捨てられる銀行2 非産運用

未 読
捨てられる銀行2 非産運用
ジャンル
著者
橋本卓典
出版社
定価
864円
出版日
2017年04月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
要約全文を読むにはシルバー会員またはゴールド会員への登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
この要約を友達にオススメする
捨てられる銀行2 非産運用
捨てられる銀行2 非産運用
著者
橋本卓典
未 読
書籍情報を見る
ジャンル
出版社
定価
864円
出版日
2017年04月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
本の購入はこちら
レビュー

現在、金融庁の森信親長官の下で進められている金融改革には、2本の柱がある。ひとつは、「企業・経済の持続的成長」であり、もうひとつが、本書で取り上げられているテーマ、「国民の資産形成」だ。前者の「企業・経済の持続的成長」というテーマは、著者の前著『捨てられる銀行』で扱われている。

タイトルに「2」とあるので、前著を読まなければ本書を読めないのではと思う読者もいらっしゃるかもしれない。だが、どちらを先に読んでも全く問題ないのでご安心されたい。

少子高齢化が進む日本に残された貴重な成長産業は、個人の金融資産を着実に資産運用で増やしていくことである。しかし、銀行窓口では、真に顧客の資産の成長を考えた運用提案はされていない、と著者は言う。系列会社や取引先企業に利益をもたらす投資信託や保険商品が、優先的に販売されているというのだ。個人資産の運用は、まったく「悲惨」で、「非産」な状況にある。

この現状にメスを入れるため、金融庁が打ち出しているキーワードが、「真に顧客本位の業務運営」という定義で使われる「フィデューシャリー・デューティー(Fiduciary Duty、受託者責任)」である。

本書は、日本の資産運用サービスのお粗末な現状を糺しつつ、森長官の思想そのものに肉迫し、金融庁の方針に迫ってゆく。各国でフィデューシャリー・デューティーがどのように実現されているのかというレポートも豊富だ。ごく一般のビジネスパーソンも、金融関係者も、本書を読むことで最近の資産運用業界の動向をつかむことができるだろう。

熊倉 沙希子

著者

橋本 卓典(はしもと たくのり)
共同通信社経済部記者。一九七五年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。二〇〇六年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。〇九年から二年間、広島支局に勤務。金融を軸足に幅広い経済ニュースを追う。一五年から二度目の金融庁担当、一六年から資産運用業界も担当し金融を中心に取材。著書『捨てられる銀行』(講談社現代新書)は十三万部超のベストセラーに。本書は森金融庁改革スクープレポートの第二弾となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    2016年度の金融行政方針には、顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)を金融機関に求めることが示されていた。
  • 要点
    2
    日本の資産運用の現状は、手数料は高く、収益率はマイナスで、惨憺たるものだ。金融機関は、資産運用の機能を果たす系列会社と結託して、手数料収入を得てきたことを疑われている。
  • 要点
    3
    真のフィデューシャリー・デューティーとは、受託者は受益者第一で行動し、利益相反が疑われる立場に身をおかないという厳格なものだ。われわれ顧客がそれを実行できている金融機関の商品を選んでいくことで、金融業界は健全化するだろう。

要約

【必読ポイント】動き出した資産運用改革

資産運用を根本から問い直す
utah778/iStock/Thinkstock

銀行が近年力を入れて窓口で販売してきたのが、貯蓄性保険商品として分類される「一時払い終身保険」だ。顧客は、保険料をまとめて一括払いし、10年など、一定期間経過後解約し、少し増えた返戻金を受け取る。これを、銀行窓口では例えば「0・5%程度の利回りの保険商品」と説明していたのだが、じつは、生命保険会社はもっと利回りよく顧客資金を運用していた。しかし、その運用利益を顧客に還元するのではなく、この例では0・5%の利回りぶんだけを顧客に返戻し、残りは銀行へ販売手数料や諸経費として払っていた。

顧客としては、国債などの、より利回りのよい金融商品を選び、加えて必要なぶんだけをカバーする安価な保険商品を選ぶ道もあったはずだ。しかし、そのような、顧客の利益を考えた提案はなされず、銀行は自分たちの利益を優先して売りたいものを売ってきた。

森金融庁長官は、この問題を重く受けとめ、法制度のあり方などを話し合う金融審議会でも貯蓄性保険商品が取り上げられることになった。森は、金融商品をどのように顧客に販売し、資産形成を促すのか、根本的に問い直すことを決めていた。

森メモと金融行政方針

2016年10月に金融行政方針が発表された。著者は、そのひと月前に森が金融庁幹部らに配布したメモを紹介し、真意を探る。

そのメモには、金融機関の先にある「企業・経済の成長」や「国民の資産形成」を宣言した2015年度の方針は、2016年度でも「不変」だと断言されている。

森の問題意識は、メモに書かれた、「目先の利益にこだわり、顧客本位が言葉だけになっていないか?」という一文に現れている。金融機関が、真に顧客本位のサービスを提供できれば、顧客の信頼に基づく経営基盤が育まれ、結果として金融機関は環境の激変にも耐えうる健全性を備えるはずだ、というのが森の考えだ。金融機関が行っている取り組みを開示させ、パブリック・プレッシャーを機能させれば、自分本位の金融機関は顧客から選ばれなくなっていくだろう、と森は見通していた。

