国家はなぜ衰退するのか
権力・繁栄・貧困の起源

未 読
国家はなぜ衰退するのか
ジャンル
著者
ダロン・アセモグル ジェイムズ・A・ロビンソン 鬼澤忍(訳)
出版社
早川書房
定価
2,592円
出版日
2013年06月25日
評点(5点満点)
総合
3.7
明瞭性
3.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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レビュー

世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか。本書はその疑問に対して、これまで論じられてきたような地理説でも、文化説でも、あるいは為政者の無知説でもなく、問題は政治・経済上の「制度」にあると説く。

 エジプトが貧しいのと同様、北朝鮮であれ、シエラレオネであれ、ジンバブエであれ、貧しい国々が貧しい理由はその国が限られたエリートによって支配されてきた、という共通の背景を抱えている。一方で、イギリスや合衆国のような国々が裕福になったのは、権力を握っていたエリートを国民が打倒し、現在のように経済的機会を多くの人が利用できる社会を作り上げたからと著者たちは述べている。

本書は、古代ローマから、中世ヴェネツィア、名誉革命期のイングランド、幕末・明治期の日本など、時代や国・地域を越えて、政治変革がその後の国家の盛衰においてどのような影響を与えたか、という観点で歴史を振り返りながら考察を行っており、単なる歴史の教科書にはない、のめり込むような面白さがある。

また、本書ではこの理論に基づいて、現在の中国はこのまま高度成長を続け、欧米や日本を圧倒するのか? 数十億人の人々を貧困の連鎖から脱出させる有効な方法はあるのか? といった、私たちが抱いている将来への懸念・予想に対する著者たちの考えも紹介されており、こちらも必見の内容であると言えよう。

苅田 明史

著者

ダロン・アセモグル
マサチューセッツ工科大学(MIT)エリザベス&ジェイムズ・キリアン記念経済学教授。トルコ出身。英国ヨーク大学卒業後、1992年にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で博士号を取得。研究分野は政治経済学、経済発展、経済理論など多岐にわたる。40歳以下の若手経済学者の登竜門とされ、ノーベル経済学賞にもっとも近いと言われるジョン・ベイツ・クラーク賞を2005年に受賞。
ジェイムズ・A・ロビンソン
ハーバード大学デイヴィッド・フローレンス記念政治学教授。英国出身。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)卒業後、1993年にイェール大学で博士号を取得。主たる研究分野は政治経済学と比較政治学、経済発展と政治発展。ラテンアメリカとアフリカの世界的に著名な専門家で、ボツワナ、モーリシャス、シエラレオネ、南アフリカなどで研究活動を行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    イングランドにおいて産業革命が名誉革命の数十年後に始まったのは、包括的な政治・経済制度によるものであり、決して偶発的に発生したものではない。
  • 要点
    2
    イングランドの名誉革命や日本の明治維新といった政治革命によって包括的な政治・経済制度を確立できた国が繁栄の道を辿っている。
  • 要点
    3
    包括的政治・経済制度確立に向けた動きが一度生まれると、その流れはますます強くなるが、収奪的制度もなかなか抜け出せないという悪循環が生じやすい。
  • 要点
    4
    持続的な成長には包括的制度の確立が必要であり、収奪的制度の国は衰退している。中国の成長はしばらく続くかもしれないが、持続的成長には繋がらないだろう。

