銀行はこれからどうなるのかの表紙

銀行はこれからどうなるのか


本書の要点

  • FinTechは個人の預金の行方に大きく影響するため、銀行は変化を迫られるだろう。未来の銀行は、モバイル型、プライベートバンク型、投資銀行型、クラウド型の4つのタイプに分かれると考えられる。

  • 今後の銀行の存在意義は、その本来的な役割である、投資機会の「目利き」にある。その価値を発揮できなければ生き残りは難しいだろう。

  • 海外の主要な銀行や、金融業界に進出してきているテクノロジー企業、小売企業の取り組みなどに目を向けることにより、今後銀行が目指すべき方向が見えてくる。

1 / 4

【必読ポイント!】 私たちと銀行の関係はどう変わるのか

私たちと銀行の接点

私たちは、銀行と、どんなかたちでつながっているだろう。個人であれば、給与口座やカードの引き落とし口座の指定、住宅ローンの借入、法人であれば融資や資金繰りの相談などが主な関わりといえそうである。そもそも本来の銀行の役割を大きく分けると、借り手と貸し手の仲介をする「金融仲介機能」、預金がさらなる預金を生み出す「信用創造機能」、現金を使わずに直接決済ができる「決済機能」の3つがある。このうち個人や法人が関心を持っているのは「決済機能」と「金融仲介機能」の一部だけだろう。利用者が望んでいるのは、スムーズかつ費用負担の少ない決済や、借りたいときに機動的に借りられるといったことであり、テクノロジーの活用によりそれが実現されつつある。

FinTechの登場

juststock/iStock/Thinkstock

Finance とTechnology をかけ合わせたFinTechという言葉が普及したのは、次の3つの背景があったからだといえる。まず初めに、世界中が低金利であることだ。利回りが確保できる金融商品が少なくなる中、伝統的な金融機関が取り扱えないニッチな市場をテクノロジーで掘り起こすという動きが加速した。2つ目の理由は、グローバルな低成長・低金利の中、物価が安定していることだ。そうした環境では、プリペイドや電子マネーで預けたお金の価値が損なわれることはないので、利用者は安心して、こうした「デジタル・ウォレット」を使える。3つ目は人材的な背景がある。リーマンショック後の人員削減や、人工知能による業務の自動化が進んだことにより、金融機関から多くの人材が放出された。彼らの事業アイデアや起業マインドは、FinTechを後押しした。著者は、FinTechで注目すべきは預金の行方であり、利用者が「銀行口座と連動させて、より便利に決済できるか」ということがポイントだという。預金は銀行にとってビジネスの起点であるので、お得で便利な決済サービスに個人の預金が流出することは致命的である。

銀行の未来の4つの姿

Purestock/Thinkstock

テクノロジーによって、機械が得意な作業と人間が得意な領域が分かれると、銀行はどのような姿に変わっていくのだろう。利用者が個人か法人か、多くの人が参加できるプラットフォームかカスタマイズが必要かによって区分された4つのタイプを、著者は提示する。1つ目はモバイル型。個人がモバイル端末で決済・資産形成・借入を完結できるサービスを提供するプラットフォームだ。日常の決済に対応し、個人にお得感が出せるかどうかがカギになる。2つ目は、プライベートバンク型。富裕層に資産運用アドバイスを行う。そのためには金融商品の内容や税務に詳しい人材の確保がカギとなる。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3530/4662文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2017.07.28
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?
レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?
新井信昭
バブル
バブル
永野健二
ダーク・マネー
ダーク・マネー
ジェイン・メイヤー伏見威蕃(訳)
捨てられる銀行2 非産運用
捨てられる銀行2 非産運用
橋本卓典
「損」を恐れるから失敗する
「損」を恐れるから失敗する
和田秀樹
なぜ日本企業は勝てなくなったのか
なぜ日本企業は勝てなくなったのか
太田肇
日本一働きたい会社のつくりかた
日本一働きたい会社のつくりかた
羽田幸広
なぜ、残業はなくならないのか
なぜ、残業はなくならないのか
常見陽平

同じカテゴリーの要約

AIエージェント革命
AIエージェント革命
シグマクシス
愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと キャラクターは会社を変えられるか?
愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと キャラクターは会社を変えられるか?
ハヤシユタカ
ユニクロ
ユニクロ
杉本貴司
ケーキの切れない非行少年たち
ケーキの切れない非行少年たち
宮口幸治
ローソン
ローソン
小川孔輔
両利きの経営(増補改訂版)
両利きの経営(増補改訂版)
チャールズ・A・オライリーマイケル・L・タッシュマン入山章栄(監訳・解説)冨山和彦(解説)渡部典子(訳)
トヨタの会議は30分
トヨタの会議は30分
山本大平
キーエンス解剖
キーエンス解剖
西岡杏
未来の年表
未来の年表
河合雅司
シン・ニホン
シン・ニホン
安宅和人