ハードワーク

勝つためのマインド・セッティング
未読
ハードワーク
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勝つためのマインド・セッティング
未読
ハードワーク
出版社
出版日
2016年12月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

2015年のラグビーW杯にて、日本代表が南アフリカ代表相手に歴史的勝利をおさめたことは記憶に新しい。それまでラグビーの試合を観ることはおろか、ラグビーにW杯があることさえ知らなかった人でも、この勝利に沸き立ち、心をつかまれたはずだ。

ラグビー日本代表の何がそこまで私たちを熱狂させたのか。もちろん、歴史的勝利という「結果」も大きいだろう。しかし何よりも私たちを熱くさせたのは、その試合のプロセスではないだろうか。対南アフリカ戦の終盤、残り時間2分を切ってスコアは29対32だった。劣勢ではあったが、ここで安全にキックを決めれば日本に3点が入り、引き分けにできる場面である。

しかし選手たちはそれで満足しなかった。成功確率がより低いトライを狙い、当時の監督である著者の制止も聞かずスクラムを組んだ。そして見事トライが決まり、それが決勝点となった。著者はそのときのことを振り返りながら、本当の成功は部下がリーダーを超えたときに起こるのだと語っている。

とはいえ、そこに辿りつくまでには長い道のりを経なければならなかった。著者が日本代表のヘッドコーチに就任した当時、選手たちは自分で物事を考えることをせず、練習にも本気で取り組んでいなかったという。そんな選手たちを、著者は3年間でどのように変えていったのか。

本書は日本代表を高みへと引き上げた著者のマインドセットが、惜しみなく紹介されている珠玉の一冊である。「がんばる」こととハードワークの違いを知りたければ、本書を手にとるべきだ。

ライター画像
和田有紀子

著者

エディー・ジョーンズ (Eddie Jones)
1960年、オーストラリア、タスマニア州バーニー生まれ。オーストラリア人の父と、日系アメリカ人の母の間に生まれる。1990年代初頭まで、当時オーストラリアの最有力州チームだったニューサウスウェールズ州の代表として活躍、その後引退し、コーチに転身する。2003年、オーストラリアの代表監督としてW杯準優勝、2007年、南アフリカのテクニカルアドバイザーとしてW杯優勝。2009年、サントリーのゼネラルマネージャーに就任。2010年度より監督も兼任し、日本選手権優勝。2012年、日本代表ヘッドコーチに就任。2015年のW杯では、世界的な強豪南アフリカ代表に歴史的な勝利をおさめ、ラグビーファンだけでなく日本中の注目を集めた。現イングランドの代表監督。

本書の要点

  • 要点
    1
    「自分はどうせダメだ」という考えを捨て去れば、誰でも成功できるようになる。
  • 要点
    2
    成功する秘訣は、自分の長所を認識しそれを最大限に活かすことである。そのためにはまず、長所も短所も含め、自分の現状をきちんと認識する必要がある。
  • 要点
    3
    練習は本番以上に苦しいものにするべきだ。そうすれば、本番になっても心に余裕が生まれる。
  • 要点
    4
    自分の力で変えることができるものと、できないものがある。自分でコントロールできるものにだけ目を向けるべきである。

要約

日本人独自のやり方で勝つ

目標は不可能そうなほど大きなものがよい
Yobro10/iStock/Thinkstock

大きな成功を望むとき、誰であってもかならずするべきことがある。それは明確な目標を設定することだ。それも、少しがんばったら達成できるような小さな目標ではなく、常識的には不可能と思えるくらい大きな目標を置くべきである。

また、その目標は数字で具体的に表現でき、結果が出たときに達成できたかどうか、はっきりわかるものであるべきだ。明確な目標は必ず強いイメージをともなう。そのイメージが、我々を成功へ導いてくれるのである。

著者が2012年にラグビー日本代表監督に就任した際、最初に提示した目標は、「世界のトップ10に入り、3年後のワールドカップでかならず勝つこと」だった。それまでの日本ラグビーの歴史上、日本が勝ったことがあるのは1度きり、それも20年も前のことだった。そのため、選手たちは当初、世界のトップ10に入ることはおろか、自分たちがワールドカップで勝利できるなど夢にも考えなかったという。

それがどうだろう。日本代表がわずか3年で、無謀とも思える目標を達成したことはみなさんもご承知のとおりだ。

短所は長所にもなりえる

著者が監督に就任する前の日本代表は、強豪国のコピーのような戦い方をしていた。しかし、冷静に考えてそれで勝てるはずがない。強豪国には、体格にすぐれ、体力にも自信がある猛者ばかりが揃っている。それに比べ、日本では小柄な選手が大半を占める。外国の真似をしてガチンコ勝負を挑んでも勝てないのは当たり前である。

そこで著者は、日本人らしさを活かした、日本独自のラグビーをすると打ち出した。そしてその方針を「ジャパン・ウェイ」と名づけ、チームにジャパン・ウェイを浸透させることに3年間身を砕いた。トレーニングでは、日本人の勤勉さを活かして100%の努力を要求し、プレーでも、日本人選手の身の軽さを活かし、敏捷性に重点を置いた。

体と体がぶつかり合うラグビーでは、一般的には体が大きい方が有利だとされる。だが、あらゆる物事には長所と短所がある。体が大きいというのは、それだけ動きが鈍くなるということだ。敏捷性を極限まで磨き上げることで、W杯ではあの南アフリカ代表に勝利するまでに至った。このように、どんな短所も長所になりうるのである。

向上心のない努力は無意味
mel-nik/iStock/Thinkstock

日本人は「がんばる」ことが得意だ。何か言われたことに対して、黙々といそしむ姿勢は世界的に見ても類を見ないほど抜きん出ている。しかし著者によると、2012年当初、日本人選手たちは「ハードワーク」ができていなかったという。

ハードワーク、つまり物事に懸命に取り組むことは、「がんばる」と同じように聞こえるかもしれない。しかしその意味は少し異なる。成果を出すためには、100%がんばることに加え、「今よりよくなろう」という意識が不可欠だ。それがなければどんながんばりも無駄になってしまう。

自分を卑下してしまう日本人は多い。しかし、「自分なんかどうせダメだ」と思っていては、いつまで経っても成果を出すことはできない。ハードワークは、身体的努力と精神的努力が共存して、はじめて意味あるものになるのだ。

精神的な準備ができていない選手に対しては、著者は容赦なくトレーニングから外した。自分をよりよくすることに100%の気持ちが向いていないうちは、どんなにトレーニングをしても無駄になる。荒療治とも思える手法をとることで、「今よりよくなろう」と思うことの重要さを示したのだ。

どう戦略を立てるか

「くりかえし」の効果は絶大

「ジャパン・ウェイ」を選手間に浸透させるために、著者はとにかくその重要性をくりかえし説いた。しかも、選手たちに直接言うだけでなかった。新聞や雑誌の取材を受けるたびに表現を変えながら、「ジャパン・ウェイ」の大切さを訴え続けたのである。

選手たちは、自分たちのことが取り上げられた新聞や雑誌に目を通すものだ。

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要約公開日 2017.07.11
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