーダーはスペシャリストたちの力を借りて水平にコラボレートできるネットワークを構築し、規制の網をかいくぐって、新たなサービスを創造すべきである。

要約

シェアリングとUX

シェアリングの台頭

近年、あらゆるものがインターネットでつながる「IoT(Internet of Things)」や「AI(人工知能)」など、テクノロジーの進化が著しい。そんな中、世界のビジネスシーンに、モノを共有することを意味する「シェアリング」という概念が台頭し、一気に拡大し始めている。

例えば、アメリカで生まれたAirbnbは、ウェブを通じて所有者が希望者に空き部屋を貸すサービスであり、宿泊施設の不足も手伝って瞬く間に全米に広がった。そのほか、自動車配車サービスUberも、シェアリングエコノミー型のビジネスとして人気を博している。

PtoPとモノづくり

シェアリングエコノミーの拡大の背景にあるのは、大量生産されたモノを所有することの否定である。モノが溢れている時代に育った世代は、所有への欲求が乏しい。ひとつのモノを買うより、必要なときに必要な分だけ使うという考え方をクールだととらえている。例えば、大金をかけて自動車を購入し、駐車場代を支払い続けるよりは、必要な時間だけカーシェアリングをする方が賢いというわけだ。

こうした消費行動の変化には、テクノロジーの進化が大きく関わっている。システム業界では、ユーザー同士が直接コミュニケートすることをPtoP(ピアtoピア)という。ネットワークの発達によって、PtoPの構築がますます容易になった。そのため、ユーザーが価値観や感性の合う仲間を見つけやすくなった。今後、互いに協力して新しいものを生み出すユーザーが、モノづくりの主役に躍り出るだろう。このように、PtoPは企業主導の経済支配から個人が独立して主権を得るための原動力だといえる。

UX理解の必要性
Chesky_W/iStock/Thinkstock

産業社会構造の末端に位置づけられてきたユーザーたちが、テクノロジーを駆使して「革命」を実現しようとする時代に、企業はどう対応すべきであろうか。

カーシェアリングが普及すれば、自動車の売れ行きは下がる。また、PtoPによって再生可能エネルギーが安価に生み出せるようになれば、電力会社の電気は売れなくなる。対応を誤ると、会社の存続自体が危うい。

そこで企業は、モノの価値ではなく「UX(ユーザーエクスペリエンス)」を理解する必要に迫られている。UXとは「ユーザーにとっての体験価値」を指す。例えば自動車のユーザーなら、「どのメーカーのどんな車に乗るか」より「車に乗ってどこに行き、何をするか」を重要視するようになるかもしれない。

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要約公開日 2017.06.29
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