要約

なぜイングランドで産業革命が起こったか

iStockphoto/Thinkstock
産業革命が名誉革命の数十年後にイングランドで始まったのは偶然ではない

東西ヨーロッパが別の道を歩みはじめるきっかけは、1346年以降ヨーロッパ中で猛威を振るった腺ペストすなわち黒死病だった。14世紀初頭、ヨーロッパを支配していたのは封建的な制度で、王は土地を所有し、軍務と引き換えに封建君主にそれを下賜していた。次に封建君主が農民に土地を分け与えると、農民はその見返りに幅広い無給労働に従事し、多くの貢納金と税金を納めなければならなかった。この制度は極めて収奪的で、富は多くの農民から少数の封建君主へ吸い上げられていたが、ペストによって生じた大幅な労働力不足はこうした封建的秩序の土台を揺るがすこととなった。イングランド政府は労働力不足を理由に賃金上昇を訴える農民に対して労働者規制法を可決し、賃金の上昇を防ごうとしたが、ワット・タイラーの乱などの農民一揆が起こり、その結果、封建的な労役が少しずつ減ってなくなり、包括的な労働市場が現れはじめた。このようにして、西欧では労働者は封建的な税金、貢納金、法規から解放され、成長する市場経済の鍵を握る存在になりつつあった。その一方でペスト禍を通じて東欧の地主は労働者の支配を徐々に強め、労働者は抑圧された農奴として西欧で必要とされる食物や農産物を育てていたにすぎず、制度の堕落につながった。

更にイングランドでは1688年に名誉革命がおこり、王と行政官の権力は制限され、経済制度を決定する権限が議会に移った。こうして経済制度もさらに包括的になり始めた。政府は意を決して財産権を強化し、その一つである特許権によってアイデアへの財産権が認められ、イノヴェーションが大きく刺激されることになった。産業革命が名誉革命の数十年後にイングランドで始まったのは偶然ではない。蒸気機関を完成させたワット、世界初の蒸気機関車を製作したトレヴィシック、紡績機の発明者アークライトなど偉大な発明家は、自分のアイデアから生じた経済的機会をとらえることができたし、自分の財産権が守られることを確信していた。また、自分のイノヴェーションの成果を売ったり使わせたりすることで利益をあげられる市場を利用できた。技術の進歩、事業の拡大や投資への意欲、技能や才能の有効利用といったことはすべて、イングランドで発達した包括的な政治・経済制度によって可能となっていたのである。

ただし、産業革命につながる多元的な体制は必然的に生まれたわけではない。ジェームズ二世がオレンジ公ウィリアムを破ることもありえたはずだし、商業的農民階級からさまざまな業種の製造業者、大西洋貿易業者にいたるまで、多様な利害関係者が絶対主義に対抗する連合を結成したことも偶然の産物である。

19世紀の日本がたどった制度発展の道筋からも、決定的な岐路と、制度的浮動の生む小さな相違との相互作用が明らかになる。日本は中国と同じく絶対主義に支配されていて、徳川家によって国際貿易を禁じる封建体制が敷かれていたが、1853年にペリー率いる四隻のアメリカ軍艦が江戸湾に入港し、アヘン戦争の際にイングランドが中国から勝ち取ったような貿易特権を要求されたことで事態が一変した。しかしながらこの決定的な岐路において、日本はまったく異なる役割を演じたのである。

中国には皇帝の絶対主義的支配に挑戦し、代わりとなる制度を推進できる者がいなかったのに対して、日本では有力な藩主に対する支配力はわずかしかなく、合衆国の脅威に対して徳川家の統治に対する反対勢力が結集し、明治維新という政治革命を引き起こしたのだ。こうした政治革命のおかげで、日本では包括的な政治制度と経済制度の発展が可能となり、その後の急速な成長の礎が築かれたのに対して、中国は絶対主義のもとで衰退していったのである。

好循環と悪循環

Comstock/Thinkstock
悪循環は断ち切れるが、なかなかしぶとい

包括的な政治・経済制度がひとりでに出現することはない。それは経済成長と政治的変化に抵抗する既存のエリートと、彼他の政治的・経済的権力を制限したいと望む人々のあいだの、大規模な争いの結果であることが多い。包括的制度が現れるのは、イギリスの名誉革命や北米におけるジェームズタウン植民地の創設といった決定的な岐路でのことだ。

つまり、一連の要因によって権力の座にあるエリートの支配力が弱まる一方、彼他に対抗するものの力が強まり、多元的社会を形成するためのインセンティブが生じるケースである。

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国家はなぜ衰退するのか
ジャンル
グローバル 政治・経済 リベラルアーツ
著者
ダロン・アセモグル ジェイムズ・A・ロビンソン 鬼澤忍(訳)
出版社
早川書房
定価
2,592円
出版日
2013年06月25日
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