そして発表された金融行政方針では、現状の課題が列記され、それらへの対策として3つの方向性が示された。家計における長期・積み立て・分散投資の促進/金融機関等による顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の確立と定着/機関投資家が投資先の企業と建設的な会話を行うよう促進、という方針である。

しかし、そもそも、金融機関を目先の収益獲得に追い立ててきたのは金融庁ではないか。かつての金融庁が金融機関に「健全性」を求め、その「健全性」が企業の成長や個人顧客の資産形成のためになっていなくても関知しなかったことが、現在の金融業界をつくってしまったのではないか。

金融庁は、じつは、このことを「当局の失敗」として、同年9月の金融モニタリング有識者会議の資料に明記した。加えて、外部の専門家に批判と議論を求める姿勢で会議に挑んだ。この姿勢からは、見過ごされてきた課題に取り組み、フィデューシャリー・デューティーを本気で金融機関に求めていくという金融庁の意志が見てとれる。

資産運用改革の原点
G0d4ather/iStock/Thinkstock

森が資産運用の改革になぜ強い意志をもっているのかは、彼が産業再生機構の立ち上げの仕事で、ニューヨーク総領事館に籍を置いていた時代にさかのぼると、見えてくる。

要約全文を読むにはシルバー会員またはゴールド会員への登録・ログインが必要です
「本の要約サイト flier(フライヤー)」は、多忙なビジネスパーソンが本の内容を効率的につかむことで、ビジネスに役立つ知識・教養を身につけ、スキルアップに繋げることができます。具体的には、新規事業のアイデア、営業訪問時のトークネタ、ビジネストレンドや業界情報の把握、リーダーシップ・コーチングなどです。
この要約を友達にオススメする
捨てられる銀行2 非産運用
捨てられる銀行2 非産運用
著者
橋本卓典
未 読
書籍情報を見る
ジャンル
出版社
定価
864円
出版日
2017年04月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
本の購入はこちら
この要約を友達にオススメする
捨てられる銀行2 非産運用
未 読
捨てられる銀行2 非産運用
ジャンル
産業・業界 ファイナンス
著者
橋本卓典
出版社
定価
864円
出版日
2017年04月18日
本の購入はこちら

related summaries
一緒に読まれている要約

なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか
なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか
シェルドン・ソロモン ジェフ・グリーンバーグ トム・ピジンスキー 大田直子(訳)
未 読
リンク
地域でいちばんピカピカなホテル
地域でいちばんピカピカなホテル
宝田圭一
未 読
リンク
ドキュメント 日本会議
ドキュメント 日本会議
藤生明
未 読
リンク
定年の後をしあわせに生きる
定年の後をしあわせに生きる
ケネス・S・シュルツ(監修) 藤井留美(訳)
未 読
リンク
政府の隠れ資産
政府の隠れ資産
ダグ デッター ステファン・フォルスター 小坂恵理(訳)
未 読
リンク
決済の黒船 Apple Pay
決済の黒船 Apple Pay
鈴木淳也 日経FinTech(編)
未 読
リンク
ダーク・マネー
ダーク・マネー
ジェイン・メイヤー 伏見威蕃(訳)
未 読
リンク
銀行はこれからどうなるのか
銀行はこれからどうなるのか
泉田良輔
未 読
リンク

weekly ranking
今週の要約ランキング

1
天才を殺す凡人
天才を殺す凡人
北野唯我
未 読
リンク
2
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
桑野麻衣
未 読
リンク
3
お金の流れで読む日本と世界の未来
お金の流れで読む日本と世界の未来
ジム・ロジャーズ 大野和基(訳)
未 読
リンク

Recommendations
イチオシの本

出版社のイチオシ#014
出版社のイチオシ#014
2019.05.17 update
リンク
【五月病予防】やる気を取り戻すための本5冊
【五月病予防】やる気を取り戻すための本5冊
2019.05.09 update
リンク
『儲けのしくみを誰でもつくれるすごいノート』酒井 威津善
【書店員のイチオシ】 『儲けのしくみを誰でもつくれるすごいノート』酒井 威津善
2019.05.03 update
リンク
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年5月号)
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年5月号)
2019.05.01 update
リンク

Interview
インタビュー

「人生で大事なことはティー道が教えてくれた」
【インタビュー】 「人生で大事なことはティー道が教えてくれた」
2019.05.20 update
リンク
人生という「ゲーム」を攻略するには?
【インタビュー】 人生という「ゲーム」を攻略するには?
2019.04.25 update
リンク
「勝間式超コントロール思考」で人生が変わる!
【インタビュー】 「勝間式超コントロール思考」で人生が変わる!
2019.04.08 update
リンク
「名著は『現代を読む教科書』」
【インタビュー】 「名著は『現代を読む教科書』」
2019.04.03 update
リンク
1
天才を殺す凡人
天才を殺す凡人
北野唯我
未 読
リンク
2
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
桑野麻衣
未 読
リンク
3
お金の流れで読む日本と世界の未来
お金の流れで読む日本と世界の未来
ジム・ロジャーズ 大野和基(訳)
未 読
リンク
ビジネスマンを力強く導く1冊 『世界基準の働き方』
ビジネスマンを力強く導く1冊 『世界基準の働き方』
2017.06.30 update
リンク
シリコンバレーの常識、「逆説のスタートアップ思考」を身につけるには?
シリコンバレーの常識、「逆説のスタートアップ思考」を身につけるには?
2017.06.07 update
リンク