本書の要点

  • お客様の声を拾うことで企業は変わる。お客様からの「ありがとう」がスタッフを生き返らせる。

  • 「掃除」と「整理整頓」でやるべきことが見えてくる。毎日の掃除が「気づき」を生み、改善へつながる。

  • 大きな声での「挨拶」がホテルの評価を上げる。挨拶が大きいスタッフはお客様からの評価も高い。

  • 「電話」はホテルの顔である。どんなときでもそっけない対応をしてはいけない。いつも笑顔で大きな声を出して応対することが大事だ。

  • お客様満足度より先に従業員満足度を上げるべきである。不満足な従業員にお客様の満足は追求できない。

1 / 5

【必読ポイント!】 ビジネスホテルは生き返るか?

「お客様の声」を拾う

kadmy/iStock/Thinkstock

かつて「ビジネスホテルは、誰が経営してもつぶれない」と言われ、さほど経営努力をしなくても安定的に成長することができた。しかし、1990年代以降はバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災などが逆風となり、多くのホテルが経営不振に陥った。実際、最近でも放漫経営による倒産が相次いでいる。こうした逆風に耐え切れず経営不振に陥ったホテルには、設備投資を怠っていたり、PRに消極的であったりなど、いくつかの共通点がある。だが、もっとも大きな原因は、お客様の声を拾えていないことだ。川六もリーマンショックによって売上を落としたが、お客様と積極的にコミュニケーションを取って、ホテルに対する要望、希望、不満といった「生の声」を拾い、改善するように努めた。その結果、売上が半減するホテルが続出するなか、わずか10%減で踏みとどまった。このように、マイナスを最小限に留めることができたのは、お客様の声にもとづく改善を続けてきた成果である。

お客様の声がスタッフを再生させる

「お客様からいただく声」は、従業員を大きく変えるきっかけになる。お客様からいただくお褒めの言葉が増えるほど、彼らの自信も大きくなっていく。川六では、「お客様満足度向上委員会」を設置し、お客様から寄せられた声を改善に役立てている。かつて、お客様アンケートは旅行代理店に一度回収されてしまっていたが、現在は直接回収してお客様の声をダイレクトに集めている。とはいえ、アンケート用紙をフロントや客室に備えておくだけではお客様に書いていただけない。そのため、川六ではチェックイン時に「アンケートにご協力ください」と笑顔でお願いするようにしている。お願いのしかたとアンケートの回収率は比例しており、お願いのしかたが丁寧なスタッフほど、アンケートの回収率は高い。回収した枚数は人事評価に紐づけられ、多くアンケートを回収した社員は評価に加点される仕組みになっている。やはり、お客様から「ありがとう」と言われるのはうれしいものだ。「ありがとう」と言われれば、従業員は「もっとお客様に喜んでもらいたい」と考えるようになり、積極的に改善案を出すようになる。お客様の喜ぶ声が、スタッフを変えるのだ。

事務作業は合理的に、接客は非合理的に

一般的にビジネスホテルの経営では、少数精鋭主義による経営の効率化が重視される。しかし、従業員の対人的サービスに関しては、効率化はあてはまらない。川六では、バックヤードでデジタル化を進めつつ、お客様には徹底したアナログ対応による接客をするようにしている。また、川六は同規模のビジネスホテルに比べて、スタッフの人数を多くしている。接客の時間を長く取ろうとすると、どうしても人数が必要になる。現状の人数よりも1割程度少なくしても、ホテルを回すことはできる。しかし、接客の質を維持するためには、ある程度以上の人数が必要不可欠なのだ。

「できること」と「できないこと」を周知する

NorthernStock/iStock/Thinkstock

お客様のご要望にはできるだけお応えするべきだ。しかし「できないこと」もある。

もっと見る
この続きを見るには...
残り593/4271文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2017.06.23
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか
なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか
大田直子(訳)シェルドン・ソロモンジェフ・グリーンバーグトム・ピジンスキー
Good at Anything, Fast
Good at Anything, Fast
Ash Geary
好奇心のチカラ
好奇心のチカラ
ブライアン・グレイザーチャールズ・ フィッシュマン府川由美恵(訳)
マネー・コネクション
マネー・コネクション
ジェイ・エイブラハム島藤真澄(監修)
フェイスブック 不屈の未来戦略
フェイスブック 不屈の未来戦略
滑川海彦(解説)マイク・ホフリンガー大熊希美(訳)
日本の工芸を元気にする!
日本の工芸を元気にする!
中川政七
観光立国の正体
観光立国の正体
藻谷浩介山田桂一郎
なぜ「戦略」で差がつくのか。
なぜ「戦略」で差がつくのか。
音部大輔

同じカテゴリーの要約

Z世代の頭の中
Z世代の頭の中
牛窪恵
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
越川慎司
世界標準の1on1
世界標準の1on1
スティーヴン・G・ロゲルバーグ本多明生(訳)
増補改訂版 フィードバック入門
増補改訂版 フィードバック入門
中原淳
完訳 7つの習慣
完訳 7つの習慣
スティーブン・R・コヴィーフランクリンコヴィージャパン(訳)
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)
1分で話せ
1分で話せ
伊藤羊一
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
井上大輔
「仕事ができるやつ」になる最短の道
「仕事ができるやつ」になる最短の道
安達裕哉
部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也